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生物学史[せいぶつがくし]
生物学史(せいぶつがくし、英語:history of biology)とは、生物学の歴史、またはそれを扱う科学史の一分野である。
== 古代ギリシャ == 生物学の萌芽は古代ギリシアに見られる。 一般に、諸研究に先駆しているという意味で、古代ギリシャのアリストテレスをもって生物学史の始めとする〔『岩波生物学事典』 第四版、p.760〕〔平凡社『世界大百科事典』第15巻、p.418【生物学】〕。「アリストテレスは実証的観察を創始した〔『岩波生物学事典』p.33【アリストテレス】〕」「全時代を通じて最も観察力の鋭い博物学者の一人〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、p221【生物学】〕」などとされ、生物の分類法を提示するなどし、後世に至るまで多大なる影響を及ぼしたのである。アリストテレスの動物学上の著作として残っているものとしては''Historia animalium''『動物誌』、''De generatione animalium''『動物発生論』、''De partibus animalium''『動物部分論』、''De anima''『心について』(『霊魂論』とも)がある〔『岩波生物学事典』【生物学】〕。『動物誌』では、500を越える種の動物(約120種の魚類や約60種の昆虫を含む)を扱っており、随所で優れた観察眼を発揮している〔『動物誌』は、翻訳が岩波文庫でも出ている。上・下二巻の大部で(アリストテレース『動物誌 上』1998、ISBN 978-4003860113 および『動物誌 下』1999、ISBN 978-4003860120。岩波文庫)〕。植物に関する研究も行い著作もあったとされるが、失われ現在では残っていないとされる。アリストテレスの生物に関する研究の中でも動物に関する研究は秀でており、特に動物学の祖とされる。分類、生殖、発生、その他の分野において先駆的な研究を行い、その生命論や発生論は17世紀や18世紀の学者にまで著しい影響を与えた。ただし、アリストテレスの生物学は、今日の視点から見れば哲学的とも言えることがらも含まれているが〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.220〕、彼の思想は生物学思想史に影響を与えているので重要である〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.220〕。たとえば生命の原理を考察したときに、彼が用いたプシュケーに関する概念である。(注. 「プシュケー」という語の最も根源的な意味は「呼吸」である。呼吸をするということは生きていることの最も明らかなる兆候なので、呼吸=プシュケという語が生命を意味するようになり、それが転じて心や霊魂を意味するようになったのはある意味当然のことである〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.220〕。)アリストテレスは、研究の途上では、生物の種類によって異なるプシュケーの段階があると見なすようになり、(1)植物的霊魂 (2)動物的霊魂 (3)理性的霊魂 を区別するようになった。もっとも、彼の知識が増えるにしたがい、プシュケーによる植物・動物・人間の区別をさほど絶対的なものとはしないようになり、動物もその程度に応じて人間と同じような理性を持っているとし、最後の見解としてはプシュケー(生命あるいは霊魂)の間には基本的な区別がない、とするものになったようである〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.221〕。この見解は現代の生物学者のある重要な一派の見解とまったく同じである〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.221〕。上記のように、精細に作られたアリストテレスの生物学理論はあるものの、彼の生物学上の著作は、必ずしもこうした"高級な"〔"哲学的な"の意か〕主題を含まず、現代人の生物学者が行っているような"普通の" 研究が数多くある〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.221〕。例えば、魚類の習性に関する優れた観察、タコの産卵と発生についての観察、あるいはクジラ、イルカについての研究やサメの発生についての研究も非常にすぐれている〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.221〕。 アリストテレスの植物研究は失われてしまったが、植物学に関しては、アリストテレスの後継者で弟子のテオフラストスによる植物学上の完全な著作は現存している。彼は師から伝えられた発生学的研究の価値を理解しており、植物の生殖様式の差異に重点を置き、単子葉類と双子葉類を区別した。彼の諸著作は古代から現代にまで伝わった生物学の完全な研究書として非常に貴重なものである〔『ブリタニカ国際大百科事典』第11巻、【生物学】p.221〕。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「生物学史」の詳細全文を読む
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