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源氏絵 : ウィキペディア日本語版
源氏絵[げんじえ]
源氏絵(げんじえ)とは、『源氏物語』を題材とした絵画のこと。ただし江戸時代には、柳亭種彦作の合巻偐紫田舎源氏』を題材とした浮世絵の事も称した。
== 解説 ==

=== 初期の作例と絵巻物 ===
紫式部を作者とする『源氏物語』は成立して間もないころよりその評価は高く、紫式部の日記『紫式部日記』にもそれは伺える。この『源氏物語』の絵画化がいつの頃より行なわれたかは正確にはしがたいが、それはかなり早い時期のことだったのではないかといわれている。現存する記録の上では源師時の日記である『長秋記』元永2年(1119年)11月27日の条に、白河院中宮璋子とのあいだで「源氏絵」を製作していたらしい記述が最も古いが、これは『源氏物語』が成立したと見られる年代からおよそ百年のちのことである。この『源氏物語』の絵画化は、「源氏絵」の名のもとに日本の絵画史にひとつの流れを作ることになる。
現存の源氏絵としては、現在徳川美術館と五島美術館を中心に所蔵される源氏物語絵巻が最古である。この絵巻も12世紀ごろの制作で、当初は『源氏物語』五十四帖を十巻或いは二十巻にしたものではなかったかという。絵に付随する詞書は金銀の箔や染色によって美麗の装飾がなされているが、それら詞書には複数の人物による筆跡が見出される。そのなかのひとつに藤原教長の筆になるものがあり、それにより小松茂美はこの現存の源氏物語絵巻は、後白河院のもとで制作されたものであるとしている。
ただしこの源氏物語絵巻は、じつはほんらい絵と詞書とは別々になっていたことが指摘されている。いずれの絵もよく見ると、およそ20cm幅で均等に折り目が付いているのが認められ、これは絵にあたる部分を折本にし、詞書のほうはひと続きの巻子本にしたもので、鑑賞する際は折本形態の絵を眺めつつ、ほかの人物が巻子本の詞書を手で右から左へと繰りながら読み上げたのだという。これはこの絵巻の中にも同じような場面が描かれており、徳川美術館蔵の「東屋・一」には、中の君が異母妹の浮舟を慰めようと物語の絵を見せる場面が描かれているが、それは浮舟が冊子状の絵を眺め、傍らにいる女房が字だけの冊子、すなわち本文を持ち読み上げている。絵巻物といえば詞書と絵が交互に現われる巻子本の形態であると一般には理解されているが、古くは詞書と絵とは別々の巻として制作されたものがあり、後世それが現在見られるような詞書と絵が交互に貼り継がれる形態に直されている。
古今著聞集』には貞永2年(1233年)の春、後堀河院の御所において「源氏絵十巻」が調製されたことが記され、これは藤原定家の日記『明月記』にも触れられている。さらに室町時代の『看聞日記』にも源氏絵についての記録がある。室町時代には「小絵」(こえ)と称する天地の幅が狭い絵巻物が作られているが、そのなかには源氏絵の作例も伝わっている。源氏絵はこうした絵巻物から、のちの色紙絵などの画題として伝わるなかで、絵画化される場面やその構図が次第に固まってゆく。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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