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群集の人 : ウィキペディア日本語版
群集の人[ぐんしゅうのひと]

群集の人」(ぐんしゅうのひと、The Man of the Crowd)は、エドガー・アラン・ポーの短編小説。名の無い語り手による、ロンドンの雑踏の中で見かけた不可思議な男の行動を追跡を描いた作品。1840年12月に『バートンズ・ジェントルマンズ・マガジン』最終号および『アトキンソンズ・キャスケット』に同時期に掲載され、のちに『物語集』に収録された。
== あらすじ ==
ある秋の日暮れ、何ヶ月もかかった病気からの回復途上にある語り手は、ロンドンのとあるカフェに腰を下ろしている。彼は自分の気力が充実してくるのを喜び、窓から見える街の景色を眺め、やがてある時間帯から急に密度を増した群集に注意を引きつけられる。それから彼は道行く大勢の人々の服装や雰囲気、表情や身振りを観察し、分析することで時間を過ごす。彼は人々をその様子からいくつかのタイプに分類し、また一人ひとりの身分や職業を推測していく。そうするうち、語り手はふとある老いぼれた男に気付く。それは65歳か70歳くらいの男なのだが、彼の顔には語り手がそれまでに見たことのないような奇妙な表情が浮かんでいた。背は低く、痩せていて体は弱っており、服は汚れてぼろぼろなのだが、外套の光で照らされると生地自体は上等のものであった。語り手は、いったいこの男は何者なのかと強い興味を覚え、彼を追って店を飛び出し、尾行を始める。
後を追ってみると、老人は人通りの多い道を行ったり来たりして何をするでもなく一時間も時間を潰し、やがて人通りが少なくなると別のより人通りの多い道に移ってまた行ったり来たりを繰り返している。そのようにして市街を人ごみから人ごみへと通りぬけ、人影の無い場所では老人とも思えぬような速さで駆け抜けるが、人の集まった場所では安心した表情を見せる。そして市場をなにも買わずに通り抜け、酔漢のたむろする貧民窟にまで足を向け、やがてロンドンの都心部へと戻っていく。追跡は日が昇っても続けられ、ついには翌日の日暮れになってしまう。疲れきった語り手は痺れを切らして、とうとう老人の前に立って彼を正面から見据えたが、それでも彼は語り手の存在に気がつかない。語り手はこの男を「深い罪の典型であり本質」であり「群集の人」なのだ、と結論して追跡を諦め、「自らを読み取られることを拒む書物が存在することは神の恵みの一つなのだ」と結ぶ。
冒頭にラ・ブリュイエールの『The Characters of Man』から、「ただ一人いることに耐えぬという、この大いなる不幸」("Ce grand malheur, de ne pouvoir être seul")というエピグラフが掲げられている。なおポーは同じエピグラフを最初期の作品「メッツェンガーシュタイン」でも用いている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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