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NAPS(ナップス)とは、1970年代に日産自動車が自社の自動車用ガソリンエンジンを、マスキー法を始めとする自動車排出ガス規制に適合する為に開発したエンジン制御技術の総称である。 == 概要 == NAPSはNissan Anti Pollution System(日産公害防止システム)のアクロニムで、日産が排ガス規制をクリアした自動車やエンジンその物に名付けた名称でもある。米国市場では略称の関係から日産・Z型エンジン〔Z型は海外でもNAPS-Zというペットネームが与えられていたのに対して、一般的なNAPSは海外市場向けの整備解説書では単にエミッション・コントロールと呼ばれていたのみであった。また、NAPS-Z自体も海外では4文字目のSystemを省略し、NAPZと呼称している場合も多い。〕と混同される場合もある。 NAPSは1975年4月1日に最初のプレスリリース〔Datsun1200 Club - Tech Wiki - NAPS - 32-page publicity booklet from 1 April 1975〕が発表され、同月マイナーチェンジの日産・プレジデントのY44E型V型8気筒エンジンを皮切りに、同年中に日産・L型エンジンと日産・A型エンジンへと実装が拡大されていった。その一方で、プリンス・G型エンジンや日産・S20型エンジンのように、NAPSに対応しないまま消えていったエンジンも存在した。 1980年代初頭まで、NAPS仕様のエンジンを搭載された車輌には、車種毎に設定されたNAPSのエンブレム(オーナメント)がトランクリッドに貼付されていた為、NAPS導入以前の車輌との識別が消費者にも容易に行えた。 環境技術開発で先発した他社が二次空気導入装置(サーマルリアクター)〔マツダのREAPS(Rotary Engine Anti Pollution System)、スバルのSEEC-T (Subaru Exhaust Emission Control - Thermal )など〕や、希薄燃焼方式〔ホンダのCVCC、トヨタのTTC、三菱のMCA-JETなど〕を採用していたのに対して、やや遅れて技術開発に参加した日産のNAPSは、基幹技術として触媒方式を採用した事が特徴〔Datsun1200 Club - Tech Wiki - NAPS -1975 advertisement〕〔同時期、いすゞのI-CAS (Isuzu-Clean Air Solutions) やダイハツのDECS-C等も同様の方式を採用している。〕であった。 正確には単一の触媒のみに頼るのではなく、CO・HCを浄化する酸化触媒を基軸に、 * NOxを低減するEGR * 暖機時間の短縮化を目的としたオートチョーク付きキャブレター、加熱強化式(ヒートライザー)インテークマニホールド、吸入空気温度調整機構(ウォームエアインテーク)の装備による、''エンジンの改良'' * 上級グレードにおいては電子制御式燃料噴射装置(ニッサン・EGI)への移行 * CO、HCの反応促進の為の二次空気導入装置(AIS) * ガソリン蒸散防止のチャコールキャニスター 等を複合的に組み合わせたシステムであり〔、主要機構を全て組み込んだエンジンはマスキー法にほぼ準拠した昭和50年排出ガス規制(識別記号A / H)や昭和51年排出ガス規制(識別記号B / C)に適合、1978年には改良が進められた酸化触媒の装備により昭和から平成に掛けてのガソリンエンジン向けの主要な排ガス規制であった昭和53年排出ガス規制(識別記号E)にも適合した。しかし、それ以前の昭和48年排出ガス規制適合車輌においては、必ずしもこれらの機構が全て実装された車輌ばかりでもなく、この一部のみの装着でNAPSエンブレムが装着された車輌も散見された〔西の風晴れ - 変なもの写真館単発ネタコーナー - 第15回「NAPSサニーバン」〕。 なお、日産はプレジデントでのテストを踏まえ、公称では「馬力は従来と同じで、燃費も1%程度しか低下しない」事を謳い文句としていた〔。 NAPSは後に電子制御式キャブレター(日産・ECC / Electronic-Conetrated-Carburetor)や、燃料噴射量のみならず点火時期制御も内包したエンジンコントロールユニット(日産・ECCS / Electronic-Conetrated-Engine-Control-System)、ツインプラグによる急速燃焼方式(NAPS-Z / NAPS-X)等の新技術が導入されていったが、O2センサーのフィードバック制御の精度向上と、排気抵抗の少ない高効率の三元触媒による排ガス浄化技術が進歩した1980年代以降は、NAPSの搭載を大々的に謳う事は少なくなっていった。但し、その後もNAPSの名称自体は日産製エンジンの排ガス対策機構を総称するものとして残り続けており、日産・VGエンジンの整備要領書などにも記載が行われている〔1-5 NAPS仕様一覧表(E-Y30型系車) 〕。 三元触媒の技術進歩はは性能回復の面でも強みとなった。EGRを基軸とした初期のNAPSを含め、それまでの希薄燃焼や酸化触媒、サーマルリアクターなどの諸方式は空燃比を理論空燃比から敢えて外す必要がある為、燃費の悪化や「牙を抜かれた」とも形容される性能の低下を招いたが、理論空燃比14.7で最大の浄化効率を発揮する三元触媒は性能の低下が無い為、日産は1979年より三元触媒と合わせてターボチャージャーを導入し、市場にターボ旋風を巻き起こした〔排出ガス規制と低減技術の話(その5 ガソリンエンジンの場合:マスキー法以降)副館長 成田年秀 - 赤レンガ通信 Vol.79 ] - 産業技術記念館〕。同時期にDOHCの導入で日産と対抗していたトヨタが自社製エンジンにLASREの愛称を付ける販促活動を1980年頃から実行し、成果を挙げていた事に対抗して、日産も1981年のE13型エンジンより「パワフル&エコノミック(出力と経済性の両立)・ライトウエイト(軽量)・アキュレイト(精密)・サイレント(静粛)・マイティ(力強い)・アドバンスド(先進的)・エンジン」を意味するPLASMA(Powerful&Econonomic Lightweight Accurate Silent Mighty Advanced)の愛称を付ける販促活動を開始。後にCA型、FJ型、RB型、VG型にもこの愛称が拡大、最終的には1.0Lから3.0Lまで全てのガソリンエンジンに採用される状況となり〔PLASMA - Z31club 〕、これらのエンジンを搭載した車両の多くがスポーティカーとして市場に受け入れられた事から、排ガス規制期に低下した日産のスポーツイメージの回復に寄与する事となった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「NAPS」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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