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夫婦別姓(ふうふべっせい)とは、婚姻時に両者の名字(法律用語では「氏」)を統一せずに、夫婦の双方が婚姻前の名字(氏)をなんらかの形で保持する婚姻及び家族形態、またはその制度のことである。法的には「夫婦別氏(ふうふべっし)」という。このほか、現行制度の下での非法律婚(事実婚)のことを夫婦別姓と呼ぶこともある〔福島瑞穂ほか(著)『楽しくやろう夫婦別姓:これからの結婚必携』、1989年〕。なお、婚姻時に両者の名字(氏)を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(法的には「夫婦同氏」)という。 法的な夫婦別氏という家族形態は日本国の現行法制の下では認められていないため、民法を改正して夫婦別姓と夫婦同姓のいずれかから選択できるようにすることが議論されている。そのような、夫婦別姓と夫婦同姓を選択できるような制度を、特に「選択的」を前置して「選択的夫婦別姓(せんたくてきふうふべっせい)」、法的には「選択的夫婦別氏(せんたくてきふうふべっし)」と呼ぶ。 夫婦別姓の導入に対して、その是非に関する激しい議論がしばしば行われている。 == 概要 == 日本では明治時代まで、名字(苗字)は姓(本姓)と異なり、名やと同じように節目節目に変える文化があった。明治になると文明開化の名の下に姓は廃止され苗字と統合され、姓と苗字(名字)の区別がなくなった。あわせて当時の欧米先進諸国が導入したように日本でも法律により苗字の勝手な変更は禁止され、婚姻や養子縁組等による変更以外は固定された。 西洋の一部でもキリスト教思想の下で夫婦一体という観点から、夫婦同氏を実現するために婚姻に際して氏を変更する権利が認められ、特にプロテスタント色の強いドイツでは、夫婦同氏が強制されるに至った。これに対して、儒教的な文化が強い東洋では、父の氏の変更を伴う夫婦同姓は認められなかったとされる〔青山道夫・有地亨編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、348頁〕。中国や朝鮮、明治前半までの日本などでは血縁についての意識が強いために別氏を原則としていた〔大村敦志著 『家族法 第2版補訂版』 有斐閣〈有斐閣法律学叢書〉、2004年10月、52頁〕〔加持伸行、『儒教とは何か』、中公新書、3-4p〕。日本は、近代に入ってからも1898年に明治民法が制定されるまでは妻は生家の姓を用いることとされており(明治9年3月17日太政官指令15号参照)〔、夫婦別姓であった。 そもそも世界のさまざまな文化においては人の名をどのようにあらわすか、人は何を指す名前を持ちどのように名乗るかということがそれぞれに異なっている〔各国の姓のありようについては項目「世界の氏名制度とその状況」および英語版の「」を参照。〕。何らかの所属または関係性を示す名称と本人個人を示す名称の2種類以上を持つ場合が大半であるが、前者を欠くところもある。 世界のさまざまな文化における家系や家族を示す名称に関しては、大きく2つに分けると以下のように分類できる。 *父系、家系を示す名前(日本の「氏(姓)」、中国や韓国の姓にあたるもの) *同族集団、生活集団、世帯などを示す名前(日本の「名字」にあたるもの) 所属や関係性を示す名称は、文化ごとに類似しつつもさまざまな差異がある。たとえばスラブ語圏に見られる父称(父親の名前を用いて「〜の子」という意味を表す名前。父を同じくする兄弟姉妹間では同一になる)や一部の文化に見られる出身地名、氏族名、部族名といったものもある。これらは「姓」とは違うものとみなされる。 なお、日本の名字は中世において居住地の地名を使用する場合が多かった。 したがってこのような名称の文化的な差異を論じる場合、同姓か別姓かのみを抽出して論じることは難しい。但し別姓や結合姓など、何らかの手段で結婚前の姓を結婚後も名乗ることができるところがほとんどである〔「第4回 家族とライフスタイルに関する研究会 議事概要」(内閣府 平成13年(2001年)) 「夫婦・子の姓に関する各国比較」 〕。 氏に関する法制度としては、社会構造の変遷によって従来の血縁集団ではなく夫婦間に構成される生活共同体が重要性をもつようになり、その生活共同体に共通する呼称を氏という形で示すようになったものと考えられている〔。ドイツでは、民法制定時から婚氏統一であり、オーストリア、スイス、インド、タイ、そして日本もこのゲルマン法グループに属するとされるが〔大村敦志「家族法 」有斐閣、2010年。〕、近時は夫婦のそれぞれが個別的な社会的活動を行うことも多くなり、このような点から別氏を認めるべきとの意見が強く出されるようになり〔、ドイツ、タイ等でも法改正が行われ選択制となった結果、純粋に同氏制を維持する国は日本だけになったと見られている〔〔〔〔。 海外で法律上の夫婦が選択する氏・姓等の名称に、どのような選択肢があり得るかどうかであるが、実際上同姓・別姓のどちらが多いかという事実の問題と、法律で同姓以外の選択肢がないかどうかという法規範の問題とは別である。これについて立命館大学教授の二宮周平は「氏と名の組み合わせで個人を特定する制度ないし習慣を持つ国々では、周知のように、夫婦別氏あるいは旧姓の併用を認める国がほとんどである」と指摘している〔ジュリスト No.1336 2007.6.15 15頁〕。以前は、日本以外にも同姓しか選択肢がない国もあったが、それらの国で法改正が行われたことにより、比較法的に見て、夫婦同氏を強制する国は2014年の時点で日本のみとなった〔提言 男女共同参画社会の形成に向けた民法改正 日本学術会議〕〔2007年2月21日 衆議院内閣委員会〕〔「同姓義務 合憲か違憲か」、日本経済新聞、2015年12月10日朝刊。〕〔。トルコやタイなどドイツ法の影響が強い国ではかつて法律上に婚氏統一が明記されていたが、ともに法改正があり、婚氏統一の規定はなくなった。ドイツでは特に申し出がない限り夫の姓を用いる同姓とされていたが、この規定が違憲とされ、夫婦の姓を定めないと別姓になるように改正された(ドイツ民法1355条 )。 日本では、2015年12月現在、夫婦別姓の選択は認められておらず、様々な議論がある。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「夫婦別姓」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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