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量子複製不可能定理(りょうしふくせいふかのうていり、英語:no-cloning theorem)は量子力学から得られる結果の一つであり、未知である任意の量子状態に対し、それと全く同じ複製を作る事を禁止する定理である。Wootters、 ZurekとDieksによって1982年に提案され、量子コンピューティングやその関連分野に特筆すべき影響を与えた。 一つの系における状態は、別の系の他の状態と量子もつれ状態になる事がありうる。例として、制御NOTゲートとWalsh-Hadamardゲートを用いて、2つの量子ビットを量子もつれ状態にする事ができる。これは複製の操作ではない。なぜならば、もつれ状態の部分系に、定義可能な状態を割り当てる事ができないからである。複製の操作とは、同じ因子を持ったを作るプロセスである。 :en:Asher Peres と David Kaiser,が説明しているように、複製不可能定理の公表は、Nick Herbertによる量子もつれを利用した超光速通信の提案によって促された。 == 証明 == 量子的な系Aのある状態をコピーする事を考え、この状態を(ブラ・ケット記法参照)とおく。コピー先として、同じ状態空間を持った系Bとその初期状態を考える。この初期状態、すなわち空白の状態は、我々が先行する知識を持っていないはずのという状態には、依存してはならない。組み合わされた系の状態はそのようにして、以下のテンソル積で表される。 :. (以下の記号は省略し、暗黙にそれがあるものとする) 組み合わされた系を操作する手段は2つだけである。我々は観測を行う事ができ、系は不可逆に収縮して、あるオブザーバブルの固有状態となり、量子ビットに含まれた情報は汚染される。自明だが、これは望む操作ではない。もう一つのものとして、我々は系のハミルトニアンを操作して、時間発展演算子''U'' (時間に依存しないハミルトニアンにおいては であり、 は時間並進の生成子と呼ばれる)を、ある時間間隔においてだけ操作することができる。これはユニタリ演算子である。結果''U''は以下に仮定するコピー演算子 : として、状態空間 (を含む)における可能な全ての状態に対し振る舞う。''U''はユニタリであるので、以下の内積を保存する。 : そして量子力学的な状態は規格化されていると仮定すると、以下が従う。 : これは、(すなわち)かがに直交する(すなわち)のいずれかが成り立つ事を意味している。しかし、任意の二つの状態に対して一般にこれらが当てはまる事はない。 特別に選んだ状態 : および : はの要求に適合するが、この結果はこれより一般的な状態に対しては得られない。従って ''U''は''一般の''状態を複製することはできない。これにより量子複製不可能定理が証明される。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「量子複製不可能定理」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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