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熊胆 : ウィキペディア日本語版
熊胆[ゆうたん]
熊胆(ゆうたん)は、クマ由来の動物性の生薬のこと。熊の胆(くまのい)ともいう。古来より中国で用いられ、日本では飛鳥時代から利用されているとされ、材料は、クマ胆嚢(たんのう)であり、乾燥させて造られる。健胃効果や利胆作用など消化器系全般の薬として用いられる。苦みが強い。漢方薬の原料にもなる。「熊胆丸」(ゆうたんがん)、「熊胆圓」(ゆうたんえん:熊胆円、熊膽圓)がしられる〔東京都薬剤師会・北多摩支部 おくすり博物館 ジェネリック(GE)篇(その8) 2012年8月24日閲覧(「熊胆丸」及び「熊胆圓(円)」の江戸時代から昭和までのパッケージの写真多数あり。)〕。
古くからアイヌ民族の間でも珍重され、胆嚢を挟んで干す専用の道具(ニンケティェプ)がある。東北のマタギにも同様の道具がある〔滅びゆくマタギ文化 「狩りの文化」(秋田県) 「クマの胆を乾燥させるときに用いた小板。クマの胆のうの上の部分を、ヒモで固く結んでから切り取る。これをストーブの上に吊るして5日から1週間乾燥させる。」「クマの胆の仕上げに使う型板。穴が55個ある。乾燥させた胆のうを、ぬるま湯に入れてよくもみ、型板に挟んで形を整え、再び1週間ほど乾燥させる。出来上がった胆の重さは、生の時の1/4。」(出典には道具の写真がある)〕〔秋田県指定有形民俗文化財 阿仁マタギ用具 秋田県文化財調査報告書第441集、秋田県公式Webサイト〕〔崇高な殺生<第2部 マタギの経済論> 「金」と比すべき商品性 丹念な技法で生み出す「熊の胆」 戦前は県外に行商も 読売新聞秋田版(年月日不明~2006年3月)〕。
※熊胆(胆汁)を採取する畜産業は「熊農場」を参照。
== 日本の熊胆の歴史 ==
熊胆の効能や用法は中国から日本に伝えられ、飛鳥時代から利用され始めたとされる熊の胆は、奈良時代には越中で「調」(の一種)として収められてもいた。江戸時代になると処方薬として一般に広がり、東北の諸藩では熊胆の公定価格を定めたり、秋田藩では薬として販売することに力を入れていたという。熊胆は他の動物胆に比べ湿潤せず製薬(加工)しやすかったという〔熊胆漢方薬・生薬販売 中屋彦十郎薬舗(石川県金沢市)「クマノイを獲るために猟師は雪山を越えて熊の穴を探しもとめる。冬期間にとれた熊の胆は匂いがしない。射殺したクマから血液や脂肪の夾雑物が入らないように胆嚢を取り出し、これを陰干しにするとカチカチに固まる。これが生薬の熊胆で、不透明黒色の固い塊である。多くは卵球形である。一種の香気があり、味はきわめて苦い。粗悪品は魚臭い臭気がある。」〕〔。
熊胆配合薬は、鎌倉時代から明治期までに、「奇応丸」、「反魂丹」、「救命丸」、「六神丸」などと色々と作られていた(現代は、熊胆から処方を代えている場合がある。理由は後述)。また、富山では江戸時代から「富山の薬売り」が熊胆とその含有薬を売り歩いた〔エっ!ちゅう再考 (1) 県発展の基礎作った売薬業 読売新聞富山〕。
北海道先住民のアイヌにとってもヒグマから取れる熊胆や熊脂(ゆうし)などは欠かせない薬であった。倭人の支配下に置かれてからは、ヒグマが捕獲されると松前藩の役人が毛皮と熊胆に封印し、毛皮は武将の陣羽織となり、熊胆は内地に運ばれた。アイヌに残るのは肉だけであった。熊胆は、仲買人の手を経て薬種商に流れ、松前藩を大いに潤した。明治期になっても、アイヌが捕獲したヒグマの熊胆は貴重な製薬原料とされた。〔「日本にはヒグマとツキノワグマの2種が分布する。その生息状況は地域によって異なり、絶滅が危惧される孤立個体群もあるが、種全体としては絶滅するおそれはないと考えられている(環境省 2002)。このようにクマの胆を利用しつつも個体数が維持されている国は世界的にみてもユニークである。」 アイヌの話は「(鈴木 1991)」の書き写し。〕
昔から知られる熊胆の鑑定法、昔から知られる効能は、『一本堂薬選』〔壺中天薬局・南鍼灸院 熊胆と動物胆 2012年8月24日閲覧。 「熊胆の文献で信頼でき、詳細な説明がされているものに、『一本堂薬選』(1)がある。著者の香川修庵は、」〕に詳しい。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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