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鉄の夢[てつのゆめ]
『鉄の夢』(てつのゆめ、''The Iron Dream'')は、ノーマン・スピンラッドが1972年に発表したSF小説。作品全体が「SF作家アドルフ・ヒトラーの遺作『鉤十字の帝王』の第2版」という架空の書籍になっているメタフィクションである。ネビュラ賞候補作。1974年、フランスのアポロ賞を受賞。 == 構成 == 『鉄の夢』の本文最初のページは『鉤十字の帝王』の表紙である。表紙の四隅には逆卍()が描かれている。次ページ以降には出版社による煽り文句、作者アドルフ・ヒトラーの紹介、ヒトラーの著作一覧があって小説本文が始まる。小説本文の最後のページの後に『鉤十字の帝王』第2版へのあとがきとしてニューヨーク大学教授ホーマー・フィップルによる作品と作者についての評文があり、評文の最後のページが『鉄の夢』の本文最後のページとなっている(日本語版では、この後に『鉄の夢』の訳者あとがきがある)。 『鉤十字の帝王』の原文は英語としてはかなり稚拙な文体で書かれている。ストーリーも陳腐かつ荒唐無稽であり、作中世界(『鉤十字の帝王』が書かれた世界)の評者フィップルは執筆当時のヒトラーが常軌を逸した精神状態にあったことを作品から読み解いている。しかしそれらはすべてスピンラッドの意図したものであり、作中世界のヒトラーおよび世界自体の姿を浮き彫りにするための手段である。 作中世界では大ソビエト連邦が世界のほとんどを支配しており、アメリカ合衆国とその同盟国である大日本帝国だけがかろうじて抵抗を続けている。『鉤十字の帝王』はそうした社会情勢を背景に書かれた作品であると同時に、現実世界におけるナチス・ドイツのメタファーに満ちている。例えば主人公フェリック・ジャガーの容姿はナチス・ドイツが理想としたアーリア人そのものであり、彼の部下たちもナチスの要人をモデルにしている(ウォフィングはヘルマン・ゲーリング、レムラーはハインリヒ・ヒムラー、ベストはマルティン・ボルマン、ボーゲルはルドルフ・ヘス、ストーパはエルンスト・レーム)。宿敵ジンド帝国とミュータントやドムたちにはソビエト連邦とユダヤ人のイメージが混合されているが、フィップルは後者の可能性に気づきながらもそれを否定している(作中世界では大ソビエト連邦によるユダヤ人虐殺が行われたため)。 現実世界の読者の多くは『鉤十字の帝王』で描かれたヘルドンの国家体制(特にジンド滅亡後の展開)をディストピアとしか受け取れないだろう。しかしながら、共産主義の脅威を間近に感じ続けている作中世界の読者にとってはカタルシスに満ちており、熱狂的な支持を受けたとされている。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「鉄の夢」の詳細全文を読む
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