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鎖付図書[くさりづけとしょ]
鎖付図書〔。〕(くさりつきとしょ、)とは本が本棚と鎖で繋がれている図書館のことで、本を図書館外へ持ち出せないようになっているが本棚から取り出して読書できるのに十分な鎖の長さはとっている。これにより所蔵本の盗難を防いでいた〔Weston, J. (2013, May 10). "The Last of the Great Chained Libraries". Retrieved from http://medievalfragments.wordpress.com/2013/05/10/the-last-of-the-great-chained-libraries/〕。このようなやり方は中世から18世紀頃までの参考図書館(図書館の大部分)の多くで採用されていた〔Byrne, D. “Chained libraries.” History Today, 1987, p. 375-6.〕。コレクションにおける参照書籍や大判の書籍といった唯一無比の価値を持つ本が鎖で繋がれていた〔。 == 概要 ==
鎖付図書はそれほど古くからあるものではなく、中世の終わり15世紀ごろからあらわれ始め、16、17世紀に鎖付図書館は多く作られている〔高宮・原田 1997, pp. 311-312.〕。中世には蔵書そのものが多くなく、本の保管にはアルマリウムと呼ばれる戸棚や、チェストと呼ばれた保管箱が用いられていた〔。ヘレフォード大聖堂に現存するチェストは、木製で長さが約2メートル、幅、高さが約50センチメートルという大きさである。周囲には彫刻が施してあり、錠前が3つ取り付けられており、四隅に脚がついている。本の紛失・盗難を防ぐため、チェストを開けたままにすることは許されず、また本を読むときもチェストに背を向けてはいけなかった。本の盗難に対する呪い(ブックカース)が存在するほど、中世には本は貴重であった〔マレー 2011, pp. 54-57.〕。蔵書が増えるにつれチェストも増えていくこととなったが、鍵の管理や利便性などに大きな支障をきたすことになり、保管には専用の図書室ないしは図書館が作られることになった。図書室には書見台が配置され本は鎖で書見台とつながれていた。 標準的な鎖付図書は本のカバーや隅に鎖が付けられていたが、これはもし鎖を本の背に付けてしまうと棚から出し入れする時の負担で大きく摩耗してしまうためである。また、本に小さい輪を通してチェーンを付ける場所故に、本はページの前小口だけが見えるように背を奥にして収納されているが(これは現代的な図書館にとってはあべこべな収納方法である)、これによりひっくり返すことなく本を取り出して読むことができる上、鎖が絡むことも避けられる。当時の本には背表紙に著者や書名が記載されていなかったのも、このような収納方法の一因である。利用者が本を捜し出すときは、書見台や本箱の端に書かれている書名のリストを参照していた。また、前小口や本を閉じるリボン・留め金に書名などの本を識別するための情報が記載され、一部では鎖に識別用の札がつけられていた〔。この背を奥にしてしまう収納法は一般にも広がり、鎖がついていない個人の書斎でも利用されていた。鎖は主に鉄で出来ていた棒につながれており、司書が鎖を外す時は鍵を用いていた〔Lopez, B. “New Chained Library of Hereford Cathedral Takes Royal Prize”. American Libraries, 1997, p. 22.〕。鎖付図書は図書館の設計にも大きく影響を与えた。鎖でつながれている本は読書できる範囲が限られているため、採光の都合から建物には多くの窓を並べ、書棚は壁に対し直角に並んでいる〔。 学校や大学といった教育機関の外部での利用が多かったイングランドの図書館における最古の例はリンカーンシャーのグランサムにある1598年に創設されたである。この図書館は現存していて、後の公共図書館システムの先駆けと言われている〔マレー 2011, p. 148.〕。ダブリンにある1701年建設のも非教育機関図書館で建設当初の建物に現在も入り続けていて、本が鎖につながっているわけではないが、その代わり貴重な書物の紛失を防ぐために檻の中でのみ本を読むことができた。その他やにも鎖付図書が設置されている。鎖付図書はヨーロッパ全土に広まっていったが、全ての図書館で採用されたわけではなかった。印刷数の増加で書籍の価格が下がると共に鎖付図書の採用も減っていった〔。それでも鎖付図書がすぐに消えたわけではなく、18世紀末ごろまで本は鎖でつながれていた。オックスフォード大学のモードリン・カレッジで鎖が外されたのは1799年である。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「鎖付図書」の詳細全文を読む
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