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漢方医学[かんぽういがく]
漢方医学(かんぽういがく)または漢方は、狭義では漢方薬を投与する医学体系を指す〔今西二郎・栗山洋子「漢方」(今西二郎 編集 『医療従事者のための補完・代替医療 改訂2版』 金芳堂、2009年 収録)〕。また漢方は、漢方薬そのものを意味する場合もある。広義では、中国医学を基に日本で発展した伝統医学を指し、鍼、灸、指圧なども含む。現在日本の東洋医学業界では、古典医学書に基づく薬物療法を漢方医学、経穴などを鍼や灸で刺激する物理療法を鍼灸医学、両者をまとめて東洋医学と呼んでいる〔真柳誠 「西洋医学と東洋医学 『しにか』8巻11号〕。 5・6世紀に、まず朝鮮半島を経由し、のちに直接中国から日本に中国医学が伝来したといわれる〔漢方伝来 十字屋平蔵薬局〕。漢方医学は、明に留学した僧医などによって、金・元の医学が導入されてから徐々に独自性を持つようになり(後世派)〔、16世紀室町時代以降に発展し、活発な貿易が行われた安土桃山時代に一般に普及した。(これは、日本では生薬の多くは輸入する必要があり、海上ルートの確立が欠かせなかったためである〔松本克彦編著『今日の医療用漢方製剤-理論と解説』メディカルユーコン、1997年 〕)陰陽五行説の影響の大きい後世派に対し、江戸時代にはこれを批判して実証主義的な古方派が台頭し、のちに2派を統合した折衷派が生まれた〔長濱善夫 『東洋医学概説』 1961年、創元社〕。現在の漢方医学にも3派の名残がみられ、特に古方派の影響が大きいといわれる〔小髙修司 『中国三千年の知恵 中国医学のひみつ なぜ効き、治るのか』〈講談社ブルーバックス〉講談社 1991年〕。 漢方医学では、伝統的診断法によって、使用する生薬の選別と調合を行う。このように処方された生薬方を漢方薬と称す。漢方薬の一部は1976年(昭和51年)から保険薬として収載されており、現在では漢方薬を使った治療が広く行われている〔漢方Q&A 慶應義塾大学医学部漢方医学センター 〕。しかし日本には、中国や韓国のような伝統医の国家資格は存在せず、1883年(明治16年)以降、医師国家試験の課目にも漢方医学は含まれなかった。そのため漢方医学の体系的な知識を持つ医師は少なく、漢方薬が西洋医学的発想で使われるなどの問題も散見される〔大塚恭男 『東洋医学』 岩波書店(1996年)〕。 明治政府により日本の医療に西洋近代医学が採用され、漢方医学は著しく衰退した。日本の医学教育では、漢方医学を始めとする伝統医学の教育は100年以上ほとんど行われなかったが、2001年に、医学部の教育内容ガイドラインの到達目標に「和漢薬を概説できる」が加えられたことで、全国の大学で漢方医学の講義が徐々に行われるようになってきている〔80大学医学部における漢方教育の現状 日東医誌 2012年〕。 == 呼称 == 16世紀以降、西洋医学が日本に導入されて南蛮医学、紅毛医学と呼ばれたが、江戸中期には西洋医学をオランダ人がほぼ独占するようになり、蘭方または洋方と称された。これに対して、中国医学系の従来の医学を漢方と呼ぶようになった〔大塚恭男 『東洋医学』 岩波書店(1996年)〕。幕末から国学と漢学を尊皇的に皇漢学といい、明治14年ころから和漢学と称されたが、それに伴い漢方も皇漢医学、和漢医学と呼ばれた。日清戦争以降、西洋と対になる東洋という用語が定着したと考えられており、昭和25年に日本東洋医学会が設立されて、東洋医学という呼び方も一般的になった。現在日本の東洋医学業界では、漢方医学(古典医学書に基づく薬物療法)と鍼灸医学(経穴などを鍼や灸で刺激する物理療法を)を合わせて東洋医学と呼んでいる。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「漢方医学」の詳細全文を読む
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