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H3+ ( リダイレクト:プロトン化水素分子 ) : ウィキペディア日本語版
プロトン化水素分子[ぷろとんかすいそぶんし]

プロトン化水素分子(プロトンかすいそぶんし、)、H3+水素原子核3個と電子2個からなる+1の電荷を持ったカチオンである。星間空間水素ガスの放電中に、多量に存在する。星間空間は密度の比較的大きなところでも、地球上に比べて低圧(およそ10−15気圧以下)であり、他の分子との衝突頻度が少ないことからこのような反応性の高いイオンでもある程度の量が存在することができる。星間空間ではこの分子が他の多くの分子生成にとって出発分子であり、星間空間の化学において最も重要な役割を担っているといえる。また、H3+ は分子中にある2つの電子が共に価電子であり、最も単純な三原子カチオンでもある。
== 歴史 ==

H3+ は1911年、ジョゼフ・ジョン・トムソンによって最初に発見された〔Thomson, J. J. (1911). "Rays of Positive Electricity". ''Philosophical Magazine'' 21: 225.〕。水素ガス放電中の、H+ でも H2+ でもない奇妙なイオンは、簡便な質量分析の結果より、その質量と電荷の比 (''m''/''e'') が水素陽イオンの3倍であるとわかった。トムソンは論文の中でこのイオンの可能性として H3+12C4+ を挙げたが、放電ガスが純粋な水素であるほどイオン信号が強いことから、H3+ であると結論づけた。
放電管中の生成過程は1925年にホグネス (T. R. Hogness) とラン (E.G. Lunn) によって示された〔Hogness, T. R.; Lunn, E. G. (1925). "The Ionization of Hydrogen by Electron Impact as Interpreted by Positive Ray Analysis". ''Physical Review'' 26: 44. DOI: 10.1103/PhysRev.26.44 〕。実験はトムソンと同様に簡便な質量分析を用いて行なわれ、水素ガスの圧力増加に対し、H3+ が直線的に増加すること、反対に H2+ が直線的に減少することが報告された。この実験結果は、H2+ が初めに発生し、その H2+ と H2 から H3+ が生成するということを示している。また、1935年にコールソンは H3+ は正三角形構造を持つと理論的に予測した。
1961年にマーチン (D. W. Martin) らは H3+ 生成反応が発熱反応であり、星間空間には水素分子が大量にあることを理由として、このイオンが星間空間中に存在することを予測した〔 Martin, D. W.; McDaniel, E. W.; Meeks, M. L. (1961). "On the Possible Occurrence of H3+ in Interstellar Space". ''Astrophysical Journal'' 134: 1012.〕。この予測をうけて1973年にワトソン (W. D. Watson) ら〔Watson, W. D. (1973). "The Rate of Formation of Interstellar Molecules by Ion-Molecule Reactions". ''The Astrophyscal Journal Letters'' 183: L17.〕 、およびハープスト (E. Herbst) とクレンペラー (W. Klemperer) ら〔Herbst, E.; Klemperer, W. (1973). "The Formation and Depletion of Molecules in Dense Interstellar Clouds". ''The Astrophyscal Journal'' 185: 505.〕の2つのグループから、H3+ の生成を仮定することによって、当時観測されていた他の多くの分子の生成が説明できると示された。
トムソンの発見から約70年経た1980年にようやく、実験室での H3+ の分光学的な観測が岡武史によって行なわれた〔Oka, T. (1980). "Observation of the Infrared Spectrum of H3+". ''Physical Review Letters'' 45: 531.〕。この観測により、H3+が正三角形構造であることが実験的に確認された。
実験室で得られた、正確な ν2 振動遷移の周波数データーをもとに、赤外線天文観測が行なわれた。まず、1989年から1990年代前半にかけて木星〔Drossart, P. et al. (1989). "Detection of H3+ on Jupiter ". ''Nature'' 340: 539.〕、土星〔Geballe, T. R. et al. (1993). "Detection of H3+ Infrared Emission Lines in Saturn". ''Astrophysical Journal'' 408: L109.〕、天王星〔Trafton, L. M. et al. (1993). "Detection of H3+ from Uranus". ''The Astrophyscal Journal'' 405: 761.〕の上層大気からの H3+ の赤外線発光が観測された。その後、1996年に2つの暗黒星雲(AFGL2136 と W33A)で H3+ の赤外線吸収が観測され〔Geballe, T. R.; Oka, T. (1996). "Detection of H3+ in Interstellar Space". ''Nature'' 384: 334.〕、ついに星間空間中での H3+ の存在が確認された。さらに1998年には、それまで観測が期待されていなかった希薄な星間ガス雲 Cyg OB2 No. 12 においても発見された〔McCall, B. J. et al. (1998). "Detection of H3+ in the Diffuse Interstellar Meduim Toward Cygnus OB2 No. 12". ''Science'' 279: 1910. .〕。
分光検出の後、実験室では、H3+ の化学反応についての研究がさかんに行われた。特にH3+と電子の再結合反応について多くの議論がなされた〔Oka, T. (2003). "Help!!! Theory for H3+ recombination badly needed". In Guberman, S. L. ''Dissociative Recombination of Molecular Ions with Electrons''. New York: Kluwer Academic/Plenum Publishers. pp. 209–220.〕〔.〕。また、1990年代の後半には H3+核スピン異性体の比を追うことで、化学反応における核スピン保存則の実験的検証がなされた〔Uy, D.; Cordonnier, M.; Oka, T. (1997). "Observation of Ortho-Para H3+ Selection Rules in Plasma Chemistry". ''Physical Review Letters'' 78: 3844.〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Trihydrogen cation 」があります。




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