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稲の旋律 : ウィキペディア日本語版
稲の旋律[いねのせんりつ]

稲の旋律』(いねのせんりつ)は、旭爪あかねによる小説
しんぶん赤旗』に2001年9月21日から2002年2月28日まで連載後、2002年4月に新日本出版社から単行本になり、第35回多喜二・百合子賞を受賞した。2003年には東京芸術座によって舞台化された。
2005年に同社から刊行された『風車の見える丘』(『民主文学』連載、2008年に青年劇場が舞台化)で同作品の登場人物のその後に触れ、2010年に完結編として『月光浴』(『女性のひろば』連載)が刊行された。
== ストーリー ==
親の期待による重圧から対人恐怖症となった藪崎千華は、なんとか大学は卒業したものの、就職もうまくゆかず、アルバイトの職を転々としていた。30歳を目前にして父親の口利きにより小さな会社に就職するものの仕事で大きなミスを犯してしまい、絶望した千華は出社拒否をして家に引きこもるようになる。
会社から私物を引きとりに来てほしいと言われた千華は、母親から菓子折り代を渡されJR総武線各駅停車に乗車するが、強いプレッシャーにより会社の最寄駅で下車することができず乗り過ごしてしまう。電車は下車予定の錦糸町駅を通り過ぎ、東京都から千葉県へと移りゆく車窓には、ちらほらと緑が増え始めた。車窓から見えた小さな菜園の野菜たち、自分とは正反対の生気に満ちた緑に幾ばくかの癒しを感じた千華は、緑や自然がもっと沢山ある場所へ行ってみたいと思い、終点の千葉駅で目にとまったガラガラの銚子行きの電車に乗り込んだ。
千葉駅を出てしばらく行くと、車窓いちめんに水田が広がった。緑一色、風に揺れる夏の稲のあまりの美しさと迫力に心を衝き動かされた千華は、もっとそばで見たいと強く思い、次の駅で電車を降り、母親から渡された菓子折り代で切符を精算した。水田のそばまで行き、一通り稲を愛でた千華は、即席の便箋に自分の現況と今の苦しい心情をしたため、千葉駅で買ったお茶のペットボトルに詰めて水田に置いた。
それを拾った水田の耕作者である専業農家の晋平は、千華に手紙を送る。こうして二人の交流が始まり、千華は文通や農作業体験などを通して、ものを育てることの素晴らしさ、そして天候などの自然現象に左右され「効率性」の追求に限界のある農業というもの、引きこもりになったことにより効率性とは相容れない人生を歩んでいる自分、効率性を過度に重視するあまり食の安全もままならない現代社会、効率的でないと批判され廃れゆく日本の農業の現実に触れるなかで、自分自身と親の人生をみつめなおしてゆく。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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