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統帥権干犯問題 : ウィキペディア日本語版
統帥権[とうすいけん]

統帥権(とうすいけん)とは、大日本帝国憲法下の日本における軍隊を指揮監督する最高の権限(最高指揮権〔秦(2006)、11頁。〕)のことをいう。
== 概要 ==
大日本帝国憲法第11条に定められていた、天皇大権のひとつで、陸軍海軍への統帥の権能を指す。その内容は陸海軍の組織と編制などの制度、および勤務規則の設定、人事と職務の決定、出兵と撤兵の命令、戦略の決定、軍事作戦の立案や指揮命令などの権能である。これらは陸軍では陸軍大臣参謀総長に、海軍では海軍大臣軍令部総長に委託され、各大臣は軍政権(軍に関する行政事務)を、参謀総長・軍令部総長は軍令権を担った。
狭い意味では、天皇が軍事の専門家である参謀総長・軍令部総長に委託した戦略の決定や、軍事作戦の立案や指揮命令をする軍令権のことをさす。
明治憲法下で天皇の権能は特に規定がなければ国務大臣が輔弼することとなっていたが、それは憲法に明記されておらず、また、慣習的に軍令(作戦・用兵に関する統帥事務)については国務大臣ではなく、統帥部(陸軍:参謀総長。海軍:軍令部総長)が補翼することとなっていた〔1932年(昭和7年)に陸軍大学校が教本として作成した『統帥参考』(復刻版、田中書店、1983年(昭和58年))には「統帥権ノ独立ヲ保障センカ為ニハ“武官ノ地位ノ独立”ト“其職務執行ノ独立”トヲ必要トス 政治機関ト統帥機関トハ飽ク迄対立平等ノ地位ニ在リテ何レモ他ヲ凌駕スルヲ得サルヘキモノトス」とある。これは統帥権干犯問題の後に作成されたものであるが、「統帥権と行政権の平等性」は軍部の一貫した主張であった。〕〔軍政上の、陸軍大臣による帷幄上奏勅令は、軍の制度や規則を規定した軍事の勅令であって、作戦命令や動員命令などは含まれなかった。明治憲法上は第11条の統帥大権ではなく、第12条の編制大権に属する事項であった。参考文献:永井和『近代日本の軍部と政治』 p313〕。
この軍令と国務大臣が輔弼するところの軍政の範囲についての争い〔軍令の方針が間接的には他国との共同出兵を行った場合には外交(例:シベリア出兵)と、兵力・軍備の配置を巡っては財政(例:二個師団増設問題)とも衝突する可能性があった。〕が原因で統帥権干犯問題が発生する。。
なお、統帥権独立の考えが生まれた源流としては、当時の指導者(元勲藩閥)が、政治家が統帥権をも握ることにより幕府政治が再興される可能性や、政党政治で軍が党利党略に利用される可能性をおそれたこと〔黄文雄『大日本帝国の真実』「統帥権独立」は国を破滅に導いたか 258-262頁〕、元勲藩閥が政治・軍事両面を掌握して軍令と軍政の統合的運用を可能にしていたことから、後世に統帥権独立をめぐって起きたような問題が顕在化しなかったこと、南北朝時代楠木正成軍事に無知な公家によって作戦を退けられて湊川の戦いで戦死し、南朝の衰退につながった逸話が広く知られていたこと〔秦(2006)、85-92頁。〕などがあげられる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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