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社会的市場経済[しゃかいてきしじょうけいざい]
社会的市場経済(しゃかいてきしじょうけいざい、、)とは、社会福祉政策と経済政策の思想で、「自由競争に基いて自由な創意工夫を、経済的効率性に裏打ちされた社会福祉的進歩へとつなげること」を目的としている〔Alfred Müller-Armack: ''Wirtschaftsordnung und Wirtschaftspolitik.'' Bern 1976, S. 245.〕。この概念は解釈がなければ理解できず〔Hans-Rudolf Peters: ''Wirtschaftspolitik.'' Oldenbourg Wissenschaftsverlag, 2000, ISBN 3-486-25502-9, S. 47.〕、その多義性ゆえに場合によっては政治スローガンと見られることもある〔''Grundtexte zur Sozialen Marktwirtschaft. Band 3, Marktwirtschaft als Aufgabe.'' Gustav-Fischer-Verlag, Stuttgart/New York 1994, ISBN 3-437-40331-1, S. 36.〕。 「社会的市場経済」の名称および概念の起源は、ドイツの国民経済学者で文化社会学者のアルフレート・ミュラー=アルマックに端を発する。彼によれば、この考え方には、市場での自由の原理を社会的融和と結びつける的な公式がある。政治家のルートヴィヒ・エアハルトは、この名称を政治的に好都合だと考えて用いた。社会的市場経済は、1930年代と40年代、オルド自由主義、特にヴァルター・オイケン〔Uwe Andersen, Wichard Woyke (Hrsg.): ''Handwörterbuch des politischen Systems der Bundesrepublik Deutschland – Grundlagen, Konzeption und Durchsetzung der Sozialen Marktwirtschaft''. 5. Auflage. Leske+Budrich, Opladen 2003 (Lizenzausgabe Bonn: Bundeszentrale für politische Bildung 2003, Online ).〕、フランツ・ベーム、〔Otto Schlecht: ''Grundlagen und Perspektiven der sozialen Marktwirtschaft.'' Mohr Siebeck, 1990, ISBN 3-16-145684-X, S. 9, 12.〕などの思想を受け継いでいる。しかし、例えば景気策や社会福祉政策などにおけるプラグマティズムにも影響を受けている〔〔''Sie war niemals eine „Reißbrettkonstruktion findiger Ökonomen“, sondern wurde von Beginn an bezogen auf die realen wirtschaftlichen Begebenheiten.'' (Bernhard Löffler: ''Soziale Marktwirtschaft und administrative Praxis''.Steiner, Wiesbaden 2002, S. 85).〕。 「社会的市場経済」は、ドイツとオーストリアの経済構造を示す名称としても使われている〔Hanns Abele: ''Handbuch der österreichischen Wirtschaftspolitik.'' Manz, 1982, ISBN 3-214-07050-9, S. 145〕。1990年の東西ドイツ基本条約のなかで、のための共通経済秩序としても合意され〔Vertrag über die Schaffung einer Währungs-, Wirtschafts- und Sozialunion zwischen der Bundesrepublik Deutschland und der Deutschen Demokratischen Republik (Staatsvertrag) vom 18. Mai 1990, Kapitel 1, Art. 1 Abs. 3 (Vertragstext ).〕〔Otto Schlecht: ''Grundlagen und Perspektiven der sozialen Marktwirtschaft.'' Mohr Siebeck 1990, S. 182 ff.〕、また2009年には国際金融危機の克服のための「輸出品」となるべきだと宣伝された〔''Angela Merkel: Soziale Marktwirtschaft als Exportschlager'' , Focus, 30. Januar 2009.〕。リスボン条約によれば、EUは完全雇用と社会福祉的進歩を伴って「世界と競合可能な社会的市場経済」を作るよう努めている〔„Grundlegendes Ziel der Union ist es künftig, den Frieden, ihre Werte und das Wohlergehen ihrer Völker zu fördern. Diese allgemeinen Ziele werden ergänzt durch eine Reihe besonderer Ziele: die nachhaltige Entwicklung Europas auf der Grundlage eines ausgewogenen Wirtschaftswachstums und von Preisstabilität, eine in hohem Maße wettbewerbsfähige soziale Marktwirtschaft, die auf Vollbeschäftigung und sozialen Fortschritt abzielt, sowie ein hohes Maß an Umweltschutz und Verbesserung der Umweltqualität“ EU-Verfassungsvertrag, Art. I-3 〕。国際的には、と呼ばれることもある〔Rocco Buttiglione: ''Einige Gedanken über das Rheinische Modell.'' In: Michael Spangenberger (Hrsg.): ''Rheinischer Kapitalismus und seine Quellen in der Katholischen Soziallehre''. Aschendorff, Münster 2011, S. 141.〕。 ==概要== 島野卓爾によれば「市場経済であるから、市場の調整メカニズムと自由競争を尊重し、市場の均衡化機能を重視する考え方であることは間違いない」とするものの、同時に「『市場経済』の前に置かれた『社会的』という形容詞は、市場参加者で構成する社会全体の動きに配慮するという倫理的概念である。政策による社会調和を重視する考え方である。したがって必要となれば、政府の政策運用による市場介入も許される。たとえば市場参加者間の所得分配が不公正であれば、税制による所得移転政策がとられることになる」〔田中 修 世界経済危機を契機に資本主義の多様性を考える 第8話 社会的市場経済 ─ドイツ 〕。 言うなれば企業や私有財産、自由貿易を擁護しつつ、労働組合の団体交渉や年金・健康保険などの社会保険といった社会政策と組み合わせた形の資本主義であり、西ヨーロッパや日本〔1980年代以前の日本の自民党も含むが、公務員の労働者数に占める比率が比較的低く、公共企業体の経済に占める事業規模も小さく、一方外郭団体が多数存在するという点で西欧諸国の体制とは異なる。〕など、主にアメリカを除く先進国で見られた形態である。またレッセフェール的な経済自由主義と社会民主主義的な混合経済の中庸を行く考え方ともされた(ただ、社会的市場経済そのものを混合経済に含む考えもある)。この基本には階級協調や労使協調・コーポラティズムの要素や(日本は別として)社会的キリスト教やでよく取り上げられる補完性原理の考えも含み、キリスト教民主主義政党や穏健な保守政党・中道政党の経済政策として採用されることが多かった。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「社会的市場経済」の詳細全文を読む
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