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湿潤療法(しつじゅんりょうほう)は、創傷(特に擦過傷)や熱傷、褥瘡などの皮膚潰瘍に対し、従来のガーゼと消毒薬での治療を否定し、「消毒をしない」「乾かさない」「水道水でよく洗う」を3原則として行う治療法。モイストヒーリング、閉鎖療法、潤い療法(うるおい療法)とも呼ばれる。 == 概説 == 20世紀末に湿潤療法の概念が医療現場のみならず一般家庭までに普及したことで、創傷治療のパラダイム・シフトが起きたといわれている。〔大慈弥裕之, 臨床医学の展望 2013 -形成外科学-. 日本医事新報 4637: 76-81. 〕 湿潤療法は、「創傷の治癒と言うものはもとより細胞を培養する様なものであり、従来の様に乾燥させるより湿潤を保った方がよいのは自明である。しかしながら創傷が治癒するとそれが乾燥することから、乾燥させれば治癒すると言う勘違いや〔夏井(2008) p.28 - p.29〕、消毒に対する信仰などでこれまでは誤った治療がなされてきていた」という考え方に立脚する。消毒薬が容易に傷のタンパク質との反応によって細菌を殺す閾値以下の効力になる一方で、欠損組織を再生しつつある人体の細胞を殺すには充分な効力を保っていること〔夏井(2008) p.16 - p.18〕、再生組織は乾燥によって容易に死滅し、傷口の乾燥は再生を著しく遅らせること〔夏井(2008) p.28〕、軽度の擦過傷においては皮膚のような浅部組織は常在細菌に対する耐性が高く、壊死組織や異物が介在しなければ消毒しなくても感染症に至ることはほとんど無い〔Effect of silver on burn wound infection control and healing: Review of the literature, Burns; 33(2),139-148, 2007〕 ことなどに注目して考案された。 傷口の内部に消毒薬を入れることを避け、再生組織を殺さないように創部を湿潤状態に保ち、なおかつ感染症の誘因となる壊死組織や異物を十分除去(デブリードマン)し、皮膚常在菌による細菌叢を保持し有害な病原菌の侵入を阻害することで創部の再生を促すものである。 1980年代より湿潤環境を保ち傷を治すという概念はすでに存在していた。〔Atiyeh, B.S. et al. Current Pharmaceutical Biotechnology, 3(3),179-195, 2002.〕しかし全世界的に普及はしておらず、日本国内でもガーゼを伴う治療法が主流であり続けた。しかし、ようやく2001年ごろから形成外科医の夏井睦をはじめ、賛同する医師らによって急速に普及が図られている。また、ほぼ同じ時期より、褥瘡に対して内科医の鳥谷部俊一によっても独自の治療法が提唱された。その方法には湿潤状態を保持するために食品用ラップフィルムを用いること、また、完全な閉塞環境を保つことが目的ではないことから、ラップ療法、開放性ウェットドレッシング療法 (Open Wet-dressing Therapy, OpenWT) と呼ばれている。〔http://www.geocities.jp/pressure_ulcer/sub520.htm〕 なお、湿潤環境下の方が創傷の治療経過がよいことは欧米においては1960年代後半から臨床報告などで知られており、これを応用した治療法は"Moist Wound Healing"と呼ばれている。〔Overview of wound healing in a moist environment, The American Journal of Surgery; 167(1) Suppl 2-6, 1994.〕 ためしてガッテンで紹介されることによって、一般にも広く知られるようになった(この時に実践していると紹介したのは、元Jリーガーの高橋範夫)。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「湿潤療法」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Dressing (medical) 」があります。 スポンサード リンク
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