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触媒[しょくばい] 触媒(しょくばい)とは、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう。また、反応によって消費されても、反応の完了と同時に再生し、変化していないように見えるものも触媒とされる。「触媒」という用語は明治の化学者が英語の catalyser、ドイツ語の Katalysator を翻訳したものである。今日では、触媒は英語では catalyst〔、触媒の作用を catalysis という。 今日では反応の種類に応じて多くの種類の触媒が開発されている。特に化学工業や有機化学では欠くことができない。また、生物にとっては酵素が重要な触媒としてはたらいている。 == 解説 == 1823年にドイツの化学者であるヨハン・デーベライナーは、白金のかけらに水素を吹き付けると点火することに気がついた。白金は消耗せず、その存在によって水素と空気中の酸素とを反応させることを明確にした。スウェーデンの化学者であるイェンス・ベルセリウスは、この白金の作用と同じ原因が他の化学反応や生物体の中にも広く存在するとし、καταλυω(私は壊す)から導いて「katalytische Kraft(触媒力)」と名付けた〔ベルセリウス著(田中豊助、原田紀子訳)「化学の教科書」p145、内田老鶴圃、ISBN 4-7536-3108-7〕。 触媒は反応の速度を増加させる。適切な触媒を用いれば、通常では反応に参加しないような活性の低い分子(例えば水素分子)を反応させることができる。しかし原系(反応基質側)や生成系(生成物側)の化学ポテンシャルを変化させないため、反応の進行する方向(化学平衡)を変えることはない。すなわち自発的に進行する方向に反応の速度を増加させる働きを持つ。言い換えれば、自発的に起こり得ない方向への反応は触媒を用いても進行しない。例えば、室温において水素と酸素から水が生成する反応は、反応前後でのギブズ自由エネルギー変化 Δ''G'' < 0 であるため自発的に進行し、白金触媒を用いると反応速度を増加させることができる。一方、水が水素と酸素に分解する反応は室温では Δ''G'' > 0 であるため、どのような触媒を用いても自発的には進行しない。 Δ''G'' > 0 となる反応を進行させるには生成物を連続的に系外に排出するか、外部から電気や光などのエネルギーを与える必要があり、場合によっては電極触媒や光触媒を利用して反応速度を向上させる(記事 化学ポテンシャルに詳しい)。 触媒の良否は目的物質の収率や鏡像体過剰率で判断され、これらの率が 100% に近いほど良い触媒とされる。また副生成物の種類や量も重要なファクターになる場合もある。触媒活性と耐久性は、ターンオーバー数(TON)、そして単位時間当たりのTON(= TOF)、そしてその活性を維持した時間や使用回数で評価でき、これらが高い触媒ほど優れている。また、反応設計の良否として、原子効率が高いこと、反応条件が穏和であること、後処理において生成物の分離が容易であること、反応全体の環境負荷が低いこと、なども評価基準となる。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「触媒」の詳細全文を読む
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