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辻・トロスト反応 : ウィキペディア日本語版
辻・トロスト反応[つじとろすとはんのう]

辻・トロスト反応(つじトロストはんのう、)はπ-アリルパラジウムに対して求核試薬が付加する化学反応のことである。
1965年に辻二郎らによってはじめて報告された。その後1973年に、バリー・トロストらによってホスフィン配位子が導入され、また不斉反応化が行われるなどしたことから、二人の名を冠して呼ばれている。
0価のパラジウム錯体二重結合配位したのち、アリル位の炭素-ヘテロ原子結合に対して酸化的付加を行い、π-アリル錯体を形成する。
このπ-アリルパラジウムのアリル配位子は求電子性で、主にやわらかい炭素求核試薬の付加を受ける。
ハロゲン化アリルへの求核置換反応と等価であるが、条件がより温和であったり特徴的な立体選択性を持つ点で使い分けされる。
1965年に辻によって報告されたやり方では、π-アリルパラジウム錯体マロン酸ジエチルナトリウム塩と反応し、モノアルキルおよびジアルキル生成物の混合物を与える。
辻の研究は、求核剤としてもとオレフィン-パラジウムクロリド錯体の反応によるケトンの形成を1962年に報告したSchmidtによる以前の研究を基礎としている。
1973年にトロストによって報告された異なるアルケンを用いた場合のやり方では、トリフェニルホスフィンが反応の進行に必要である(辻の条件では反応は進行しない)。

== 反応条件 ==
π-アリルパラジウムの前駆体となるアリル化合物は、ハロゲン化アリル、酢酸アリルエステル、炭酸アリルエステル、アリルフェニルエーテル、ビニルオキシランなどである。
直接求核置換反応を行うことが困難な酢酸炭酸のアリルエステルが基質として使用できる点が特徴である。
特に炭酸アリルエステルはπ-アリルパラジウムを速やかに生成し、またその際に脱炭酸反応によってπ-アリルパラジウムと等モル量のアルコキシドを生成する。
このアルコキシドは炭素求核試薬からプロトンを引き抜く塩基として用いられる。
そのため炭酸アリルエステルの場合には塩基を添加することなく、中性に近い条件で反応を行うことが可能である。
一方、アリルアルコールは反応活性がほとんどない。
これを利用すると、ジオールの一方のみを選択的にエステル化することで反応点を制御することができる。
パラジウム錯体は反応溶媒に可溶な2価のパラジウム塩と過剰量のホスフィン配位子の組み合わせか、0価のパラジウムホスフィン錯体が用いられる。
前者の場合には系内でホスフィンによってパラジウム塩が還元されて0価のホスフィン錯体が生成し、これが触媒活性種となる。
ホスフィン配位子はトリフェニルホスフィンや二座配位型のdppeが使用される。
求核試薬はマロン酸エステルをはじめとする活性メチレン化合物が主に用いられる。
炭素求核試薬以外にアミンアジ化物カルボン酸が付加する例も知られている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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