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物理的半減期 : ウィキペディア日本語版
半減期[はんげんき]

半減期(はんげんき、''half-life'')とは、ある放射性同位体が、放射性崩壊によってその内の半分が別の核種に変化するまでにかかる時間を言う〔素粒子物理学においては、半分ではなく自然対数の底の逆数、すなわち約0.368...にまで減少する時間を平均寿命というが、数学的性質には半分になるか自然対数の底の逆数になるかの時間という意味で半減期と殆ど違いがない。〕。
== 概要 ==
放射能を持つ元素(放射性同位体〔原子番号が同じで質量数の異なる元素を同位体(isotope、アイソトープ)という。さらに、放射線を放出して原子核が放射性崩壊する性質(放射能)をもつ同位元素は放射性同位体(radioisotope、ラジオアイソトープ)と呼ばれる。〕)の原子核は時間経過に伴い確率的に放射性崩壊をして他の元素に変化していくが、はじめの原子数が N 個であるとき、その半分 N/2 個が放射性崩壊するまでの時間をその放射性同位体の半減期 (half-life) と呼ぶ〔例えば、アボガドロ定数個のある放射性同位体で構成されるサンプルをつくると、崩壊する確率に応じて一定の速度で内部の原子核が崩壊をしていくことになる。この速度を言い換えた値が半減期であり、はじめに存在した状態の半分が崩壊するまでにかかる時間のことである。〕。または、ある放射性同位体の放射能 (activity) を A とするとき、それが時間経過によって半分 A/2 になるまでの時間を言う(同値性については後述)〔なお、崩壊する量は放射性物質の量に比例する。たとえば10万ベクレルの放射性物質があったとして、半減期が経過すれば5万ベクレルであるが、100ベクレルの前者と同様の放射性物質があり、半減期が経過しても50ベクレルしか減らないというわけである。
さらに言えば、半減期や半減期の10倍の時間が経過すれば、放射性物質が完全にゼロになると勘違いしている者もいるが、半減期とは一定の期間ごとに半分になっていくのであって、完全にゼロになるということは実質上ありえない。なぜならばアボガドロ定数で考えれば放射性物質は、たとえば1ベクレルといったようにベクレルで表示すればとても少なく見えたとしてもかなりの量になるからである。それに原子数がゼロに近づけば、大数の法則が成立せず確率ゆらぎも大きくなるため半減期による計算の精度も落ちる(上の図のシミュレーションも参考)。ただ、指数表示で何桁ベクレルが1ベクレル、0.1ベクレル…実質上検出下限値ベクレルに減少する時間であれば、後述の手法で計算が可能である。放射性物質がほとんどなくなると言った場合、ベクレルが検出下限値に近くゼロに近づくと解釈すべきであろう。また明らかにこの手法をベクレルではなく原子数に当てはめれば、このような殆どゼロになるということは極めて長い時間が掛かってしまうため実質上ありえないとただちに理解される。〕。
半減期は放射性同位体(核種)の安定度を示す値でもあり、半減期が長ければ安定であり、逆に半減期が短ければ短いほど不安定な核種ということになる〔中性子中間子などの素粒子も不安定であり、放射性核種と同じように一定の半減期で他の素粒子に変わっていく。〕。
放射性同位体の放射性崩壊は自然に発生するもので、放射性同位体ごとに定まる確率(崩壊定数)のみによって左右されるものである〔放射性崩壊は指数過程によって記述されるため無記憶過程であり、崩壊していく速度は物質の出入りがゼロであれば一定である。〕。すなわち、崩壊までの期間はその物質の置かれている古典物理学的・化学的環境(電磁場化学反応など)には一切依存しない〔これは理論的には、原子核の結合エネルギーが数千万eVと原子の結合エネルギーに比してきわめて大きいため、原子核外部の物理現象では内部変化が起こらないためであると理解される。
:〕。もともと原子力は放射性物質の半減期を短くすれば、放射性物質の崩壊エネルギーをより短期間に取り出せるだろうということで半減期を短くする研究が行われたが古典物理学的な手法によるものはことごとく失敗した〔例えばラザフォードによってラジウムに対して、
* 2500度、1000気圧の環境に置く
に始まり、
* 絶対零度近くの極低温、超高温の環境に置く
* 2000気圧に達する圧力をかける
* 8万3000ガウスの磁場をかける
* 地球引力の1000倍の遠心力をかける
などの古典物理学的実験を行ったが、ラジウムの半減期は一切変化しなかった。
:〕〔ただし、これは崩壊の速度を変化させることが原理的に絶対不可能という意味ではない。これらの作用が原子核の放射性崩壊に影響を及ぼしていないという結論が重要である。
:〕。
人工的に原子核の崩壊を起こすには加速器などを用いなくてはならない。また、人工的に原子核の崩壊を起こして、半減期よりも早く放射性核子を減らす手法としては核変換技術と呼ばれる技術が研究されている。
なお、一つの放射性核種を対象として、その放射性核種がいつ崩壊するかを決定論的に予想することも出来ない〔この一つ一つの崩壊する時間間隔の確率は指数分布に従い、単位時間あたりの崩壊はポアソン分布になる。これはガイガーカウンターなどを用いて放射線を計測すると、単位時間あたり計測値がポアソン分布になり、放射線を計測すると音が鳴る機種であれば、その音の間隔が指数分布となる所以である。〕〔また指数分布の無記憶性により、ガイガーカウンターである期間放射線を計測しなくても、それから時間tが経過するまでに計数する期待値は変わらない(当然、平均値が等しいという大前提の上でだが)。このように確率現象である放射性物質の崩壊であっても、十分大きな量の放射性同位体や素粒子などが崩壊する際に、いわゆる大数の法則として定式化されたものが半減期である。つまり極微量であれば誤差が大きくなるが(それだけ計測に必要な時間も長くなるが)、放射性物質が大量にあるのであれば計測時間が短く精度も高くなるという理由でもある。〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「半減期」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Half-life 」があります。



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