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三重水素(さんじゅうすいそ、、記号:3H または T〔T という記号は三重水素という水素の同位体に対して特別に割り当てられた記号である。通常、元素の同位体の記号は元素と共通であり、左肩に質量数を付与して同位体であることを示すのが一般的である。このようにある元素の同位体に対して特別な記号が与えられているものとしては、他には二重水素 (D) がある。〕)とは、質量数が3、すなわち原子核が陽子1つと中性子2つから構成される水素の放射性同位体である。一般に、トリチウムと呼ばれる。 == 概要 == 普通の水素(原子核が陽子1つのもの)は軽水素(1H)、質量数が2(原子核が陽子1つと中性子1つ)の水素は重水素(2H)、質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の水素が三重水素(3H)である。 三重水素は軽水素、二重水素よりも重いなど、物理的性質は異なる。しかし同位体の化学的性質は最外殻電子の数(原子番号)によって決まるので三重水素の化学的性質は軽水素と同一である。もともとは 重水素(2H) と 三重水素(3H)とを併せて重水素と呼ばれていた。 トリチウム(三重水素)は、地球環境においては、酸素と結びついたトリチウム水 (HTO〔水分子は水素原子2個と酸素原子1個からなることから、その化学式は良く知られているように、 :H2O である。これを全原子を明示する形に冗長に書けば、 :HHO となる。地球上に存在する大半の水素と酸素の質量数はそれぞれ1と16であるので、質量数を明示する形でさらに冗長に書けば、 :1H1H16O となる。ところで、トリチウム水とは水分子の一つ(または二つのこともあるかもしれないが今は考えない)の水素 1H が3倍の重さの三重水素 3H に置き換わったものであった。したがって、トリチウム水であれば水分子の式は、 :1H3H16O と書ける。さらに、トリチウム 3H には特別な略記号 T が与えられていた。すなわち、3H は単純に T に置き換えて良い。したがって、 :1HT16O と書ける。ここで最後に、左肩の質量数の添字を省略すれば、トリチウム水を表す水分子の式は、 :HTO となることがわかる。〕) として水に混在しており〔トリチウム水 HTO は、天然存在濃度では、軽水( H2O) と性質や反応にほとんど違いがなく、水の理想的なトレーサーとしての利用がある。宇宙線の作用による生成速度を一定とみなせば、放射性壊変による消失速度が一定であるので、地球における天然のトリチウム総量は古今とも一定値となる。 大気循環しているトリチウム水濃度はおおまかに古今東西で動植物も含め一定値と考え、水中濃度の低下量から大気循環からはずれた期間を知る地下水の年代測定が可能である。土木、農業方面での地下水流動の実証的な調査に役立てられている。〕、水圏中に気相、液相、固相の形態で広く拡散分布している〔大気中においては、トリチウム水蒸気 (HTO)、トリチウム水素 (HT) および炭化トリチウム (CH3T) の3つの化学形で、それぞれ水蒸気、水素、炭化水素と混在している。〕。なお、海水のトリチウム濃度は、通常は数Bq/Lより少ない〔日本国内で測定された最高値は、原発事故を起こした福島第一原発の港湾内2・3号機取水口間にて2014年5月12日に採取した海水から1900 Bq/L検出されている。放射能濃度、5カ所で最高値=福島第1港湾内外の海水—東電 2014 年 5 月 16 日 20:30 JST 更新 ウォールストリートジャーナル 他の原発の例では、1991年2月9日に美浜原発の放射能漏れ事故の際に、福井県美浜沖の海水で1991年2月18日に測定された490 Bq/Lであった。また、東海再処理施設の排水の影響により、茨城県東海沖で1990年1月1日に190 Bq/Lのトリチウムが海水から検出されている。〕〔日本国内の環境中のトリチウム濃度は、文部科学省の委託で日本分析センターが環境放射線データベース を公開している。世界の環境水中のトリチウム濃度は、国際原子力機関 (IAEA) がGNIPデータベース (Global Network for Isotopes in Precipitation) として公開している。また、放射線医学総合研究所のGNIPデータベース用の測定データも環境中のトリチウム測定調査データベースNETS DB で利用申し込みにより無料で検索できる。〕。 トリチウムは宇宙線と大気との反応により地球全体で年間約72(7.2京ベクレル〔1(1ペタベクレル)=1015(1千兆ベクレル)〕)ほど天然に生成される〔宇田(2009)〕。加えて、過去の核実験により環境中に大量に放出され〔核兵器(分裂と融合)の大気圏内核実験により環境中の濃度は、それ以前の天然存在量の200倍程度へと急増したが、環境中への放出量の減少により漸減している。百島則幸:トリチウムの環境動態 富山大学水素同位体科学研究センター研究報告〕未だに残っているトリチウム(フォールアウトトリチウム)、原子力発電所または核燃料再処理施設などの原子炉関連施設から大気圏や海洋へ計画放出されたトリチウム(施設起源トリチウム)〔なお、再処理施設からの放出実績及び基準については、表2 再処理施設からの放射性気体廃棄物の年間放出実績(1977年度~1996年度) 及び表3 東海再処理施設保安規定に定める処理済廃液の放出基準および1年間の最大放出量 (ATOMICA:再処理施設からの放射性廃棄物の処理 内図表)参照〕が地球上で観測されるトリチウムの主たる起源である〔宮本 (2008)〕。 高純度の液体トリチウムは、核融合反応のD-T反応を起こす上で必須の燃料であり、水素爆弾(きれいな水爆)の原料の一つとしても利用される〔武谷(1957) p.194〕。 体内では均等分布で、生物的半減期が短く、エネルギーも低いことからトリチウムは最も毒性の少ない放射性核種の1つと考えられ〔松岡 (1995) p. 9, 10〕、生物影響の面からは従来比較的軽視されてきた〔須山 (1981)〕。しかし一方で、トリチウムを大量に取扱う製造の技術者ではあるものの、内部被曝による致死例が2例報告されている〔詳細は、松岡 (1995) p. 9, 10参照。なお、その事例の報告を受けICRPの安全基準は改訂されている。同書より。〕。トリチウムの生物圏に与える影響については、環境放射能安全研究年次計画 において研究課題として取り上げられたことなどもあり、長期の研究実績に基づいた報告書が公表されている〔放医研(1978)、放医研(1986)、放医研(1999)〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「三重水素」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Tritium 」があります。 スポンサード リンク
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