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蛸薬師[たこやくし] 蛸薬師(たこやくし)は、日本における伝承信仰。京都や東京の蛸薬師が知られているが、伝承自体は愛媛県、千葉県、神奈川県、福井県、兵庫県、大阪府、岩手県、埼玉県、栃木県、静岡県、山形県など全国各地に存在する〔刀禰、p.13〕。その由来は地方によって様々であるが、身の危険を感じると墨を吐く習性のある蛸は暗闇でも見える目を持つ生き物とされ、これにあやかって眼病を治すと言われたり、吸盤によって吹き出物や疣を取り払う効能があるとされたりする〔刀禰、p.13〕。 ==京都の蛸薬師== 京都の蛸薬師は永福寺の本尊とされ、奉納される小絵馬には蛸と着物姿の女が描かれている〔刀禰、p.14〕。本来の永福寺本尊は伝教大師が製作した薬師如来で、水上薬師ないし沢薬師と呼ばれていた〔刀禰、p.16〕。時代を経る毎にこれが誤って蛸薬師と伝えられるようになり、江戸時代の『都名所図会』には既に「蛸薬師は永福寺と号し、円福寺境内にあり」と紹介されていた〔刀禰、p.16〕。その後円福寺は1788年、1864年の大火で類焼し、1883年に三河国岩津村へと移された〔刀禰、p.16〕。この際、岩津村にあった妙心寺が京都へ移され、現在の永福寺となっているが、本尊は変わらず蛸薬師のままになったという〔刀禰、p.16〕。江戸時代に刊行された菊岡沾凉の『本朝俗諺志』には蛸薬師の効能として、蛸の絵馬を書き、物絶をして祈ると疣や痣に効く不思議な効験があると紹介されている〔刀禰、p.17〕。その他、井上頼寿の『京都民俗志』では民家に蛸地蔵尊が祀られていたという話を紹介しており、蛸薬師信仰が民間レベルで浸透していたと考えられている〔刀禰、p.20〕。
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