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繋がりの社会性 : ウィキペディア日本語版
つながりの社会性[つながりのしゃかいせい]
つながりの社会性(つながりのしゃかいせい)とは、社会学者北田暁大が導入した用語で、自己充足的・形式主義的なコミュニケーション作法のことである。漢字で繋がりの社会性と表記される場合もある〔北田自身は、著書『広告都市・東京―その誕生と死』では「つながりの社会性」、『嗤う日本の「ナショナリズム」』では「繋がりの社会性」の表記を用いている。〕。対義語は秩序の社会性
== 概要 ==
北田暁大は2002年の著書『広告都市・東京―その誕生と死』にて、社会システム理論家のニクラス・ルーマンの理論を下敷きに、「秩序の社会性/つながりの社会性」という対比を行った。ルーマンは、コミュニケーションは情報内容の伝達自体で完結するものではなく、受け手がそれに対して応答することにより行為が接続されていく過程のことであり、その際に誤解(送り手の意図した意味内容と受け手の解釈した意味内容の齟齬)が生じる可能性を低めるために、適切な(あるいは不適切な)接続行為はどんなものかを決める社会システム(コード)が設定されているのだとしている。北田はその議論を受けて、コミュニケーションにおいて、設定されたコードに忠実にしたがって誤解を可能な限り回避するように行為を接続していく作法(意味伝達志向)を「秩序の社会性」とし、それと対照的に誤解を回避する努力を犠牲にしてでも円滑に(つまり場の空気を破壊しないように〔『嗤う日本の「ナショナリズム」』203頁。〕)行為が接続していくことそのものを重視する作法(接続志向)を「つながりの社会性」と名づけた。〔『広告都市・東京―その誕生と死』153頁。〕
つながりの社会性は、若者文化を中心に1990年代以降に浮上してきたと考えられ、その背景にはインターネット文化や携帯電話の大衆レベルでの普及といったメディア・コミュニケーション環境の変容がある。1980年代までに優位であったテレビラジオ新聞といった公共的なマスメディアは受け手と送り手の間に設定されたコードに忠実に情報発信するという「秩序の社会性」を体現するものであり、あたかも大衆に「見られているかもしれない不安〔たとえば全展望監視施設パノプティコンはそのような設計思想に基づくものである。〕」をかきたてるような存在であったが、1990年代に入って台頭したインターネット上では私生活を逐一ブログに書き込んだりWebカメラで撮影して配信し続けるなどする者が現れ、まるで「見られていないかもしれない不安」に駆り立てられているかのようにだれかとコミュニケーションを接続すること自体を志向する「つながりの社会性」が浮上するようになった。〔『広告都市・東京―その誕生と死』142-143頁・154頁など。〕
1980年代頃から、コンビニエンスストアがストレスから解放されて仲間とつるむたまり場として効率的に若者に利用されており、限定的にはつながりの社会性に相当するものが現れていたことがわかる。これが1990年代になると、(ポケベルを経て)携帯電話が普及したことによって特定の場所性に頼ることなくつながりの社会性が蔓延するようになった〔『広告都市・東京―その誕生と死』162-163頁。〕。コンビニエンスストアは見知らぬ人の偶発的なコミュニケーションを可能にするのに対し、ポケベル・ケータイといったメディアはすでに見知った人との関係性を強化する手段であるという点が対照的となっている〔濱野智史『恋空』を読む(番外編):宮台真司を読む ― 繋がりの《恒常性》と《偶発性》について 」『濱野智史の「情報環境研究ノート」』(2008年9月12日)(アーカイヴ )〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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