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科挙[かきょ]

科挙(かきょ、)とは、中国598年1905年、即ちからの時代まで、約1300年も行われた官僚登用試験〔これを官吏登用試験とするのは誤りである。科挙時代の中国においては「官」と「吏(胥吏)」は全く違う存在である。〕である。
== 概説 ==

科挙という語は「(試験)目による選」を意味する。選挙とは郷挙里選九品官人法などもそう呼ばれたように、伝統的に官僚へ登用するための手続きをそう呼んでいる。「科目」とは現代の国語数学などといった教科ではなく、後述する「進士科」や「明経科」などと呼ばれる受験に必要とされる学識の課程である。北宋朝からはこれらの科目は進士科一本に絞られたが、試験自体はその後も“科挙”と呼ばれ続けた。
古くは貴族として生まれた者たちが政府の役職を独占する時代が続いたが、朝に至り、賢帝として知られる楊堅(文帝)が初めて導入した。家柄ではなく公平な試験によって、才能ある個人を官吏に登用する制度は、当時としては世界的にも非常な革新であった。しかし隋からまでの時代には、その効力は発揮できていなかった。これが北宋の時代になると、科挙によって登場した官僚たちが新しい支配階級“士大夫”を形成し、政治・社会・文化の大きな変化をもたらしたが、科挙はその最も大きな要因だと言われている。士大夫たちは、科挙によって官僚になることで地位・名声・権力を得て、それを元にして大きな富を得ていた。
生まれに関係なく学識のみを合否の基準とする科挙ではあるが、科挙に合格するためには、幼い頃より労働に従事せず学問に専念できる環境や、多数の書物の購入費や教師への月謝などの費用が必要とされた。そのため、実際に科挙を受験できる者は大半が官僚の子息または富裕階級に限られ、士大夫の再生産の機構としての意味合いも強く持っていた。ただし、旧来の貴族の家系が場合によっては六朝時代を通じて数百年間も続いていたのに比べ、士大夫の家系は長くても4~5代程度に過ぎず、跡取りとなる子が科挙に合格できなければ昨日の権門も明日には没落する状態になっていた。
科挙の競争率は非常に高く、時代によって異なるが、最難関の試験であった進士科の場合、最盛期には約3000倍に達することもあったという。最終合格者の平均年齢も、時代によって異なるが、おおむね36歳前後と言われ、中には曹松などのように70歳を過ぎてようやく合格できた例もあった。無論、受験者の大多数は一生をかけても合格できず、経済的事情などの理由によって受験を断念したり、失意のあまり自殺した鍾馗の逸話など悲話も多い。
科挙は皇帝がじきじき行う重要な国事だったため、その公正をゆるがす行為に対する罰則はきわめて重く、犯情しだいではカンニング死刑だった。賄賂で試験官を買収した大がかりな不正で多数の者が集団死刑にされた事件など、科挙が廃止されるまで約1300年間、厳重な監視にも関わらず工夫をこらして不正合格を試みる者は後を絶たなかった。数十万字をびっしり書き込んだ、カンニング用の下着が現代まで残っている。
このような試験偏重主義による弊害は、時代が下るにつれて大きくなっていった。科挙に及第した官僚たちは、詩文の教養のみを君子の条件として貴び、現実の社会問題を俗事として賎しめ、治山治水など政治や経済の実務や人民の生活には無能・無関心であることを自慢する始末であった。これを象徴する詞として「ただ読書のみが崇く、それ以外は全て卑しい」(''万般皆下品、惟有読書高'')という風潮が、科挙が廃止された後の20世紀前半になっても残っていた。こういった風潮による政府の無力化も、欧米列強の圧力が増すにつれて深刻な問題となっていた。また、太学書院などの学校制度の発達を阻碍した面を持っていることは否めない。これに対しては、王安石などにより改革が試みられた例もあったが、頓挫した。それ以後もこの風潮は収まらず、欧米列強がアジアへ侵略すると、科挙官僚は“マンダリン”と呼ばれる時代遅れの存在となり、清末の1904年光緒30年)に科挙は廃止された。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Imperial examination 」があります。



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