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ABC輸送体(ABCゆそうたい)は、ABCトランスポーター (ABC transpoters) 、ABC蛋白質(ABC proteins)とも呼ばれる。ATP結合カセット輸送体 (ATP-binding cassette transporters) の略称。ATPのエネルギーを用いて物質の輸送を行う膜輸送体の一群である。構造的特徴を共有する非常に大きなタンパク質スーパーファミリーをなし、現生のすべての生物に存在する。 ==概要== 生体膜を通して様々な基質、例えば脂質、糖、ビタミン、その他の代謝に関わる物質、外来の薬物、イオン、ペプチド、タンパク質などを輸送するものが知られ、輸送の方向も細胞の内から外へ(不要物を排出し、あるいは細胞外で働く物質を分泌する)、外から内へ(必要な物質を取り込む)の両方、さらに細胞内でオルガネラ内外間の輸送を司るものがある。医学的に重要なものとして、細菌や癌細胞の多剤耐性の原因となるものや、遺伝病である嚢胞性線維症の原因となるCFTR(塩素イオンチャネル)などがある。ヒト染色体上には48種のABC輸送体遺伝子があり、それらの異常が様々な疾患を引き起こすことから、ヒトの健康の維持のために重要な働きをしていることが明らかになった〔Ueda, Kazumitsu. ABC proteins protect human body and maintain optimal health, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 75, 401-409 (2011)〕。 ABC輸送体は、現に投与されている薬剤のみならずその他の薬剤に対しても耐性が生じる現象である、多剤耐性 (multi-drug resistance; MDR) で重要な役割を演じている。この原因の一つとして、ABC輸送体の増加により細胞内からの薬剤の排出が増えることがある。例えばヒトなどの動物にあるABCB1(Pgp〔P-糖タンパク質〕)は抗癌剤を細胞外に汲み出す働きがある。PgpはMDR1とも呼ばれ、ABC輸送体の中で一番詳しく研究されている。Pgpは、広い範囲の脂溶性の薬物・異物や不要物を基質として細胞外へ排出する、一群のABC輸送体に含まれる。これらによる薬物等の細胞外への排出は、「薬物代謝の第3相」と呼ばれることもある。またこのようなABC輸送体の遺伝子には、薬物代謝酵素と同様に薬物により発現誘導されるものもあり、薬剤の相互作用の原因となる場合もある。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ABC輸送体」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 ATP-binding cassette transporter 」があります。 スポンサード リンク
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