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DS-ATC ( リダイレクト:自動列車制御装置 ) : ウィキペディア日本語版
自動列車制御装置[じどうれっしゃせいぎょそうち]

自動列車制御装置(じどうれっしゃせいぎょそうち、ATC : Automatic Train Control)とは、鉄道における信号保安装置の一種である。運転安全規範には「先行列車との間隔及び進路の条件に応じて、車内に列車の許容運転速度を示す信号を現示し、その信号の現示に従って、列車の速度を自動作用により低下する機能を持った装置をいう」と定義されている。
== 開発の経緯 ==

地上信号機による信号確認が困難であり、見落としの可能性がある新幹線などの高速鉄道、地下鉄、長大トンネル線区、普通鉄道での稠密線区などで使用されている信号システムである。
ATCの基本的なシステムは、以下の通り。
# 各軌道回路(閉塞区間)〔ATCの軌道回路には、軌道回路境界を絶縁する有絶縁軌道回路と軌道回路境界を絶縁しない無絶縁軌道回路の2つがある。〕においてレールに、現時点での許容速度のATC信号電流(ATC信号波の変調周波数に変調〔アナログ信号の場合はAM変調を使用。〕された搬送波の電流、ATC信号波の変調周波数と搬送波〔10 - 90Hzを使用しており、コードと呼ばれている。〕はともに低い周波数 (AF) を使用している)を流す
# その信号電流が発生する磁界(右ねじの法則)を車上側のATC受電器で連続受信(電磁誘導)する
# 受信した許容速度の信号電流が接続箱〔信号電流は加極して送られるが、架線からモーターと車輪を経由してレールに流れる電車電流が発生する磁界の電流成分は、そこで打ち消し合って送られないようになっている。〕を経由してATC受信器に送られ、その許容速度を判別する
# ATC受信器から、判別された最高速度の情報が運転台の速度計とATC制御器に送られる
# 運転台の速度計にある車内信号機に、その時点の許容運転速度を示す車内信号が表示され
# ATC制御器で、速度発電機〔速度発電機は2個を使用する。〕からの速度信号とATC受信器からの許容速度の情報が比較され
# 列車が車内信号の許容速度以上になると常用ブレーキが自動的に作動して
# 列車が車内信号の許容速度以下に戻れば常用ブレーキが自動的に解除される
日本の鉄道において、自動的にブレーキ制御を行うATCを日本で最初に採用した鉄道は、1961年に開業した帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄日比谷線である。この日比谷線で採用されたATCは、それまでに開発された新技術をベースに連続照査や機械優先制御などの多くのATCが有する特徴を有する一方で、地上信号方式、確認(ブレーキ緩解)スイッチ、最高速度制限なしなど、当時の自動列車停止装置 (ATS) の特徴を引きずる折衷仕様となった。
ATCの標準的仕様である車内信号方式等を確立したのは、1964年昭和39年)に開業した東海道新幹線である〔車内信号方式のもので、最初に普通鉄道で使用されたのは、1965年(昭和40年)に開業した名古屋市交通局の地下鉄2号線で、鉄道以外で最初に使用されたのは、1964年(昭和39年)に開業した東京モノレールである。〕。新幹線は最高速度210km/hでの営業運転を行うにあたり、高い安全性を備えた運転保安システムが要求された。高速運転中は地上に建植された信号機では確実な現認は難しく、また高速走行中に運転士が異常や錯誤に気づいて非常ブレーキをかけても、ブレーキを掛けてから完全停止するまでに走ってしまう「制動距離」は数kmとなる。当時在来線で採用されていたATSのように、速度照査は行われず信号冒進などの異常事態が発生してから動作するというバックアップ装置では、高速走行かつ安全な運行を行うためには極めて不十分なシステムであった。
以上の理由により採用された自動列車保安装置スピードシグナル〔スピードシグナルの対義語:ルートシグナル〕の概念を基本として、車内信号閉塞方式 (CS-ATC : CabSignal-ATC) による速度信号現示を行い、信号現示より高い速度で運転されている場合には、自動的に速度を信号現示以下に減速させるシステムとなった。この思想がATCの基本となっている。またATCの車上装置の受信器の受信部と制御器の速度照査部の間は3重系となっており、3重系多数決論理により制御され、列車がある許容速度を超えてブレーキが掛かる場合には、その許容速度の信号電流が受信器の3つの受信部に送られ、そこで判別されたその許容速度の信号がリレー部〔速度計にある車内信号機と現示変化ベルを作動させるとともに、その許容速度の信号を、制御器にある各許容速度の速度照査部の中から、その許容速度で速度照査を行う速度照査部の3つのチャンネルに送る制御を行う。〕を介して制御器にある速度照査部の独立した3つのチャンネル〔チャンネルでは、許容速度の信号と速度発電機からの現在の速度信号と車輪径の情報を元に速度照査を行ない、ブレーキ指令のON・OFFの判別を行う。