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燃料噴射装置(ねんりょうふんしゃそうち、)はガソリンエンジンなどの予混合燃焼機関において、液体の燃料を吸入空気に霧状に噴射する装置である。 == 概要 == 燃料噴射装置は燃料に圧力をかけて噴射するため、絞り部(ベンチュリ)に生じる負圧で燃料を霧化するキャブレターと比較すると、温度や湿度、気圧といった環境条件に左右されずに霧化を制御しやすく、絞り部に起因する吸気抵抗が生じないためエンジンのポンピングロスを低減できる。また、キャブレターよりもレイアウトの自由度が高く、吸気バルブの直近で吐出できる。こうした理由から第二次世界大戦前からレシプロエンジンを搭載した航空機で採用が始まり、戦後から自動車用途に普及が広まり、キャブレターに置き換わって主流の方式となった。一方で、作動には電気が必要で、構造が複雑、精密であることから、可搬形作業機械のエンジンなどでは採用されていない。 第二次世界大戦前にはドイツ空軍の航空機エンジン用として盛んに用いられた。特に、戦闘機は高い機動性が要求されたことから安定した燃料供給が必要不可欠であり、燃料噴射装置はキャブレターよりも有用であった。メッサーシュミット Bf109は、他国の戦闘機がキャブレターを搭載していた当時に燃料噴射装置を採用し、マイナスGにでも燃料供給が途切れず背面飛行で優位に立った。日本やイタリアでもライセンス生産され、燃料噴射装置は三菱重工業が開発・製造した航空機用エンジン、火星の後期型や金星の末期型に採用された。 自動車への適用は1954年に発表されたメルセデス・ベンツ・300SLが最初であり、同時に自動車用としては世界初のガソリン直噴エンジンでもあった。コンピュータ技術の発達に伴い、燃料噴射装置はエンジンコントロールユニット(ECU)により制御されるようになり、噴射量をエンジンの負荷や回転速度といった運転状況に応じてきめ細かく変化させられるようになった。これによりエンジン出力の向上と燃費の改善だけでなく、排出ガスに含まれる有害成分を低減することが可能となった。 民間用航空機では電子制御式燃料噴射装置の採用は、電子制御の信頼性が確立されていないなどの理由で自動車用に比べるとやや遅かったが、1990年代以降はほぼ全面的に置き換わった。高度により大気圧(空気密度)が変化する航空機では混合比コントロール操作が操縦者の負担であったが、電子制御により自動化が容易となった。 オートバイでは1980年代に本田技研工業が電子制御の燃料噴射装置付きエンジンを実用化し、日本国内の市販車では1982年に川崎重工業のZ750GP(Z750V1)に初めて採用された。2003年10月3日に本田技研工業により原動機付自転車用の49cc4サイクルエンジンに燃料噴射装置を採用した。2004年10月にスズキが燃料を重力落下式とし、燃料ポンプと噴射ノズルを一体化し(ディスチャージポンプ式)、49cc4サイクル原動機付自転車のレッツ4に採用した。この方式により燃料ポンプと高圧に耐える燃料パイプが不要となり、コストを低減させるとともに機構の信頼性を確保した。オートバイ用として燃料噴射装置が普及するようになると、スロットル開度にたいするエンジン出力の上昇が急速となる燃料噴射装置の特性を緩和する方策をとる車種も搭乗した。1つの吸気経路に2つのバタフライバルブを直列に設け、一方をアクセルワイヤーで動作させ、もう一方はECUで制御されたアクチュエーターモーターで動作させる機構で、ECUで制御されるバルブは運転手の操作に対するスロットル開度の応答を抑える働きをする〔。ツインバルブとも呼ばれ、排気量が比較的大きな車種に採用されている。 2サイクルエンジンでは、船外機やスノーモービルで採用されている。1990年代にホンダがレース用バイクのNSR500に採用したが、2サイクルの市販車に採用されることはなかった。コロラド州立大学の支援を受けて非営利企業のEnviroFitは東南アジアにおける大気汚染を減らすため、オービタル社の開発した技術を基に2ストローク自動二輪向けの改造キットを開発した。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「燃料噴射装置」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Fuel injection 」があります。 スポンサード リンク
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