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『エルサレム解放』(エルサレムかいほう、原題 ''La Gerusalemme liberata'')は、1581年に公刊された、イタリアの詩人トルクァート・タッソによる叙事詩である。 第1回十字軍に舞台をおき、ゴドフロワ・ド・ブイヨン率いるキリスト教騎士たちが、エルサレム奪取のためにムスリムと闘う様子を描いている。詩の構成としては、各8行の連が、長短様々な20編(カント)にまとめられている。『解放されたエルサレム』、『エルサレムの解放』等とも訳される。日本語版は鷲平京子によるものが出版されている(1993年に抄出版、2010年に完全版)。 本作品はイタリア・ルネサンスの空想的叙事詩の流れに位置づけられ、特に物語の構想や登場人物の類型については、アリオストの『狂えるオルランド』から直接借用している部分が少なくない。また、ホメロスやウェルギリウスの古典叙事詩に想を得た部分も見られる(特に包囲戦や戦闘場面の描写)。更に、実際にあったキリスト教徒とイスラム教徒の戦いという主題は、オスマン帝国がヨーロッパ東部に領土を拡張しようとしていた当時の読者に強く訴えるものとして、他の同時代作品にも見られる。 その一方で、自らの心と義務の間で引き裂かれる登場人物たちの葛藤を描いている点はタッソの独創によるところが大きい。武勇や栄誉と相容れない愛の描写こそが、本作品の叙情的表現の核となっている。同時に、歴史的主題を題材とすることによってはじめから決まった結末を持ち、無数の続編を生み出していくことはなかった、という点も、他のルネッサンスの叙事詩にはない本作品の特徴となっている。 愛や暴力、異国情緒等を描く『エルサレム解放』はヨーロッパ全土で大きな成功を収め、18世紀後半のフランス革命までの時期を中心に、さまざまな場面を題材にした絵画やオペラ、劇、バレエ等の芸術作品が数多く制作されている。 == 作品の成立と受容 == タッソが『エルサレム解放』の創作を始めたのは1560年代半ばであり、当初は ''Il Goffredo''(『ゴドフロワ』)という題であった。1575年4月に完成し、夏にはフェラーラ公アルフォンソ2世・デステとその妹ルクレツィア・デステ(ウルビーノ公フランチェスコ・マリーア2世の妻)に披露した。1580年、タッソの了解を得ない14編のみの海賊版がヴェニスで出版され、1581年にパルマとフェラーラで完全版が出版された〔Luca Caretti, ed. ''Gerusalemme liberata'', Mondadori, 1983, pp.lxv and lxix.〕。 『エルサレム解放』は大好評を博し、数多くの派生作品を生んだ。ただし、一部の批評家はあまり歓迎せず、特にタッソがふんだんに魔術をもちこんだ点や、語り口の混乱に批判が集中した。死の直前にタッソは、『エルサレム征服』(La Gerusalemme Conquistata)という題名で作品を大幅に書き直したが、この改作は現代の批評家からは酷評されている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「エルサレム解放」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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