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神経堤幹細胞(しんけいていかんさいぼう、neural crest stem cell)は'神経堤組織形成の元となる幹細胞であり、多分化能(multipotency)、自己複製能(self-renewal)および遊走能(migration potential)を併せ持つ細胞と定義されている。神経堤(しんけいてい、neural crest)は、内胚葉、外胚葉、中胚葉に続く第四の胚葉と呼ばれる〔『エッセンシャル発生生物学(改訂第2版)』Jonathan Slack 著 大隅典子 訳 羊土社 発行 2007年 〕発生学上の組織である。 神経堤幹細胞は神経堤細胞である自律神経系の神経細胞や神経膠細胞、骨格の一部、腱や平滑筋、軟骨細胞、骨細胞、メラニン細胞(メラノサイト)、クロム親和性細胞、一部のホルモン産生細胞などへ分化することが推測されている。実験上は神経・グリア細胞・平滑筋への分化能力を保持することが検証済みである。神経堤幹細胞であるための条件としては単一の神経堤幹細胞が少なくとも3系統以上の細胞へ分化することが必要である。 == 歴史 == 神経堤幹細胞の同定に先駆け、D. J. Andersonらは1992年に多分化能(multipotent)および自己複製能 (self-renewal)を持った神経堤前駆体細胞(progenitor from the mammalian neural crest)の同定に成功し〔 Stemple, D.L., and Anderson, D.J. (1992) “Isolation of a stem cell for neurons and glia from the mammalian neural crest”.Cell 71, 973–985. 〕、1996年にはS. J. Morrisonらによりこの神経堤前駆体細胞が神経・グリア細胞・平滑筋へと分化することが報告されている〔 Shah, N.M., Groves, A., and Anderson, D.J. (1996). “Alternative neural crest cell fates are instructively promoted by TGFb superfamily members”. Cell 85, 331–343. 〕。 神経堤幹細胞同定の歴史は1999年に遡る。S. J. Morrisonらは6ウェルプレートの1つのウェル(培養区域)に対して30細胞以下の細胞が播種される条件=クローナルデンシティで細胞培養を行い、神経堤幹細胞から坐骨神経前駆体(Sciatic nerve progenitor) を誘導したとの報告を行っている〔 S. J. Morrison, P. M. White, C. Zock, D. J. Anderson (1999). " Prospective identification, isolation by flow cytometry, and in vivo self-renewal of multipotent mammalian neural crest stem cells".Cell 96, 737.〕。初期の神経堤幹細胞マーカーとしてはp75タンパク質の発現が指標とされてきた。S. J. Morrison らは2002年にp75タンパク質が発現している細胞をクローナルデンシティで神経・グリア・平滑筋に分化誘導することに成功し、多分化能を保持した神経堤幹細胞の同定が示唆された〔 Bixby S, Kruger GM, Mosher JT, Joseph NM, Morrison SJ. (2002). " Cell-intrinsic differences between stem cells from different regions of the peripheral nervous system regulate the generation of neural diversity". Neuron 35: 643-56.〕 〔 Iwashita T, Kruger GM, Pardal R, Mark J kiel, Sean J. Morrison. (2003). " Hirschsprung disease is linked to defects in neural crest stem cell function". Science 35: 643-56.〕。採取した組織はE14.5のラット胎児由来Dorsal root ganglia(DRG), 交換神経節(sympathetic ganglia)および腸(Gut)が用いられている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「神経堤幹細胞」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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