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精油(せいゆ)またはエッセンシャルオイル(英語:essential oil)は、植物が産出する揮発性の油で〔久保亮五 他 編集 『岩波理化学辞典第4版』 岩波書店、1987年〕、それぞれ特有の芳香を持ち、水蒸気蒸留法、熱水蒸留法(直接蒸留法)などによって植物から留出することができる〔マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年〕。植物は、代謝産出物、排出物、フェロモン、昆虫の忌避剤などとして精油を産出すると考えられており、葉や花弁、根などの特別な腺に貯蔵される。一般に多数の化合物の複雑な混合物で、その芳香から主に食品産業で香料として利用されている。 == 概説 == おおむね液状で水より軽く、水に溶けず(疎水性)、アルコール、二硫化炭素、石油エーテル、脂肪油などに溶ける(親油性)。普通の油脂のようにアシルグリセロール(英語:Acylglycerol)、いわゆるグリセリド(英語:Glyceride、グリセリンと脂肪酸エステルの総称)ではなく、植物の「精、精髄」(ラテン語: essentia)という意味で精油と呼ばれ〔現在では「精油」という名称に化学的な意味はない。〕、油脂とは区別されている〔化学大辞典編集委員会 編集 『化学大辞典』 共立出版、1977年〕。 現在知られている精油は1500種類に及ぶが、香料または合成香料原料として利用されるのは約100種類ほどである。 大量の植物からわずかしか採れないため、バラ精油のようにかなり高額なものもある。材料によって収率が大幅に異なり、バラの場合約5tの花から精油1kgが採取され、収率は0.02%。柑橘類は、果実に対して収率は0.2 - 0.5%程度である〔長谷川香料株式会社 著 『香料の科学』 講談社、2013年〕。精油の値段は手間賃ではなく、主として市場の需要に左右される。 アロマオイルなどと混同されることもままあるが、合成香料を使用して大量生産されるそれらとは区別される。商品としての精油は100%植物由来であり、合成物質の添加、成分調整、アルコール希釈などの加工は行なわれていないと思われがちだが、必ずしもそうではなく、脱テルペン処理やブレンディングなど、何らかの処理がされているものも少なくない。アロマテラピーという言葉を作った調香師ガットフォセは、香水用に脱テルペン処理などがされた精油を使用していた。 揮発性溶剤を用いて抽出された香気成分を含む物質を、(仏:コンクレート)〔ジャン=クロード・エレナ 『香水-香りの秘密と調香師の技』 芳野まい 訳、白水社、2010年〕という。このコンクリートの溶解性部分を抽出した(仏:アプソリュ)や、で抽出したアブソリュート、柑橘類から圧搾法で得られたエッセンスは、揮発しない成分や水溶性タンパク質を含み、精油とは異なる物質と考えられているが、精油と呼ばれる場合もある。 ナノテクノロジーの進化で、精油のマイクロカプセル化の技術が確立し、様々なものに添加され活用されている。その一方、香害(香料を含む製品を過剰に使用することで、周囲に不快感や害を与えること)〔香り付きの柔軟剤 過度な使用に注意 NHKニュース おはよう日本〕〔「香りブーム」に潜む危機!? ~香料の有毒性と「香害」について~ かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき 〕が問題となっている。岐阜市では、精油などの香料がアレルギー体質や化学物質過敏症の人のアレルギー、喘息などを誘発する〔接触皮膚炎診療ガイドライン 日皮会誌:119(9),1757―1793,2009(平21)〕として、自粛を呼びかけるポスターを掲示している〔岐阜市の香料自粛のポスター 〕〔「香料自粛のお願い」~近くの公共施設、病院にお願いをしてみませんか。 〕。多様な問題が起こっているが、特に感作作用(ある抗原に対し生体をアレルギー反応をおこしうる状態にする作用)が問題視されている〔感作物質 sensitizer 日本化粧品技術者会〕〔香料の健康 渡部和男 〕〔芳香・消臭・脱臭・防臭剤 安全確保マニュアル作成の手引き 厚生省生活衛生局企画課 生活化学安全対策室〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「精油」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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