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著作権の準拠法(ちょさくけんのじゅんきょほう)とは、著作物の利用をめぐる渉外的私法関係に関して適用される法域の法のことをいう。 もっとも、文献によっては準拠法の指定に関する問題(国際私法に関する問題)と、準拠法として指定された法が保護対象とする著作物の範囲の問題(外国で発行された著作物の内国における保護など)とを特に区別せずに著作権の国際的保護について論じているものが多く、場合によっては両者を混同しているものも見受けられる。このため、本項目では準拠法の問題のほか、いわゆる外国著作物の保護の範囲の問題についても扱う。 == 著作権の内容と効力に関する準拠法(保護国法説) == 著作物の利用行為を巡る渉外的な法律関係につき、どのような連結点を媒介として準拠法を指定するかについては、以下のような考え方が主張されてきた。 ; 本源国法説(又は本国法説) : 著作物が最初に公表された地や最初に発行された地の法が準拠法になるとする見解。 ; 保護国法説 : 著作物の利用行為や著作権の侵害行為の行われた地の法が準拠法になるとする見解。 ; 法廷地法説 : 著作物の利用行為を巡る訴訟が係属した裁判所が属する地の法(法廷地法)が準拠法になるとする見解。 この点については、著作権を含む知的財産権の地域的効力はその国の領域内に限られ、ある国の領域外の利用行為によって国内の著作権が侵害されることはないという属地主義の原則が妥当すると解されている〔田村善之『著作権法概説』(有斐閣、1998年)、465頁〕〔木棚照一編著『国際知的財産侵害訴訟の基礎理論』(経済産業調査会、2003年)、280頁(木棚照一執筆部分)〕ところ、このような属地主義の原則と整合性があるのは、著作物を現実に利用した地の法を準拠法にすることであるとして、保護国法説が一般的に支持されている〔法務省民事局参事官室「国際私法の現代化に関する要綱中間試案補足説明」『別冊NBL N.110 法の適用に関する通則法関係資料と解説』(商事法務、2006年)、201頁〕。この見解によると、日本における著作物の利用行為が著作権侵害になるか否かは、もっぱら日本の著作権法により判断され、アメリカ合衆国における著作物の利用が著作権侵害になるか否かは、もっぱらアメリカ合衆国の著作権法により判断されることになる。 このような保護国法説の根拠については、著作権の保護の範囲等につきベルヌ条約5条2項が「保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。」と規定していることに求める見解〔澤木敬郎・道垣内正人『国際私法入門〔第6版〕』(有斐閣、2006年)274頁〕、物権の準拠法に準じて扱う(日本では法の適用に関する通則法13条)のが妥当とする見解、ベルヌ条約が内国民待遇(5条1項)を求めていることを根拠とする見解(もっとも、内国民待遇は後述する外国人法の問題であり、準拠法に関する保護国法説との関連はないと考えるのが一般である)、利益衡量に求める見解〔田村・前掲465頁〕、これまでの知的財産保護に関する条約の暗黙の前提に求める見解〔木棚・前掲281頁〕などがある。この点、スイスの国際私法には、保護国法説を採用する旨の明文の規定がある。 もっとも、ベルヌ条約5条2項が保護国法説を採用しているとの見解に対しては、法廷地法説に立脚する立場から、同条項は保護国法説を採用するものではなく、法廷地法説を採用する旨の規定であると主張する見解がある。法廷地法説とは言っても、実質法(この場合は著作権法)につき法廷地法が適用されるとする見解と、国際私法も含めて法廷地法が適用されるとする見解〔木棚編・前掲308頁(駒田泰土執筆部分)〕とがあるが、前者については、法廷地により異なる扱いがされることが許容され、条約の趣旨に反するとの批判が、後者については、(反致の場合を除き)法廷地の国際私法が適用になるのは国際私法の一般理論として当たり前であり条約で決める必然性がないという批判がなりたち〔澤木=道垣内・前掲274頁〕、いずれも少数説にとどまる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「著作権の準拠法」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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