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酸性食品とアルカリ性食品(さんせいしょくひんとアルカリせいしょくひん、Acid Food and Alkaline Food)とは、グスタフ・B・フォン・ブンゲ(Gustav B. von Bunge; 1844 — 1920)の発表した学説を発端とする食品の分類である。 健康科学では、食品そのものや食品が身体に与える影響を水素イオン指数(pH)で酸性かアルカリ性で判断することによって食品を分類している。こうした分類を参考にした食事法は、アルカリ食事法(:en:Alkaline diet)、酸・アルカリ食事法〔''The Acid Alkaline Diet for Optimum Health: Restore Your Health by Creating Balance in Your Diet'', 2003 (ISBN 978-0892810994)〕と呼ばれている。その影響の是非については様々な見解がある〔アルカリ食品が体によい? 京都府消費生活安全センター くらしの情報ひろば〕。 == 概要 == 1890年前後にこの概念を提唱したのは、スイスのバーゼル大学の生理学者、グスタフ・フォン・ブンゲ (:de:Gustav von Bunge) で、肉を食べると含硫アミノ酸(当時は硫黄と呼ばれた)が硫酸に変化し、体組織を酸性にするのでアルカリ性のミネラルを摂取する必要がある、と主張した。アルカリを欠乏させないことで健康を保つことができるということである。 後に、日本でも国立健康・栄養研究所の西崎弘太郎(にしざき ひろたろう)博士が、食品の酸性度やアルカリ度を発表しているが、日本の栄養学ではこうした主張はなくなっていった〔食エッセンス13.酸性食品、アルカリ性食品について (wellba:JAM株式会社によるウェブサイト)〕。1984年の日本の病理学書によれば、「重度の脱水症によってアシドーシス(血液が酸性化すること)が起こる」としか書かれていない〔小野江為則ら、『病理学』第二版、理工学社、1984年。ISBN 4844551264。58-59頁。〕。1980年代後半になると、健康法ブームに対して、日本の栄養学から様々な生理学的、栄養学的矛盾点が指摘されるようになり〔、1990年前後に、臨床実験や実験の引用を行わないまま、体液を酸性にすることはなく病気の予防にも関係がないために無意味な分類だ、とされた〔。そして、日本では「分類は無意味だ」という説が一般化し〔高橋久仁子 『「食べもの神話」の落とし穴―巷にはびこるフードファディズム』 講談社 2003年9月。ISBN 978-4062574181〕〔左巻健男『水はなんにも知らないよ』 ディスカヴァー・トゥエンティワン、2007年。90-91頁。ISBN 978-4887595286。〕〔鈴木たね子「「酸性食品」と「アルカリ性食品」の今昔」『アクアネット』10(3)、2007年3月。pp28-31.〕〔細谷憲政『人間栄養学-健康増進・生活習慣病予防の保健栄養の基礎知識』骨粗鬆症財団理事長・折茂肇監修、服部由美訳、2000年11月。ISBN 9784924737501。60頁。〕、2008年現在でも山口県栄養士会は否定的な見解を示している〔栄養相談 Q:酸性食品とアルカリ性食品について教えて下さい。 (社団法人 山口県栄養士会) (ただし、当記事と文章内容が同じで「de:」などWikipediaの記法まで用いてある。)〕。ただし、これらの否定説は後述するように科学的方法にのっとっていないため、判断の合理性には疑問が示される。2010年時の管理栄養士の国家試験を目標とした教科書である『新しい臨床栄養学』の5版には、酸性食品とアルカリ性食品を分類している〔後藤昌義、瀧下修一『新しい臨床栄養学』南江堂、改訂第5版、2010年。ISBN 978-4524260829〕。 理論的には血液を含む体液の酸塩基平衡は呼吸により排泄される二酸化炭素と腎の尿細管による炭酸水素イオンの生成量により決定されることが解明されている〔第12章水,電解質,無機物,酸-塩基の代謝 (メルクマニュアル、第17版、日本語版); 記事アシドーシスとアルカローシスも参照せよ〕〔排泄される尿、汗、便の水素イオン濃度は体液とは合致せず逆に恒常性を維持するための電解質の排泄によって、受動的に大きく変化する。〕が、疾患をもつ場合や食事の摂取が不十分の場合には、食事の種類や構成によって血液が酸性に傾くことがある〔第12章 酸-塩基代謝障害 代謝性アシドーシス (メルクマニュアル、第17版、日本語版)〕。(ほか、薬物などの摂取によっても起こる〔アルカローシス アシドーシス (メルクマニュアル家庭版、159章 酸塩基平衡)〕)。 食事によって代謝性アシドーシス(血液を酸性化しようとする病態)が起こることも観察されており〔、また酸性の負荷が高く代謝性アシドーシスを起こす食習慣では骨密度〔を減らす影響があることや、心血管疾患のリスクを高める〔ことが懸念されている。 海外の栄養学的な疫学研究では、酸の多い食事は骨に悪影響があるとする結果が示されており〔〔HM, New SA, Fraser WD, Campbell MK et al. "Low dietary potassium intakes and high dietary estimates of net endogenous acid production are associated with low bone mineral density in premenopausal women and increased markers of bone resorption in postmenopausal women.Macdonald" ''Am J Clin Nutr'' 81(4), 2005 Apr, pp923-33. PMID 15817873〕、疫学に関する専門家によって食事指導が提案されている〔〔。 2002年に世界保健機関は、動物性たんぱく質による酸性の負荷は、骨粗鬆症の発症に関してカルシウム摂取量よりも重要な要因ではないか、と報告している〔Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation(2002), Human Vitamin and Mineral Requirements , pp166-167.〕。2007年にWHOは、タンパク質中の含硫アミノ酸、メチオニン、システインの酸が骨のカルシウムを流出させるため骨の健康に影響を与えるため、カリウムを含む野菜や果物のアルカリ化の効果が少ないときカルシウムを損失させるため骨密度を低下させる、と報告した〔Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation(2007) Protein and amino acid requirements in human nutrition , pp224-226. ISBN 978-92-4-120935-9〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「酸性食品とアルカリ性食品」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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