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漢字文化圏において、熟語(じゅくご)と称する語は、2字以上の漢字が結合した言葉のことである〔『ベネッセ表現・読解国語辞典』ベネッセコーポレーション、2003年5月。 『集英社国語辞典』第1版、集英社、1993年。 『日本語大辞典』講談社、1989年11月。 『学研国語大辞典』、学習研究社、1978年4月。 「デジタル大辞泉 」小学館、2010年7月30日閲覧。 などの記述による〕。構成要素が漢字であることを強調するために漢熟語あるいは熟字などと呼ぶこともある。日本語においては、複数の漢字で構成される単語として認識される〔。本項目では、特にことわりのない限り、この意味での「熟語」について解説する。 中国語における「熟語()」〔、〕という語は、常用される俚諺や格言といったニュアンスで用いられることが多く、むしろ「複合詞()」〔、〕や「合成詞()」〔、〕あるいは単に「2字の並び」という意味の「駢字(べんじ、)」〔、〕などの語の方が日本語で言うところの「熟語」に近いが〔『中日大辞典』 愛知大学中日大辞典編纂処、大修館書店、1987年2月、増訂第二版。〕、いずれも全く同義というわけではない。なお、中国語で「熟字()」は、「よく知られている漢字」という意味になる〔。 なお、朝鮮語、ベトナム語についても、漢字に相当する語彙要素(字音形態素)が結合した言葉が数多く存在している。これについては、''漢語系語彙''にある各項目を参照のこと。 == 熟語の形態論 == 原則的に漢字は、1字ごとに意味を有しているが、複数の漢字が結合して1つの意味をもつ言葉になることがある〔峰岸明「熟語」『漢字百科大事典』89-90頁。〕。例えば、「鉛」「筆」という2つの漢字が結合した「鉛筆(えんぴつ、)」という言葉は、日本語でいうところの典型的な熟語である。以上のような漢字の造語機能を専門的には「漢字連接」と呼ぶこともある〔石井正彦「漢字連接」『漢字百科大事典』、139-140頁。〕。 中国語においては原則的に1字が1単語を表し、特に文語である漢文においてはこの傾向が著しく、2字以上の漢字の結合もある種の連語的表現とみなすことができた。これが漢字が「表語文字」と呼ばれる理由である。なお、中国文学者の高島俊男は、このような2字の漢字の結合のことをやや諧謔的な文脈ではあるが「単語というより『くみあわせ語』などと言ったほうがふさわしかろう」と表現している〔高島(2001)、38,41-42頁。〕。 言語学的には、語彙イディオムの一種とみなすことができる。漢字1字を取り出してみると、中国語においては、「鉛()」〔、〕「筆()」〔、〕がそれぞれ単独で1つの単語となることのできる自由形態素とみなすことができる。 これに対し、日本語の場合は、「鉛(えん)」も「筆「ひつ/ぴつ」」も単独では意味が通じない拘束形態素となっている。もちろん日本語においても、ほぼすべての漢字がそれぞれ個別に意味を持っているが、日本語における漢字は多くの場合、対応する和語による訳語(訓読み)が充てられるため、上記「鉛」「筆」の例のように、漢字の字音は、熟語を作るためのみに存在する拘束形態素となることが多い〔以上の記述は、河東束雄「語の構造」『言語学への招待』中島平三、外池滋生編著、大修館書店、1994年1月、95-105頁を参考にした。〕。ただし、「肉体」における「肉(にく)」、「地球」における「球(きゅう)」など、自由形態素となる字音語も存在する。以上のような議論から、日本語において漢字を、意味をもつ最小単位であるとして、表意的な「形態素文字」と表現する者もいる〔小泉保『日本語の正書法』大修館書店、1978年1月。〕。 また、中国語においても、近世以降の文章、とりわけ白話(口語)では、「椅子()」における「子()」のように語調を整えるのみの漢字も観察され、これに類する漢字は拘束形態素であるといえる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「熟語 (漢字)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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