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氏名(しめい)は、人名を構成する氏と名である。現在、一般に「姓」や「名字(苗字)」と呼ばれているものの法律上における表現が「氏」である〔二宮周平著 『家族と法』 岩波書店〈岩波新書〉、2007年10月、21頁〕〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、12頁〕(ただし、歴史的にはそれぞれ意味を異にしている)。 現行の戸籍法では戸籍には戸籍内の各人について氏名を記載することとされている(戸籍法第13条第1号)。 == 氏 == === 氏の法的性格 === 古来より、個人がいずれの血族集団または家族集団に属する者かを示すために姓あるいは氏の制度が認められた〔我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著 『民法3 親族法・相続法 第2版』 勁草書房、1999年7月、19頁〕。儒教思想の下での同姓不娶・異姓不養の原則でいう姓が血族集団を示すものであるのに対して、明治民法下での氏は家族集団である「家」の名称を示すものとされ〔我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著 『民法3 親族法・相続法 第2版』 勁草書房、1999年7月、19頁〕、そこでは「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」と規定されていた(明治民法第746条)。 戦後の親族法改正時においても、氏については日本における習俗と国民感情を考慮して存続されることとなった〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、12頁〕。しかし、旧来の家制度については廃止され、現行法の下での氏の法的性格について以下のような見解に分かれている〔村重慶一著 『精選 戸籍法判例解説』 日本加除出版〈レジストラー・ブックス〉、2007年10月、8-9頁〕〔青山道夫・有地亨編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、346-347頁〕〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、12頁〕。 ; 個人呼称説 : 氏を純粋に各人の同一性を識別するための個人の呼称とみる説。現在の民法学上の通説であるとされる〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、12頁〕。 ; 血縁団体名称説(血統名説) : 氏を各人の属する血縁団体(血縁)の名称とみる説。ただ、本来、中国の姓のように氏姓が血統を表している場合には、姓は出生によって定まるもので婚姻によっても変更されない〔我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著 『民法3 親族法・相続法 第2版』 勁草書房、1999年7月、78頁〕。したがって、この説では現行の日本法における夫婦同氏の原則を説明するのに難があるとの批判がある〔青山道夫・有地亨編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、346-347頁〕。 ; 家族共同体名称説(家族共同態名説) : 氏を各人の属する家族(家族共同体)の名称とみる説。 ; 同籍者集団名称説(同籍者名説) : 氏を戸籍編製の基準となる同籍者集団の名称とみる説。この説に対しては氏の取得・変更は民法で定め戸籍法において反映されるべきもので本末転倒すべきでないとの批判がある〔青山道夫・有地亨編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、347頁〕。 ; 多元的性格説 : 氏の法的性格について多元的に理解すべきとみる説。近時、氏には人の同一性を明らかにするとともに、現実の家族共同生活をする個人に共通する呼称としての性格を併せもっているとの見解が有力になっている〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、12頁〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「氏名」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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