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沈める滝[しずめるたき]
『沈める滝』(しずめるたき)は、三島由紀夫の長編小説。原題は旧漢字の『沈める瀧』である。愛を信じないダム設計技師が建設調査の冬ごもりの間、或る不感症の人妻と会わないことで人工恋愛を合成しようとする物語。ダム建設を背景にした一組の男女の恋愛心理の変化を軸に、芸術と愛情の関連を描いた作品である〔「創作ノート『沈める滝』」(『決定版 三島由紀夫全集第5巻・長編5』)(新潮社、2001年)〕。人間を圧倒する超絶的な自然環境の中で推移する男の心理、やがてダムによって沈む小さな滝に象徴される女、人間主義的な同僚との絡み合いを通じ、冷徹な物質の世界と感情に包まれた人間の世界との対比や、社会的効用主義に先んずる技術者(芸術家)の純粋情熱が暗喩的に描かれ、自然と技術(芸術)との相互関係が考察されている〔。 1955年(昭和30年)、雑誌『中央公論』1月号から4月号に連載され、同年4月30日に中央公論社より単行本刊行された。文庫版は新潮文庫で刊行されている。 == 主題・文体 == 三島の『沈める滝』創作ノートの初期段階には、「ダム(芸術の象徴)が、何ものにも関係しないといふ確信。何の関係も考へず、たゞダムの完成のみに盲ら滅法に邁進」と記され〔「創作ノート『沈める滝』」(『決定版 三島由紀夫全集第5巻・長編5』)(新潮社、2001年)〕、芸術と愛情(あるいは人間関係や生活)との関連を主題にしたものとなっている〔佐藤秀明『日本の作家100人 三島由紀夫』(勉誠出版、2006年)〕。 また、主人公(Hero)と対立する功利主義者でダムの効用のみ考える瀬山の人物設定の腹案について以下のように記されている。 文体については、「スタンダール、プラス鴎外」の影響を取り入れたものだと三島は説明している〔三島由紀夫「自己改造の試み―重い文体と鴎外への傾倒」(文學界 1956年8月号に掲載)。『亀は兎に追ひつくか』(村山書店、1956年)に所収。〕。また『沈める滝』には、「かつての気質的な主人公と、反気質的な主人公との強引な結合」があるとし、「不透明な過渡期の作品」だと位置づけて自作解説している〔三島由紀夫「十八歳と三十四歳の肖像画」(群像 1959年5月号に掲載)〕。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「沈める滝」の詳細全文を読む
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