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イネ(稲、稻、禾)は、イネ科イネ属の植物〔農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』農山漁村文化協会 p.105 2006年〕。属名''Oryza'' は古代ギリシア語由来のラテン語で「米」または「イネ」を意味する。種小名 ''sativa'' は「栽培されている」といった意味である。収穫物は米と呼ばれ、トウモロコシやコムギとともに世界三大穀物の1つとなっている。稲禾(とうか)、禾稲(かとう)ともいう。 == 概要 == イネ科イネ属の植物には23種77系統が知られている〔森島啓子、イネの進化研究を考える 育種学研究 Vol.1 (1999) No.4 P233-241〕。このうち20種が野生イネであり、2種が栽培イネである〔。栽培イネの2種とはアジア栽培イネ(アジアイネ、''Oryza sativa'')とアフリカ栽培イネ(アフリカイネ、グラベリマイネ、''Oryza glaberrima'')である〔〔日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.218 2010年〕。結実後も親株が枯れず株が生き続ける多年生型と枯れ毎年種子で繁殖する一年生型があるが、2型の変位は連続的で中間型集団も多く存在する〔森島啓子、イネの祖先を探る 日本釀造協會雜誌 Vol.78 (1983) No.9 P680-683〕。原始的栽培型は、一年生型と多年生型の中間的性質を有した野性イネから生じたとする研究がある〔。なお、いくつかの野生イネは絶滅したとされている〔。 アジアイネはアジアのほか、広くヨーロッパ、南北アメリカ大陸、オーストラリア、アフリカで栽培されている〔。これに対してアフリカイネは西アフリカで局地的に栽培されているにすぎない〔〔杉田浩一編『日本食品大事典』医歯薬出版 p.9 2008年〕。イネは狭義にはアジアイネを指す〔。 アジアイネには耐冷性の高いジャポニカ種(日本型)と耐冷性の低いインディカ種(インド型)の2つの系統がある〔〔日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.218 2010年〕。また、これらの交雑による中間的品種群が多数存在する〔。 ; ジャポニカ種(日本型、島嶼型、''Oryza sativa'' subsp. ''japonica'') : 日本、朝鮮半島、中国など温帯~亜熱帯の地域で栽培されている〔。ジャポニカ種は温帯日本型と熱帯日本型(ジャバニカ種)に分けられる〔。 ;; 温帯日本型(温帯島嶼型) :: 主に日本や遼寧省で栽培されている〔。 ;; 熱帯日本型(ジャバニカ種、熱帯島嶼型、ジャワ型、''Oryza sativa'' subsp. ''javanica'') :: 中国南部などで栽培されている〔。なお、ジャポニカ種(日本型)、インディカ種(インド型)、ジャバニカ種(ジャワ型)に並列的に分けられることもある〔『丸善食品総合辞典』丸善 p.411 1998年〕〔。 ; インディカ種(インド型、''Oryza sativa'' subsp. ''indica'') : インド、スリランカ、台湾南部、中国南部、東南アジアなど熱帯・亜熱帯の地域で栽培されている〔。インディカ種(インド型)はジャポニカ種(日本型)以上に分化している〔。 日本の農学者加藤茂苞による研究が嚆矢となったことから、彼の用いた「日本型」「インド型」という呼称が広く使われているが、両者が存在する中国では、加藤の研究以前からこれに相当する「コウ」(粳稻)「セン」(籼稻)という分類が存在している。中国では、淮河と長江との中間地域で両者が混交し、長江以南でセン、淮河以北でコウが優占する。 加藤による命名が象徴するように、それぞれの生態型の栽培地域には耐寒性による地理的勾配が知られている。日本や中国東北部、朝鮮半島では主にジャポニカ種が栽培され、中国南部や東南アジア山岳部ではジャバニカ種が多く、中国南部からインドにかけての広い地域でインディカ種という具合である。ただし、こうした栽培地域の地理的分離は絶対的なものではなく、両方が栽培されている地域も広範囲にわたる。特に雲南からアッサムにかけての地域は、山岳地域ならではの栽培環境の多様性もあり、多くの遺伝変異を蓄積しているとされる。 栽培イネの祖先種とされるのは''Oryza rufipogon''である〔。この''Oryza rufipogon''は生態型が多年生型と一年生型に分かれており、特に一年生型の''Oryza rufipogon''を''Oryza nivara''として別種として扱われることもある。しかし、分子マーカーによる集団構造の解析によっても一年生型と多年生型が種として分化しているという証拠は得られていない〔。なお、交雑が進んだ結果、今日では栽培イネから遺伝子浸透を受けていない個体群はインドやインドネシアの山岳地帯に残るにすぎない〔。 イネには亜種や近隣種が多いために予期せぬ雑種交配が起こる事がある。特に亜種の多様な東南アジアにおいては顕著である。日本では雑種交配を防止するため、耕作地周辺を頻繁な雑草刈りで予防している。 栽培イネではなく雑草として生じるものを雑草イネという〔日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.219 2010年〕。こうした雑草イネは生態的および形態的特徴が栽培イネのそれと類似するため、駆除が極めて難しい。雑草イネは水田の強雑草で栽培イネの生育障害、脱粒、収穫種子に赤米として混入し品質低下を引き起こしている〔湯陵華、森島啓子、雑草イネの遺伝的特性とその起源に関する考察 育種学雑誌 Vol.47 (1997) No.2 P153-160〕。日本では乾田直播栽培で発生しやすい〔。栽培稲の生産性を落とすだけでなく、栽培イネと交雑することで品質劣化を起こす。東南アジアでは特に顕著で、食用稲の生産性向上の課題となっている。一方で、祖先型野生稲は遺伝資源としての有用性も指摘されており〔、種子銀行などの施設での保存のほかに、自生地(in situ)での保全の試みもある。 栽培イネ以外では''O. officinalis''(薬稲)が救荒植物として利用されることがある。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「イネ」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Oryza sativa 」があります。 スポンサード リンク
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