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蛟 : ウィキペディア日本語版
蛟[みずち]

みずち(古訓は「みつち」)は、水と関係があるとみなされる類か伝説上の蛇類または水神の名前。
中国の竜である蛟竜〔こうりょう〕(; コウ; jiāo)、虬竜/; キュウ; qiú)、螭竜; チ; chī)〔第2版補訂版。:みずち 【蛟・虬・虯・螭】「み」は「水」、「ち」は「霊」で、「水の霊」; ち【霊】魂。れい〕、「蛟蝄(コウモウ)」などにあてられた訓じ名(日本語名)が「みずち」である。ただ「蛟」ひとつをとっても、有角である、いや無角であるなどと描写が交錯して説かれるので、「みずち」はかくかくいう竜である、とそう単純明快に定義することはできない〔苑崎透 『幻獣ドラゴン』 新紀元社 131頁。〕。
本邦における「みずち」については、岡山県の高梁川にひそんでいたという有毒の「大虬」が県守(あがたもり)という男に退治された記録が仁徳天皇紀にあり(右図)、万葉歌の一種などの乏しい#古例がある。
ミズチ(ミツチ)の「ミ」はに通じ、「チ」は「大蛇(おろち)」の「チ」と同源であるとされる〔。ミズチの「チ」はオロチと同源だとするが、「チ」の意味にはふれず、また、「霊」などの意味での「チ」の見出しもない。「くちなわ」は、「朽ちた縄」からくると説明するので、本書には古語の掲載や語源の説明がないわけではない。〕。「チ」は「霊」の意だとの見方もある〔。『広辞苑』でも「水の霊」だと説いており〔、#古例でもあげた「河の神」と同様視する考察もある。
==古例==
最古の出例としては、日本書紀の巻十一〈仁徳天皇紀〉の67年(西暦379年)にある「大虬」〔原文"是歳於吉備中国川嶋河派有大虬令苦人時路人触其処而行必被其毒以多死亡..."。ほかオンライン資料より〕)(「ミツチ」と訓ずる〔
石塚晴通〕〔「水父(みづち)」、の訓あり??〕)の記述で、これによれば吉備の中つ国(後の備中)の川嶋河(現今岡山県高梁川の古名)の分岐点の淵に、大虬(竜〔現代訳p.250では竜とつくる〕)が住みつき、毒を吐いて道行く人を毒気で侵したり殺したりしていた。そこに県守(あがたもり)という名で、笠臣(かさのおみ)の祖にあたる男が淵までやってきて、瓠〔ヒサゴ〕(瓢箪)を三つ浮かべ、大虬にむかって、そのヒサゴを沈めてめせよと挑戦し、もし出来れば撤退するが、出来ねば斬って成敗すると豪語した。すると魔物は鹿に化けてヒサゴを沈めようとしたがかなわず、男はこれを切り捨てた。さらに、淵の底の洞穴にひそむその類族を悉く斬りはらったので、淵は鮮血に染まり、以後、そこは「県守淵(あがたもりのふち)」と呼ばれるようになったという。
上と関連性があるのが、仁徳11年(323年)の故事である。淀川沿いに工事された茨田(まんだのつつみ)が、たびたび壊れて始末に負えなかったところ、天皇が夢を見られて、武蔵国の強頸(こわくび)と、河内国の茨田連衫子(まんだのむらじころもこ)を生贄として「河伯(かわのかみ)」に奉じれば収拾するだろう、と告げられた。衫子(ころもこ)は、みすみす犠牲になるのを潔しとせず、河にヒサゴを浮かべて、もし本当に自分を捧げよというのが神意ならば、そのヒサゴを水中に沈めて浮かばぬようにしてみせよ、とせまった。つむじ風がおきてヒサゴを引き込もうとしたが、ぷかぷか浮かびながら流れて行ってしまった。こうして男は頓智で死をまぬかれた〔現代訳p.233〕。こちらは「みずち」の言がないが、浮かべたふくべという共通点もあり、「河の神」と「みずち」を同一視するような文献もある〔, p. 150-151〕。
万葉集』巻十六には、境部王の作による一首「虎尓乗 古屋乎越而 青淵尓 鮫龍取将来 劒刀毛我」に「ミズチ」が読まれているが、これは「虎に乗り古屋を越えて青淵〔あをふち〕に蛟龍〔みつち〕捕〔と〕り来む剣太刀〔つるぎたち〕もが」と訓読し、「トラに乗って、古屋(どこか特定できない地名)を超え、水を青々とたたえた深い淵にいき、ミズチをひっ捕らえてみたい、(そんなトラや)そのための立派な太刀があったらなあ」ほどの意味である〔あお‐ぶち[あを:]【青淵】〔名〕水を青々とたたえた深い淵(日本国語大辞典)この万葉歌を用例とする。〕。
また、『魏志倭人伝』には<会稽に封じられた夏后小康の子は断髪・文身(いれずみ)し、もって蛟竜〔こうりょう〕をさける>という中国の故事にふれたうえで、倭人もまた「文身しまたもって大魚、水禽をはらう」とするので、大林太良などの民俗学者は、中国と倭における水難の魔除けのいれずみには関連性があると見〔<大林太良「入れ墨習俗の伝承」『日本人の原風景②蒼海訪海・うみ』旺文社(の引用)〕、さらに日高旺は倭人の入れ墨もまた同じく竜形ではなかったか、と推察する〔
〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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