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AMステレオ ( リダイレクト:AMステレオ放送 ) : ウィキペディア日本語版
AMステレオ放送[えーえむすてれおほうそう]

AMステレオ放送(エーエムステレオほうそう)とは中波放送(AMラジオ放送)のステレオ放送である。
1波による中波ステレオ放送の開発は昔から行われていたものの、FMステレオ放送の開始が先だったために本格的に実用化されはじめたのは1980年代に入ってからだった。アメリカで方式が乱立した経緯があり、またAMステレオよりもFMステレオの方が遥かに音質が良いこともあるため余り普及されていないのが実情である。
== 日本における概要 ==
日本では1991年にモトローラ方式を標準方式と決定。1992年3月15日にモトローラ式によって東京と大阪にある東京放送(TBS、現・TBSラジオ&コミュニケーションズ)、文化放送(QR)、ニッポン放送(LF)、毎日放送(MBS)、朝日放送(ABC)の民放5局でステレオ放送がスタート。ラジオ大阪(OBC)は新社屋完成を待って1993年から開始した。その後も各地で順次ステレオ放送が開始された。
日本にて開始当初は「AMラジオの最初で最後の進化」「AMラジオのFM化」と言われプロ野球中継にて臨場感を高めたことや音楽番組のステレオ放送目的、トーク番組などで流れる音楽が開始前と比べて多くなった。AMステレオ放送に関する放送局の設備は送信機・ステレオエキサイタ・AMステレオモニターなどで構成され、電波の送出においてモノラルとステレオをスイッチで切り替えることが可能な設備もある。
結果的に導入したのは大都市中波局と実施当時民放FM局がなかった岡山県山陽放送)や未だに民放FM局がない和歌山県の中波局(和歌山放送)など計16局に留まり、札幌テレビ放送(現:STVラジオ)のSTVラジオ1996年10月7日に開始したのが日本最後の新規採用事例となった。その後、音楽番組の聴取率不振やNHKが導入を見送った影響で多くの民放局で実施に至らずすでにAMステレオを実施している民放局でも一部の局を除いて親局のみでしか行われていない〔現在親局以外のラジオ送信所(中継局)でAMステレオ放送を実施しているのはラジオ大阪京都中継局のみ。〕。
2000年代後半以降、モトローラ社がAMステレオ放送維持に必要なラジオマスター及び受信機用付属部品(ICチップ)生産を(採算割れ等を理由に)2000年代半ばまでに打ち切った事や、放送事業者の経営合理化、放送局の送信機(ラジオマスター)更新の際にAMステレオ放送維持のための装置が2000年代半ばまでに生産終了になったこと、AMステレオ受信機は割高であったため普及しなかった〔AMステレオ放送を終了へ…受信機割高で普及せず ZAKZAK(産経デジタル) 2006年11月16日〕などの理由にてAMステレオ放送を終了してAMモノラル放送に変更する事例が発生しており九州朝日放送2007年4月1日に終了〔、熊本放送2008年9月28日に終了、毎日放送北海道放送2010年2月28日に終了〔毎日放送ラジオからのお知らせ「AMステレオ放送終了のお知らせ」 MBSラジオ公式サイト〕、朝日放送が2010年3月14日に終了、STVラジオが2010年3月28日に終了、RKB毎日放送が2010年5月30日に終了、TBSラジオ2011年1月30日に終了〔AMラジオ放送モノラル化について TBSラジオ公式サイト トピックス&ニュース〕、中国放送が2011年3月13日に終了、山陽放送が2011年3月27日に終了、文化放送2012年2月5日に終了〔モノラル放送移行のお知らせ 文化放送公式サイト〕、東海ラジオが2012年5月13日にラジオマスター更新に際してAMステレオ放送を終了〔ステレオ放送についてのお知らせ 東海ラジオ放送〕しモノラル放送に戻した。2014年10月末時点におけるAMステレオ放送実施局はニッポン放送CBCラジオ和歌山放送ラジオ大阪など漸減傾向にある。
日本では放送開始より前の1991年10月にアイワが初めて日本で対応した製品を出し、ソニーなどその他のメーカーもその後対応した。しかし、数年後アイワを除くメーカーは対応した製品を出すことは少なくなっていく。アイワはその後も対応していたが、ソニーに吸収合併された後は対応を打ち切った。そして、対応機種は2013年を以て全て生産を終了した。しかし、FM文字多重放送受信機のように入手が困難になるという状況にはなっていないため、家電量販店インターネットなどで注文すれば入手が可能である。
C-QUAM方式(モトローラ方式)では対応ラジオではステレオ放送と従来のモノラル放送のどちらも聴取でき、従来の(ステレオ非対応)ラジオではそのままステレオ放送をモノラル放送として聴取できる。
日本で普及・定着しなかった原因として、次の理由が挙げられている。
* 日本放送協会(NHK)がこの放送方式の導入を見送ったこと。
