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鎗 : ウィキペディア日本語版
槍[やり]

(やり)は刺突を主目的とする猟具、武器武具の一種。投擲することを目的としたものは投槍という。有史以前から人類が使用し続け、銃剣に代替されるまで長く戦場で使われ続けた。とも書く。
== 概論 ==
槍は人類最古の狩猟道具・武器の一つで、白兵戦用武器の中で最も活躍した実用的な武器の一つであり、その用途、種類は幅広く類似品も数多く存在する。槍は人類の戦いの歴史に無くてはならない武器であり、全ての時代において使用され続けている。近世以降は銃剣を着剣した小銃が狭義の槍に取って代わったが、その使用法は槍そのものである。
旧石器時代には既に人類は投石と槍を使用していたことがわかっている。鋭い牙や爪、突進力を有する動物に対するために槍の長さは有効であり、この利点はそのまま対人の兵器としても発展していった。刺突だけでなく斬撃や打撃を駆使して戦うことができる。そのため戦斧・鎌・フック・鶴嘴・ウォーハンマー・戈など多種多様な長柄武器に発展していった。欠点としては、大型ゆえ閉所での戦闘には向かないことや、長い柄が不利に転じ得る、携帯に不便などである。
担架もっこの代用品として負傷者や荷物などを運ぶ道具として使用されることもある。旗竿としても使われ、軍旗やそこから転じた優勝旗などの旗竿はしばしば槍を模した穂先などの装飾が施される。
戦闘時に相手との距離がとれることによる恐怖感の少なさや、振りまわすことによる打撃や刺突など基本操作や用途が簡便なため、練度の低い徴用兵を戦力化するにも適した武器であり(ただしハルバードなどのように多数の機能を持つ複雑な穂先を持つ場合、その扱いには一定の技量が必要な上、重心が穂先に向いてしまうため、初心者には不向きな物も多い)、洋の東西を問わずに戦場における主兵装として長らく活躍した武器である。一方、槍術と呼ばれる技術体系も存在し、棒術と組み合わせることも多い。また、その長さの持つ威圧感から、軍事力の象徴的に扱われることがあり、特に衛兵や門番は槍を持った姿が多い。
槍を長くするほど、相手との距離を開けて戦える上に相手の攻撃が届かず優位に立てる。一方で、槍が長くなればなるほど近距離での戦闘が絶望的になるのと同時に、森林や狭所での移動や取り回しが難しくなるなどの(大型の武具全般に言える)欠点がある。この欠点は洋の東西を問わず認識されており、ファランクス槍衾(やりぶすま)など野戦で横列を作り、「槍の壁」を作ることで仲間同士で弱点をカバーし合う戦術が考案されている。これらの戦術を用いることにより、集団戦術において槍は有効な武器となっている。
個人戦の場合も、俗に「剣にて槍に対抗するには三倍の段位が必要」と言われるように、近間での戦闘でも長柄によって問題なく戦闘ができるが、武術体系を習得し扱いきるのは困難である。槍術は棒術などの他の武術体系の領域とも重複し習得内容の幅が広く、非常に難しいためである。とは言え、同じ長物である大剣等と比較すると、そこまで扱い辛い物ではない
長柄形の武器は、基本的に使用者の身長辺りから、それより2倍位までが最も無難であるとされるが、使用者の身長の数倍以上の物を扱う者もいる(約4〜6m)。逆に1m位の物もあり、片手で扱う武術もある。「無用の長物」と言うように、使用者が扱えない程長くなれば戦闘に殆ど使えないということもあり得るので、特殊な方法(集団戦法など)を除いて自分の力量や戦術に似合った大きさの物を選ぶ方が良い。
右手で柄尻に近い側を握り、左手を前に出して支える構えから、左手の中で滑らせながら右手の力で突き出すというのが最も基本的な使い方である。重量のある長槍では両手で握り締め突進しながら突き出す他、高く差し上げて打ち下ろす使い方も洋の東西で見られる。古代ギリシャの重装歩兵は盾と併用し片手で投槍の要領で肩の上に構えたが、いずれにしても得物の長さや状況に応じて臨機応変に構えを変えたようである。突き刺す以外にも、叩く、薙ぎ払う、掠め・叩き斬る、絡める、引っ掛ける、フェイント的に柄の側を使う等様々な用法が開発されている。
両手剣類を扱い易くする形で、槍に似た形を得た武器もある。長巻ツヴァイヘンダーなどがいい例であり(刀身根元付近に刃着けしないかあるいは革柄で覆ったリカッソと呼ばれる部分を施したグレートソードや、同様に大太刀から長巻に変遷する途中に刀身中程まで柄巻きを施した中巻野太刀のように、形状は異なっても扱いが槍や薙刀に近似しているものもある)、何より原始に初めて槍が使われ始めた頃から現代に至るまで、一部の例外を除き基本的な構造にほとんど変化が見られないことからも、槍は武器として一つの完成形とも考えることができる。
最初期の銃も、すでに存在していた同じ投射武器であるには似ていない、むしろ槍に似た長柄の先に薬室と銃身を取り付けた形態であった。その銃が発明された中国では現在でも主力小銃を「歩槍」と呼ぶなど銃に槍の字を充てている。
その銃器が19世紀頃になると普及が進み、槍はこれに取って代わられていった。しかし戦闘時に於ける槍としての機能の有効性は未だ健在であり、軍用のサバイバルナイフの中には柄の部分が空洞になっていて、木の枝を挿し込んで(ソケット式の)槍にする物もある。銃剣は剣と書くが、実質は扱い・形状共に槍(銃剣単体=穂、銃身=柄、とも見て取れる)であり、現代の主力歩兵小銃にも、ほぼ全てに銃剣が取り付け可能であり、実戦で使用するための訓練も行われており、未だもって銃剣ひいては槍は全世界で実戦配備されているとも言える。21世紀に入っても、イギリス軍がアフガニスタン紛争 (2001年-)において銃剣突撃で武装勢力を壊乱させた事例が存在する。その他、土木用具のシャベル(形状が一般的な槍に似ている)も、特に塹壕戦では白兵戦用の武器の中で最も活躍した立派な武器として認知されている。現代の非対称戦においては、如何に先進した軍備を誇る大国の軍といえども、劣弱な後方部隊が襲撃される状況がままあり、銃剣を含めた兵士個々人の気力体力に依存する戦闘力の意義がむしろ大きくなっているとも言える。
槍を投擲する概念も、紀元前から存在する用法である。腕の延長としてスイングの半径を拡大し飛距離を増大させる槍投器が世界各地から発掘されている。投擲用の槍は、適当な重量やバランスが手持ち用の物とは異なるため、独自の発展を遂げた。古代ローマのピルムは最も高度に発展したものの一つと言える。弓の発明・伝来が無かったアフリカ、オーストラリアニュージーランドパプアニューギニアポリネシアメラネシアミクロネシア太平洋諸島圏及びハワイ諸島、南米奥地等では、近代まで狩猟具や武器として用いられてきた。現在の陸上競技でも投げた槍の飛距離を争うやり投が存在する。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Yari 」があります。



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