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辰巳ダム(たつみダム)は、石川県金沢市、二級河川・犀川本流中流部で現在建設が進められているダムである。 石川県が施工を行う県営ダムで、高さ51.0メートルの重力式コンクリートダム。1975年(昭和50年)より計画が進められているが当初は上水道目的などを有する多目的ダムとして計画されていた。だがその後の水需要の変化などにより計画が縮小され、現在は洪水調節目的に特化した穴あきダムとして、国庫の補助を受けて建設が進められている補助治水ダムである。このダム計画は歴史的建造物である辰巳用水取水口が水没するなど環境・文化面で大きな変化をもたらす計画だったため、環境保護団体や市民団体などが激しい反対運動を繰り広げてきた、計画発表から33年経過してようやく本体工事に着手している。日本の長期化ダム事業の一つである。 == 経緯 == 建設予定地付近の辰巳用水東岩取水口はダム建設により水没の恐れがあり、また環境保全の面から周辺住民の一部や市民運動家が反対活動を行っている。これに対し県は当初の計画から右岸側を150m上流に移動し、東岩取水口を保存する計画案を提示したが反対派住民の同意を得ることはできなかった。そこで県は、2007年1月北陸地方整備局に「土地収用法に基づくダム建設の事業認定」を申請し、同年11月に認定されたため土地収用法にもとづいて、建設予定地で未収用の土地を強制収用する方針を表明した。 これに対して反対派は、北陸地方整備局を相手に事業認定の取り消しを求めて訴訟を起こした。 * 1975年(昭和50年) - 辰巳ダムの建設を計画。 * 1985年(昭和60年) - 辰巳ダム建設計画反対を目的とする共有地運動が開始される。 * 1998年(平成10年) * 12月18日 - 石川県公共事業評価監視委員会土木部会が開催され、石川県は「辰巳ダムの洪水被害防止効果は3,000億円で建設費の21倍の効果がある」と説明。一方で犀川大橋周辺の犀川の護岸拡幅など、辰巳ダムの代替案には「700億~1,800億円が必要」との見方を示す。 * 1999年(平成11年) * 4月 - 県と反対派団体の間で辰巳ダムに関する意見交換会が開催される。県は、辰巳ダム計画は犀川ダム治水計画との十分な整合性を確保している、と主張。新たな資料を提出する場合には事前に反対派団体にも提供すると述べる。また、辰巳ダムが工事実施基本計画無しに工事が進められてきた事に対して、「望ましくないが違法ではない」と説明。 * 7月 - 第7回目の意見交換会にて県は「用地取得が完了するまで本体着工しない」との見解を公表する。 * 8月17日 - 県が「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」を作成し、第1回石川県公共事業評価監視委員会にて提出される。約束されていた資料の事前提供が無かったことに対し、市民団体は抗議する。 * 10月30日 - 辰巳ダム計画の犀川ダム治水計画との整合性を検討するため、反対派団体・辰巳の会が犀川ダムと内川ダムに関する永久保存文書公開を求める公文書の公開を請求するが、これらの永久保存文書が紛失されていることが明らかとなる。 * 12月7日 - 犀川ダムに関する永久保存文書の紛失について、マスコミ等が大きく報道する。この日の午後、その永久保存文書は発見された。また内川ダムの同様の文書についても、発見を隠していたことが後に判明する。 * 2001年(平成13年) * 8月 - 環境保護団体・世界自然保護基金(WWFジャパン)が辰巳ダム近くにある絶滅危惧A類のCにランクされているミゾゴイ生息地を視察、県と意見交換する。 * 8月20日 - 野鳥愛好会・森の都愛鳥会が、林道工事以外の工事中断を県と合意していたものの、工事が進められていたことに対して県に抗議する。 * 2005年(平成17年) * 8月 - 水没予定地区の付替市道が開通。 * 11月 - 反対派の地権者には用地交渉は行われていないまま、県が土地収用手続きを開始。 * 2007年(平成19年) * 1月 - 国土交通省北陸地方整備局に「土地収用法に基づくダム建設の事業認定」を申請する。 * 11月 - ダム建設事業が認定される。 * 2008年(平成20年) * 5月23日 - 石川県議会・土木企業委員会において宇野邦夫議員が、建設取り消し訴訟に加わった元県職員を名指しはしなかったものの「石川県から叩き出してしまえ」、「かち殺してしまえ」と発言。委員会は議事録の削除について検討することとなった。 * 6月 - 県議会の一般質問において、石川県知事の谷本正憲が一部地権者が建設に反対していることから「土地収用法に基づく取得を判断せざるを得ない」という認識を示す。 * 6月30日 - 辰巳ダム仮水路全崩壊事故が起きる。石川県は、やむを得ない事故だったと説明。 * 7月18日 - 金沢地方裁判所にて辰巳ダム裁判の第1回口頭弁論が行われた。原告団は「国は事業認定を行うにあたって、ダム建設によって得られる利益を不当に過大評価し、失われる価値を不当に過小評価ないし無視して行うべき検討を行っておらず、事業認定が違法であることは明らか」と指摘し、事業認定取り消しを訴えた。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「辰巳ダム」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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