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爆戦 : ウィキペディア日本語版
爆戦[ばくせん]

爆戦(ばくせん)とは、爆装し特攻で使用された零式艦上戦闘機を意味する。
1944年昭和19年)6月に戦われたマリアナ沖海戦当時の資料では、零式艦上戦闘機に爆撃能力を付与したものを戦闘爆撃機とし、略して戦爆と表記している〔第一機動艦隊司令部『昭和17年6月1日~昭和19年6月30日 あ号作戦戦時日誌戦闘詳報(1)』65画像目〕〔第一機動艦隊司令部『戦闘詳報.第1機動部隊 あ号作戦(653空.第1機動艦隊司令部.千歳.千代田)(1)』51画像目〕〔川崎『マリアナ沖海戦』129頁〕。マリアナ沖海戦以降、特攻機として使用され、250kg爆弾または500kg爆弾を搭載した零戦は、爆撃戦闘機や爆装戦闘機と呼ばれ略称として爆戦と呼ばれた〔野原『零戦六二型のすべて』75頁〕。
== 陸上基地部隊での戦爆の運用 ==
戦爆の零式艦上戦闘機の攻撃により敵艦を撃破する構想は、フィジーサモアへ侵攻する計画のFS作戦で本格的に検討された。目的は敵空母の発着艦能力を奪うこと、400海里(約740km)以遠の距離から零戦の長距離進出能力を活かしてアウトレンジ攻撃をかけ味方空母の保全を図ることであった。1942年(昭和17年)10月より後には、標的艦「摂津」を使用して降下爆撃が実施された。1943年(昭和18年)3月12日、戦爆の零式艦上戦闘機による降下爆撃研究の結果が報告された。研究は零戦の両翼下に60kg爆弾を装備し、急降下爆撃と緩降下爆撃を行ったもので、降下角度45度以上の急降下爆撃には不適であるが、緩降下爆撃を行った場合には35%から40%の命中率を記録した。また6G以内であれば機体強度に問題なく引き起こしが可能だった。60kg爆弾装備の戦爆の零戦による出撃は、艦爆隊の戦力が減少したソロモン戦線でしばしば行われた。戦訓として、戦闘機用爆弾投下器が性能低下を少なからず起こすため、改善する必要のあることが指摘された〔川崎『マリアナ沖海戦』124-125頁〕。
1943年(昭和18年)6月、九九式艦上爆撃機の旧式機化による損害の大きさから、零式艦上戦闘機を代用の艦爆として使用し、搭乗員に艦爆のパイロットを充てる計画が出現した。同年7月零式艦上戦闘機による60kg爆弾2発を使用した爆撃は対飛行場攻撃で有望であった。対艦攻撃では高度約300mからの爆撃を行う必要があることが報告された。また爆撃照準器とエアブレーキを開発し装備することが要望された〔川崎『マリアナ沖海戦』125頁〕。ソロモン戦域で作戦行動についていた五八二空では、戦爆の零戦を用いた研究と攻撃が行われた。五八二空において零戦による緩降下爆撃の研究を行った艦爆の操縦員の所見は、点目標に対する攻撃は困難であるが面的な目標であれば攻撃可能であるというものだった〔川崎『マリアナ沖海戦』126頁〕。
緩降下爆撃訓練は以下のようなものであった。零戦は1kg演習用爆弾を両翼に搭載し、降下角度30度で突入した。速度は555km/hを軽く突破したが揚力がつきすぎて機体の頭が浮き、操縦員が力で押さえ込むことが難しかった。降下角度をより浅くした場合には艦爆とほぼ同等の爆撃精度が得られた。12月中旬以降、五八二空の司令は、九九艦爆による昼間攻撃を損害の激しさから中止し、その艦爆の操縦員を零戦に配置換えとするという決定を下した。12月15日のマーカス岬方面の攻撃に際し、爆装した戦爆の零戦15機、九九艦爆9機が、直掩の零戦40機に護衛されて出撃した。また16日には戦爆の零戦16機が、直掩の零戦38機に護衛されて出撃した〔川崎『マリアナ沖海戦』125-126頁〕。
この後五八二空はトラックヘ移動、五〇一空へ吸収された後に1944年(昭和19年)2月17日の連合軍の空襲により大きな被害を受け、戦闘爆撃機隊(戦爆隊)としてそれ以上の活発な作戦行動はできなかった。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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