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流路モジュール : ウィキペディア日本語版
流体素子[りゅうたいそし]

流体素子(りゅうたいそし)とは、水や空気などの流体を利用して、電気回路のスイッチングと同様の作用を行うことを目的とした部品の総称。その原理は、安定して流れている流体の中にわずかな流量の制御流を加えると、流れが大きく変化するという流体力学に基づいた効果を利用したものである。従って、バルブのような機械的な作動部分は存在しない。
例えば、Y字形の溝が彫られた流体素子では、Y字の下から流体を流すと、流れは分岐部分で分割され、Y字形の両腕の部分から出てくる。ここでY字の分岐部分に開けた小さな穴から、流れに直角な方向に微小な流量を流すと、下からの流れの大部分はY字の片腕に流れ、反対の腕には流れなくなる。微小な流量を流すのをやめれば、下からの流れは、元通りY字の両腕に流れる。
これは、微小な流れによって分岐部の片側に渦が発生し、一方の流れを阻害するためである。
原理はまったく異なるが、効果だけを見れば、微弱な電流を流すことで主回路の電流をスイッチングするトランジスタと同等の作用をしたことになる。
このような流体素子を複数個組み合わせる事により、NANDOR等の論理回路を形成する事も出来る。従って、理論的には、流体素子のみで構成された流体コンピュータも実現可能である。
流体素子を使用する計算機にもアナログ計算機デジタル計算機がある。
1949年に当時ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学生だったアルバン・ウィリアム・フィリップスによってパイプを通る水の流れで正確に経済を巡る貨幣の流れを再現するアナログ計算機であるMONIACを開発した。
元々、1960年代アポロ計画において、放射線が飛び交う過酷な宇宙環境でも影響を受けない制御回路の研究からスタートしたもので、当初はロケットエンジンの噴射ガスを利用して、ミサイル宇宙船の姿勢制御への応用が考えられていた。
その後、電子機器の信頼性向上や、大規模集積回路(LSI)の登場といった電子技術の急速な進歩によって、流体素子の長所も急速に薄れ、次第に顧みられなくなった。
近年、MEMSにより、集積化が可能となったことから、マイクロマシンへの応用、化学反応の制御といった可能性が期待されている。
== 流体素子の特長 ==
; 長所
:# 機械的な作動部分がないため、信頼性が高い。
:# 放射線、超低温といった極限環境でも安定した作動が可能。
; 短所
:# 流体素子を駆動するための動力源が別に必要なため、電子回路(電池を利用できる)のように軽便に扱うことができない。
:# スタンバイ状態でも流体を流しておかなければならないため、電気に比べてエネルギー消費が大きい。
:# 計算(反応)速度に限界があり、流体に気体を使用する場合では音速程度、液体ではさらにひと桁低くなる。
:# 小型化に限界がある。近年では、微細加工技術の進歩によって小型化の壁は突破されつつあるが、それでも大規模な集積は困難と考えられている。シリコンガラスの基板上に流路を形成した微小流体素子の研究が進められ、化学反応やバイオリアクター酵素による反応を厳密に制御する研究が進められつつある。
:# 流体の流れの変化をそのまま使う場合は問題ないが、センサーのようなスイッチング素子として使う場合、電気系への変換器が必要になる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「流体素子」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Nanofluidics 」があります。



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