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胞子虫[ほうしちゅう]
胞子虫(ほうしちゅう、Sporozoa)は原生動物の古典的な4分類の1つで、運動器官、摂食器官を持たず、(例外はあるが)胞子をつくって増殖する原生動物の総称である。運動能が限られていることから全てが寄生虫であると考えられ、とくに宿主の細胞内に寄生するものが多い。胞子虫としてひとまとめに分類されてきた生物群は、現在は非常に多様な系統に属していることが明らかになっており、1つの分類群として取り扱うことはない。ただし現在でも胞子虫という名の若干定義の異なる分類群を使うことがある(アピコンプレクサの項を参照)。本項では胞子虫に関する認識の変遷を解説するにとどめるので、生物の実際については末尾の対応表から各分類群の項目を参照のこと。 == 胞子虫類の成立 ==
文献上はじめて認識された胞子虫は、おそらく1674年にレーウェンフックがウサギの胆汁中に観察した球体で、ウサギ肝コクシジウム(''Eimeria stiedai'')だったと考えられている。一方はじめて正式に命名された胞子虫は、1826年に昆虫学者レオン・デュフール(Léon Jean Marie Dufour)によってハサミムシから発見されたグレガリナ(簇虫)類''Gregarina ovata'' Dufour, 1828で、これを機にグレガリナ類が続々と記載されるようになる。当初は特殊化した吸虫の一群だと考えられていたが、1845年に解剖学者アルベルト・フォン・ケリカーによって原生動物門に移された。コクシジウム(球虫)類ははじめグレガリナ類の一種として記載され、後に区分されるようになった。胞子虫という分類群は、1879年に寄生虫学者ロイカルト(Karl Georg Friedrich Rudolf Leuckart)が、グレガリナ類とコクシジウム類とを合わせて設立したものである。 19世紀末にオットー・ビュッチュリによって原生動物の古典的な4分類が確立されたときには、原生動物門胞子虫綱に3亜綱(簇虫、粘液胞子虫、住肉胞子虫)が置かれていた。これはちょうどマラリア原虫が発見された(1880年)時期にあたり、このあと住血胞子虫(血虫)類(Haemosporidia Danilevsky, 1885)や微胞子虫類(Microsporida Balbiani, 1882)、放線胞子虫類(Actinomyxida Štolc, 1899)、略胞子虫類(Haplosporidia Caullery et Mesnil, 1899)といった分類群が認識されるようになった。 20世紀初頭の分類体系は胞子形成の様式に注目して、晩生胞子虫と早生胞子虫との2つに大別するものだった。晩生胞子虫は細胞の成長が止まったあとに細胞の外縁に胞子形成細胞が生じるもので、栄養体は単核である。一方早生胞子虫は細胞の内部で胞子形成が起きるものであり、例外はあるが栄養体が多核で細胞の成長と胞子形成が同時に起こる。この区別は根本的な系統の差だと考えられ、1910年代にはすでに胞子虫は寄生適応による収斂によって認識される外形的な分類群だとみられていた。なおこの頃までは微胞子虫は粘液胞子虫の中の亜目として考えられていた。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「胞子虫」の詳細全文を読む
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