 * 放送法においてNHKは「日本全国に均一な放送をする」義務が定められており、全国47都道府県全てにAMステレオ放送を導入すると莫大な経費がかかる(特にステレオ放送対応の送信機が高額とされている。中継回線使用料は仮に実施した場合でもほとんど影響しなかった〔この頃は既にAMラジオ放送用のデジタル回線が使用開始した時期でもある。〕)とされたため〔しかし、地上波テレビのステレオ放送も最初から全国一斉実施ではなく「日本全国に均一な放送」となるまでに時間を要したこと(総合テレビでは実用化試験放送時代から数えて8年、本放送開始から数えて4年、教育テレビは半年)やNHK-FMの文字多重放送が一部区域のみの実施で「日本全国に均一な放送」でないことと矛盾するという意見もある。なお、NHK-FM文字多重放送ワンセグが放送開始したことと受信料収入減による予算・事業計画の見直しにより2007年3月に終了した。〕。
 * 既に超短波放送(FM放送)でステレオ放送を行っておりNHK中波放送の聴取者は高齢層が多かったためにAMステレオ放送を生かせる番組が少ないとされ〔もっとも、ラジオ第1・2放送の番組の中にもステレオで収録した番組が存在する。また、『ラジオ深夜便』などはNHK-FMでも放送している。〕、中波でのステレオ放送は不要と判断したため〔しかしながら、韓国のような1.5MW(メガワット=1000kW)クラスの大出力送信所設置(日本の中波送信所の最大出力は500kW)と中継送信所の統廃合でNHKでもコストを抑えたAMステレオ放送の導入が可能との意見もあった。なおNHK放送センターのラジオセンター131スタジオと132スタジオは当時将来的なAMステレオ放送実施を目的にステレオ放送に対応した設備になっていて、AMステレオ放送不実施決定後もステレオ放送に対応した機材は実際にステレオ放送されるFM放送(『ラジオ深夜便』など)や地上デジタルラジオ実用化試験放送(2011年3月31日で終了)で活用している。〕。
* 全ての中継局をステレオ化すると回線使用料が割高になること〔テレビやFMラジオのような放送波中継ではなく、ほとんどの中継局に有線の中継回線で結ばれているため。〕。
* AMステレオ放送を開始するとステレオ聴取可能エリアがモノラルに比べて狭まることで広告料金低下を嫌う営業部門からの反発があること。
* 放送設備のステレオ化対応やメンテナンスに多額の費用がかかること〔各AMラジオ局のスタジオにある個々の機器自体はステレオ放送に対応可能なものが多数導入されているが、スタジオを丸々AMステレオ放送用に改装したり送信機を導入したりするには多額の費用を要する。一例として九州朝日放送1992年にAMステレオ放送を導入する際、第一段階としてスタジオ一つと親局送信機をステレオ対応にした事例の費用は約3億円掛かっており更に全スタジオや機器をステレオ化するには追加費用として約5億円が必要と試算していた(〕。
* 普通のモノラル受信機に対して、AMステレオ受信機は値段が割高なこと〔〔日本でAMステレオ放送を開始した当時、アイワのラジカセにおけるAMステレオ対応によるコスト上昇は500円程度であったとされる。安価であった積水化学も売上不振で撤退。〕や受信するためのICチップを生産しているメーカーが少ないこと。
* AMステレオでは安定して受信できない場合があること(夜間、韓国や北朝鮮などの近隣諸国の局との混信の影響やAM受信環境全般が年々悪化傾向であること〔大手民放ラジオ13社、ネット同時放送解禁へ 日経ビジネスONLINE 2010年2月12日〕など)。
* IPサイマルラジオ「radiko」(インターネットストリーミングを利用したサイマル配信、全局ステレオ音声)が2010年に試験配信から実用化されたこと(実際にAMラジオの番組がradikoで高音質のステレオ音声で聴けるようになっている)。
* 地上デジタルラジオ〔実用化試験放送として2008年9月29日から2011年3月31日までTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送が深夜の一部時間帯を除きAMラジオのサイマル放送を行っていた。かつてはBSデジタルラジオでもAMラジオの一部サイマル放送を文化放送(BSQR489)とアール・エフ・ラジオ日本(BS日テレラジオ445)で行なっていた事例がある。〕によるAMラジオのサイマル放送の実用化が控えていること。
* FM補完中継局によるAMとのサイマル放送が実施されること。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「AMステレオ放送」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 C-QUAM 」があります。




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