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法定損害賠償()とは、私法上の損害賠償の一種であり、与えられた損害の程度に応じて賠償額を算定するのではなく、制定法の範囲内で規定するものをいう。「法廷損害賠償」は誤り。場合によっては侵害量の確知が困難もしくは不可能である知的財産権・無体財産権侵害のように、被害者が蒙った損害の正確な立証や算出が困難な不法行為に対し法的救済を行うための具体的な賠償内容を予め法律で定めたものである。人格権侵害のような、損害の性質が「主観的」("subjective")であるものも救済の対象として法定損害賠償が規定されている場合もある。「制定法上の」(''statutory'')とは、制定法(''statute'')の範囲内の規定であることを表し、「判例法上の」や「コモン・ロー上の」という語と対比されるものである〔 〕。法定損害賠償は損失相殺だけではなく的役割を担い、萎縮効果(Chilling effect)を狙っている。賠償金額の決定は発生事例単位を根拠とする場合があり、例えば米連邦では同法違反者に対し発生事例1件あたり1,000米ドルを超えない額の法定損害賠償を認めている〔 〕。また賠償額が被害の発生日数単位で決定される場合もあり、コネチカットの州法においては、禁じられている人権侵害を行ったと立証された場合、発生日あたり1,000ドルを超えない額の損害賠償を認めると規定されている〔 〕。法定損害賠償は、多くは著作権侵害または商標権侵害に特有の事例であるが、仮に不法行為がなければ被害者が法的に得ていたであろう利益を全て加味した損害賠償自体を指す用語としても用いられる。 双方が不法行為の当事者である場合に一方が他方を訴訟提起することを避ける際には、アメリカ法では("in pari delicto")〔 〕の法理が適用され提訴できなくなる(日本の民法には全く同一の規定はないが、被害者の過失が認められれば、722条の2、不法行為の過失相殺により賠償額が減額される)。 == 知的財産権 == 著作権や商標権などの知的財産権に関する訴訟の場合、原告が侵害の実際の量を立証するのは困難であることが多いため、侵害者が知的財産権の権利使用許可(permission)の申出とそれに係る費用の支払いを行った場合を推定した額を加味し法定損害賠償が算定される〔 〕。その他、侵害発生日数を算定した固定額、または利益侵害の事例毎・個別の知的財産毎・利益品目毎・利益種別毎に各々算定した固定額を法律で定めているなど、知的財産権の態様によって賠償内容が変化する場合もある。 * 欧州においては、「欧州議会並びに理事会指令2004/48/EC」、「」("Intellectual Property Rights Enforcement Directive", IPRED)にて、「仮に侵害者が使用許可を求めた場合に当然支払われたであろうロイヤルティーの額」を損害賠償の基礎に置いている〔。 * (Lanham (Trademark) Act)〔 〕では、営利目的での商標偽造を行った際には1品目あたり1,000ドル以上、(故意の侵害が認められれば)2,000,000ドルを超えない額の損害賠償を認める旨規定されている(15 U.S.C. § 1117(c), Lanham Act Section 35(c).〔 , "Recovery for violation of rights - Statutory damages for use of counterfeit marks" 〕)。 * (Electronic Communications Privacy Act, 「電気通信プライバシー保護法」とも)では、各種の盗聴の罪が認められた場合、侵害発生日数に対し1日あたり100ドル、ただし10,000ドルを超えない額の法定損害賠償を規定している〔 , "Recovery of civil damages authorized - Computation of Damages" 〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「法定損害賠償」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Statutory damages 」があります。 スポンサード リンク
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