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砧[きぬた]
砧(きぬた)は、アイロンのない時代、洗濯した布を生乾きの状態で台にのせ、棒や槌でたたいて柔らかくしたり、皺をのばすための道具。古代から伝承された民具であり、古くは夜になるとあちこちの家で砧の音がした。その印象的な音は多くの和歌にも詠まれ〔み吉野の 山の秋風小夜ふけて ふるさと寒く 衣打つなり (百人一首 参議雅経)〕また数多くの浮世絵の題材とされてきた。日本の家庭では、炭を使うアイロンが普及した明治時代には廃れたが、朝鮮では1970年代まで使われていた。現在では完全に廃れている。 == 概要 == 厚布を棒に巻き付け、その上に織物の表を内側にして巻き付け、さらに外側を厚手の綿布で包み、これを木の台に乗せ、平均するように槌(つち)で打つのである。上記の用法の他、装束に使う絹布などは糊がついておりこれを柔らかくし、光沢を出すために砧で打つことが行われる。こうしてできた衣を打衣といい、女房装束に用いられる。古来は単衣のすぐ上五衣の上、中古以来は順番が異なり表着のすぐ下に着られるものになる。 和語の語源は「キヌイタ(衣板)」に由来するといわれる。衣を打つのに用いた石の台。また草を打つのに用いる石のこと。庾信詩「秋砧調急節」、古樂府「藁砧今何在」〔KO字源「砧」〕台板のほうが「きぬた」であり棒のことではない。たたく棒のことを「きぬた」とされがちだが「杵:きね」との混同であり、棒の呼称は「砧杵(チンショ):きぬたのきね」である。民具としては木製のものが普及していた。表記としては、材質にかかわらず「砧」が使われた〔大槻文彦「言海」251ページ〕が、木製のものに「枮」が使われることもあった。 漢字としての「砧」に着目した場合、衣を打つ民具だけに用いるものではない。樹砧(ジュチン:接ぎ木の台木)、砧鑕(チンシツ:古代中国の処刑法「腰斬刑」の際、伏せて斧を受ける台)、砧斧(チンフ:切り台と斧、腰斬刑の道具)などの用法がある〔KO字源「樹」「砧」〕。 日本では衣をやわらかくする道具(きぬた)のほかに、わらなどを叩いて柔らかくし、わらじなどの工芸製品を作るさいに使用する民具も「きぬた」と呼称することもあるが、たたき棒だけのことをさす場合、正しくは「横槌:ヨコヅチ」である〔末尾外部リンク参照。またgoo辞書「横槌」も参照〕。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「砧」の詳細全文を読む
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