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白血病 : ウィキペディア日本語版
白血病[はっけつびょう]

白血病(はっけつびょう、Leukemia)は、「血液がん」ともいわれ、遺伝子変異を起こした造血細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的に増殖して正常な造血を阻害し、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出てくる血液疾患。白血病細胞が造血の場である骨髄を占拠するために造血が阻害されて正常な血液細胞が減るため感染症貧血出血症状などの症状が出やすくなり、あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。治療は抗がん剤を中心とした化学療法輸血や感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植臍帯血移植などの造血幹細胞移植治療も行われる。大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の4つに分けられる。
== 概要 ==
日本血液学会では
としている。
白血病は病的な血液細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的、つまりコントロールされることなく無秩序に増加する疾患である。骨髄は血液細胞を生み出す場であり、骨髄での白血病細胞の増加によって正常な造血細胞が造血の場を奪われることで正常な造血が困難になり、血液(末梢血)にも影響が及ぶ。あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。白血病患者の血液中では白血病細胞あるいは病的な白血球を含めると白血球総数は著明に増加することも、あるいは減少することもある。しかし、正常な白血球は減少し血小板赤血球も多くの場合減少する〔慢性骨髄性白血病では一見正常な白血球や血小板が増加し、慢性リンパ性白血病でも一見正常なリンパ球が増加するが、それらはあくまで正常な血球ではない〕。
白血病の症状として、正常な白血球が減ることで感染症(発熱)、赤血球が減少することで貧血になり貧血に伴う症状(倦怠感、動悸、めまい)、血小板が減少することで易出血症状などがよく見られ、また血液中にあふれ出た白血病細胞が皮膚や神経、各臓器に浸潤(侵入)してそれらにさまざまな異常が起きることもある。
治療は抗がん剤を中心とした化学療法によって白血病細胞の根絶を目指し、白血病の諸症状の緩和に輸血や造血因子投与や(抗菌薬やクリーンルームなどの)感染症対策などの支持療法に加え、難治例では骨髄移植などの造血幹細胞移植治療も行われる。
白血病は年に10万人あたりおよそ7人(2005年、日本)が発症する比較的少ないがんであるが〔2005年の国立がん研究センターの統計では、がん全体では、年間10万人あたり500人強罹患するが、白血病全体では年間10万人あたり7人程度でがん全体の1%強に過ぎない-国立がん研究センター・部位別年齢階級別がん罹患数・割合(2005年) 2012.2.19閲覧、部位別年齢階級別がん罹患数・割合 2012.2.19閲覧〕、多くの悪性腫瘍(癌、肉腫)は高齢者が罹患し小児や青年層では極めてまれなのに対し、白血病は小児から高齢者まで広く発症するため、小児から青年層に限ればがんの中で比較的多いがんである〔財団法人がん研究振興財団・部位別年齢階級別がん罹患数・割合(2004年) 2011.06.17閲覧〕。造血の場である骨髄で造血の元になっている細胞が変異したことによって起きるのが白血病であり、癌や肉腫のように固形の腫瘍を形成しないため、胃癌や大腸癌などのように外科手術の適応ではないが、その代わり抗がん剤などの化学療法には極めてよく反応する疾患である〔木崎 昌弘 編著『白血病・リンパ腫・骨髄腫 : 今日の診断と治療』 第4版、中外医学社、2011年、p.15〕〔ただし、白血病細胞は固まりは作らないが、白血病細胞がリンパ節や歯肉、など各種臓器に浸潤してそこで腫瘤を作ることはある、この腫瘤は白血病の本体ではないので外科的に取り除いても根本治療にはならない〕。19世紀にドイツの病理学者ルドルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョー(ウィルヒョウ,フィルヒョウ)が白血病を初めて報告して Leukemia(白血病)と名付けたが、かつては白血病は治療が困難で、自覚症状が現れてからは急な経過をたどって死に至ったため、不治の病とのイメージを持たれてきた。また、白血病は現代においても現実に若年層での病死因の中で高い割合を占めることから、フィクションでは、かつての結核に代わって、癌と並び現代ではしばしば若い悲劇の主人公が罹患する設定になることが多い〔日本成人白血病治療共同研究グループ・白血病の発生率 2012.2.18閲覧〕。しかし、1980年代以降、化学療法や、骨髄移植 (bone marrow transplantation; BMT)、末梢血造血幹細胞移植 (peripheral blood stem cell transplantation; PBSCT)、臍帯血移植 (cord blood transplantation; CBT) の進歩に伴って治療成績は改善されつつある〔大野 竜三 編集『よくわかる白血病のすべて』永井書店、2005年、pp.301-309〕。
