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101号室(いちまるいちごうしつ、) は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』のクライマックスに登場する部屋のこと。 == 概要 == 全体主義国家「オセアニア」政府の省庁の一つである「愛情省」の施設中に、「101号室」と呼ばれる拷問・洗脳室がある。この部屋は、党に反する思想を持ち「思想警察」に捕らえられて愛情省に収監されている政治犯たちにとっての異常なる恐怖の対象となっており、101号室送りを宣告された囚人は、皆それだけはやめてくれと哀願する。101号室で行われる拷問は、政治犯たちを、各人の持つ最悪の悪夢・恐れ・恐怖症の対象に晒すことである。 『1984年』の社会で、テレスクリーンなどの手段を通じて国家が全知の状態にあるということは、市民それぞれの恐怖症や悪夢までも、党が完全に把握しているということを意味する。主人公ウィンストン・スミスの場合、101号室で拷問に使用された彼の悪夢とは「ネズミに襲われる」ことであった。拷問にあたった党内局員オブライエンは、ウィンストンは寝ている間にしばしば、壁の向こうでネズミの大群がうごめいて轟音を立てる夢を見てうなされていたことまでよく知っていた。ウィンストンは飢えたネズミの入っている金網でできた籠を徐々に身体に近づけられ、恐怖のあまり思わず「自分でなく(恋人の)ジュリアに(顔をネズミに喰わせる刑罰を)やってくれ」と絶叫したが、これはウィンストンがジュリアとの間に交わした「決して互いを感情の上で裏切らない」という約束を裏切る行為であった。これを確認して拷問は中止されたが、助かったウィンストンの心は決定的に折れてしまう。 最終節で愛情省から釈放されたウィンストンは冬の公園で一度だけジュリアに再会するが、もはや逮捕以前のような愛情を互いに感じることはない。ウィンストンは、ジュリアの額からこめかみにかけて走る傷跡を確認する。このエピソードで、ジュリアも同じく101号室で自分の恐怖するものに直面させられウィンストンを身代わりにするよう哀願してウィンストンを裏切ったことが示唆される。101号室の拷問の意図は、実際に政治犯を肉体的に傷つけることにはなく、自分を守るがために愛する人々に対する裏切りをさせることで、それにより政治犯の最終的な精神的支柱を砕くことにある。 101号室が小説内で持つ核となるテーマは、拷問と洗脳の最終段階というプロットのクライマックスであるだけではなく、主人公の持っていた自由の精神を破壊し人格を毀損することにある。オーウェルは、全能の国家オセアニアという極端な形での描写を通じ、現代の強力な国家が、恐怖・暴力・憎悪という手段を用いてどのような現実でも思いのままに造り出せることを作中で描いた。ウィンストンはそれまで信じていたものを暴力を通じてすべて奪われ、最終的には「二重思考」を使って2つの数字の足し算のような基本的な事実すら自らの意思でゆがめることに成功し(2 + 2 = 4 だが、同時に 2 + 2 = 5 でもあることを信じる事が出来るようになる)、党を心の底から愛する人間へと生まれ変わった。 オーウェルは「101号室」を、BBC放送センターでのうんざりするほど長い会議でよく利用していた1階の会議室をヒントにしている〔 Meyers, Jeffery. ''Orwell: Wintry Conscience of a Generation''. W.W.Norton. 2000. ISBN 0-393-32263-7, p. 214.〕。また母校である聖キプリアン校での校長による授業の経験ももとになった可能性もある〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「101号室」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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