〕に送られて、その3つのチャンネルが同じブレーキ指令を出した場合のみ〔3つのチャンネルの指令の中で、1つが違う指令を出した場合はそのチャンネルは故障と判断され、回路から切り離されるが、故障でもないチャンネルが故障として切り離される不具合が発生するため、3つのチャンネルの指令を同期(シンクロナイズ)にできるように速度照査での許容速度を若干調節できる回路を設けている。〕ブレーキが掛かるようになっている。またATCの地上装置は各軌道回路に信号電流を流す機能の他に、列車位置検知機能も兼ねており〔多段ブレーキ制御方式で列車位置検知が同期復調式の場合、軌道回路に列車がいる場合は、軌道回路のレールに流れている信号電流を、列車の輪軸がそれを短絡することで地上装置が列車を検知し、軌道回路に列車がいない場合は、信号電流をそのまま地上装置が受信して、検波されて信号周波数 (Fl) を取り出し、受信搬送波 (Fo) を変調した中間周波 (Fi) を、取り出した信号周波数 (Fl) を用いてヘテロダイン方式で中間周波から受信搬送波を取り出す(復調)ことにより、列車がいないことを検知する。また、最近のATCは、列車を検知するためだけのTD信号波を軌道回路に流し、そのレベルを検知することにより列車を検知する。〕、検知した位置情報を地上側の列車位置表示装置に送るとともに、その情報と各駅の連動装置とその他の外部条件を元に、地上装置により、列車が在線する軌道回路の後方区間に許容速度のATC信号を送信する。
運転台に現示(表示)される車内信号は、速度計の周囲に刻まれた車内信号機に速度表示を点灯させることで、列車がいる閉塞区間(軌道回路)の最高運転速度を運転士に表示する。その中で0と×の停止現示があるが、前者の方は許容信号あり、条件により停止現示を超えて列車を進行させることができるが、後者の方は絶対信号であり停止現示を超えて列車を進行させることができない。
地下鉄などに採用されたATC機能は当初、高速走行をしないため地上信号方式 (WS-ATC : WaysideSignal-ATC) が採用されたが、最近はこれらの鉄道でもCS-ATCに切り替わりつつある。またATCの軌道回路は鉄道の閉塞と同じく1つの軌道回路(閉塞区間)に1つの列車しか進入できないため、閉塞区間を識別する閉塞境界標識が線路脇に設置されており、鉄道信号機と同じく出発・場内・閉塞に分別され、さらに番号で区分して表示されている。閉塞区間での閉塞境界標識の表示は、閉塞信号機の表示と同じように、停車場の外方から第一閉塞、第二閉塞、第三閉塞…と続き、場内区間での閉塞境界標識の表示は、場内信号機の表示と同じように、停車場場内の最も遠い所から停車場に向かって第一場内、第二場内、第三場内…と続き、出発区間での閉塞境界標識の表示は、出発信号機の表示と同じように、停車場に最も近い所から外方に向かって第一出発、第二出発、第三出発…と区別されている。また、鉄道信号機のように、運転進路を表示する機能が無いため、普通鉄道においては、分岐の線路がある停車場の手前には、進路方向を表示する進路予告機、停車場の場内には、進路方向を表示する進路表示機が設置されており、その他にも、前方の信号機を視認しての予測運転ができないため、先行の閉塞区間の許容速度が現時点での許容速度より下位の場合には、軌道回路に流れる信号電流にその情報を付加して、車内信号機にその情報を予告として表示する前方制御予告情報がある。
また、モノレール新交通システムの場合は、鉄道のレールによる軌道回路が使用できないため、代わりにループ線を設けて、モノレールは軌道桁の上部または横に〔跨座式の場合では、軌道桁の上部の中に埋め込まれている。〕、新交通システムは走行路に敷設して列車を制御する。

ファイル:ATC number .JPG|停車場間の閉塞区間での閉塞境界標識(先の停車場から七番目の軌道回路を示す)
ファイル:ATC number no1.JPG|停車場の出発区間での閉塞境界標識(第一出発軌道回路を示す)
ファイル:ATC number no2.JPG|停車場の場内区間での閉塞境界標識(第五場内軌道回路を示す)
ファイル:Shinro signal .JPG|停車場の場内にある進路表示機、上にある標示板は閉塞境界標識(場内軌道回路を示す)。
ファイル:Shinro yokoku signal.JPG|停車場の場内近くにある進路予告機

車内信号の現示変化の切替え音は当初、1音のチンベル(仏具でいう(りん)やボクシングプロレスでの試合開始合図であるゴングに似た音)であったが、近年の車両では電子音で「ピンポーン」という音が流れるタイプも存在する。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「自動列車制御装置」の詳細全文を読む




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