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立地論 : ウィキペディア日本語版
立地論[りっちろん]
立地論(りっちろん、、)は、経済活動の地理的立地に関わる理論であり、経済地理学地域科学空間経済学において重要な基礎的部分となっている。 立地論は、どのような経済活動がどこに立地するか、それはなぜなのかを問題とする。立地論は、ミクロ経済学の理論が一般的にそうであるように、個々の経済主体(エージェント)は、自己の利益のために行動するという前提を置いている。したがって、事業所はその利益を最大化するように立地を選択し、個人は効用を最大化するように立地を選択することになる。
== 起源 ==
立地論の先駆として前史的に言及される早い時期の業績(例えば、リチャード・カンティロンエティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤックデイヴィッド・ヒュームサー・ジェームズ・ステュアートデヴィッド・リカードなど)も存在するものの、ヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネンの『孤立国』第1巻が1826年に刊行されたときから、立地論は本格的に論じられるようになった〔Thünen, Johann Heinrich von. 1783-1850. ''Der Isolierte Staat in Beziehung auf Landwirtschaft und Nationalökonomie, oder Untersuchungen über den Einfluss, den die Getreidepreise, der Reichtum des Bodens und die Abgaben auf den Ackerbau ausüben, Vol. 1,.'' : ''Der Isolierte Staat..., Vol II: Der Naturgeässe Arbeitslohn und dessen Verhältnis zum Zinsfuss und zur Landrente, Part 1'' :翻訳 - 〕〔英語による解説 - 〕〔:Dempsey は、1863年に出版された『孤立国』第2巻第2部の英訳者。〕。地域科学の創始者ウォルター・アイザードは、フォン・チューネンを「立地論の父」と呼んでいる〔:翻訳 - 〕。『孤立国』においてフォン・チューネンは、輸送費がリカルドの言う経済的地代(economic rent)を消費することを指摘している。フォン・チューネンは、輸送費や経済的地代は財によって異なるため、市場からの距離に応じて、土地利用や利用強度は異なったものとなると論じた。しかし、フォン・チューネンは、孤立国、ないし、独立したひとつの都市を想定した、過剰に単純化された議論だ、という批判が大方の反応であった〔.〕。
スウェーデンのトルド・パランダー(Tord Palander)は、1935年の著作『立地論研究 (''Beiträge zur Standortstheorie'')』で、競争する2つの企業による市場の地域的分割を論じた〔:翻訳 - 〕。
立地論は、フォン・チューネンの時代から、今日、中心地理論として理解されている内容の大部分を構築したヴァルター・クリスタラー1933年の著作『都市の立地と発展 (''Die Zentralen Orte in Sűddeutschland'')』〔:翻訳 - 〕まで、もっぱらドイツの研究者が担い手となっていた。とりわけ重要な貢献を残したのは、『工業立地論 (''Über den Standort der Industrien'')』を1909年に著したアルフレート・ヴェーバーであった〔:翻訳 - 〕〔英語による解説 - 〕。ピエール・ヴァリニョンのアイデアを取り入れた物理的なフレーム(Varignon frame)に似たモデルを応用し、ヴェーバーは、原料と完成した製品それぞれの輸送運賃や製造施設から、工場の最適立地を求めるアルゴリズムを導いた。ヴェーバーはまた、労働の要素によって生じる偏向や、集積がもたらす偏向(集積を促す力も逆の力もある)についても考察した。さらにヴェーバーは、生産単位のグルーピングも論じており、アウグスト・レッシュ(August Lösch)の市場地域論を予見させるものとなっている。
ウェーバーの業績とされているものの多くは、ウェーバーの業績以前にヴィルヘルム・ラウンハルト(Wilhelm Launhardt)が構想していた。しかも、ラウンハルトの分析内容は、ウェーバー以上に驚くほどモダンであった。しかし、ラウンハルトは彼の時代よりもあまりに先へ進みすぎており、同時代の人々の多くはそれを理解できなかった。ウェーバーがラウンハルトの業績に接していたかどうかは、明らかになっていない。ウェーバーが明らかに影響を受けていたのは、ヴィルヘルム・ロッシャーアルベルト・シェフレなどであるが、彼らはラウンハルトを読んでいた可能性が高い。いずれにせよ、立地論の思想が盛んに展開されるようになるのは、ウェーバーの著書が出版されて以降のことであった。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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