一口に白血病と言っても、大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の4つに分けられ、それぞれは様相の異なった白血病である。
急性白血病では増加している白血病細胞は幼若な血液細胞(芽球)に形態は似てはいるが、正常な分化・成熟能を失い異なったものとなる〔東田 俊彦著 『iMedicine. 5』リブロ・サイエンス、2010年、p.152〕。慢性白血病では1系統以上〔フィラデルフィア染色体Ph+の慢性骨髄性白血病では好中球好塩基球の増加は必発であり、血小板も増加していることが多い。-順天堂大学血液内科・慢性白血病の特徴 〕の血液細胞が異常な増殖をするが、白血病細胞は分化能を失っておらず、幼若な血液細胞(芽球)から成熟した細胞まで広範な細胞増殖を見せる〔日本血液学会、日本リンパ網内系学会 編集『造血器腫瘍取扱い規約』金原出版、2010年、p.2〕。急性白血病細胞は血液細胞の幼若細胞に似た形態を取り〔、多くの急性白血病では出現している白血病細胞に発現している特徴が白血球系幼若細胞に現れている特徴と共通点が多い細胞であるが〔東田 俊彦著 『iMedicine. 5』リブロ・サイエンス、2010年、p.162〕、多くはないが赤血球系統〔浅野茂隆、池田康夫、内山卓 監修 『三輪血液病学』文光堂、2006年、pp.1395-1397〕や血小板系統〔FAB分類AML-M6では白血病細胞の半数は赤血球の幼若球である赤芽球に似ていて赤白血病とも呼ばれ、AML-M7では白血病細胞は骨髄系細胞の証であるMPOは発現せず、巨核球系の抗原が発現していて急性巨核芽球性白血病と呼ばれる。- 東田 俊彦著 『iMedicine. 5』リブロ・サイエンス、2010年、pp.180-181〕〔浅野茂隆、池田康夫、内山卓 監修 『三輪血液病学』文光堂、2006年、pp.1397-1398〕の幼若細胞の特徴が発現した白血病細胞が現れるものもあり、それらも白血病である〔浅野茂隆、池田康夫、内山卓 監修 『三輪血液病学』文光堂、2006年、pp.1376-1378〕〔小川聡 総編集 『内科学書』Vol.6 改訂第7版、中山書店、2009年、p.117〕。血液細胞は分化の方向でリンパ球と骨髄系細胞〔骨髄系細胞は血液細胞でリンパ球以外の細胞である。顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、赤血球、血小板やその母細胞などである。造血幹細胞が分化・増殖を始めると最初にリンパ系と骨髄系に分化の方向が分かれる。-出典 大西 俊造、梶原 博毅、神山 隆一 監修『スタンダード病理学』第3版、文光堂、2009年、pp.400-402〕に分けられるが、ほとんどの白血病細胞も少しであっても分化の方向付けがありリンパ性と骨髄性に分けることができる〔大西 俊造、梶原 博毅、神山 隆一 監修『スタンダード病理学』第3版、文光堂、2009年、pp.400-402〕〔日本血液学会、日本リンパ網内系学会 編集『造血器腫瘍取扱い規約』金原出版、2010年、p.2〕。
白血病における慢性と急性の意味は、他の疾患で言う急性・慢性の意味合いとは違う。急性白血病が慢性化したものが慢性白血病という訳ではなく、白血病細胞が幼若な形態のまま増加していく白血病を「急性白血病」、白血病細胞が成熟傾向を持ち一見正常な血液細胞になる白血病を「慢性白血病」という。白血病の歴史の中で一般に無治療の場合には白血病細胞が幼若な形態のまま増加していく白血病の方が死に至るまでの時間が短かったので「急性」と名付けられた。急性白血病が慢性化して慢性白血病になることはないが、逆に慢性白血病が変異を起こして急性白血病様の病態になることはある〔村川 裕二 総監修『新・病態生理できった内科学(5)血液疾患』第2版、医学教育出版社、2009年、pp.107,131〕。
一般的に用いられる形容で、白血病を「血液の癌」と呼ぶが、この形容は誤りである。漢字で「癌」というのは「上皮組織の悪性腫瘍」を指し、上皮組織でなく結合組織である血液や血球には使えない。ただし、「血液のがん」という平仮名の表記は正解である。平仮名の「がん」は、「癌」や「肉腫」、血液悪性腫瘍も含めた広義的な意味で使われているからである〔日本成人白血病治療共同研究グループ・わかりやすい白血病の話 2015.01.17閲覧〕。
悪性リンパ腫骨髄異形成症候群といった類縁疾患は通常、白血病には含まれないが、悪性リンパ腫とリンパ性白血病の細胞は本質的には同一であるとされ、骨髄異形成症候群にも前白血病状態と位置付けられ進行して白血病化するものもあり〔骨髄異形成症候群の一部には芽球が増加しているものがあり、WHOの定義では骨髄での芽球比率が19%以下は骨髄異形成症候群であるが、そのまま芽球が増加し20%を超えると急性白血病と見なされる。ただし、19%と20%で症候的に大きな変化があるわけではなく、臨床的には適宜柔軟に対処する。-直江 知樹、他 編『WHO血液腫瘍分類』医薬ジャーナル社、2010年、p.108〕、これら類縁疾患と白血病の境目は曖昧な面もある。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「白血病」の詳細全文を読む



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