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『RARITIES』(レアリティーズ)は、2002年10月30日に発売された山下達郎通算3作目のベスト・アルバム。 == 解説 == ベスト・アルバムとしては『TREASURES』以来7年ぶり、アルバム・リリースとしては『ON THE STREET CORNER 3』から3年ぶりのリリース。 山下は2002年3月から5月末まで短期移籍状態でコンサート・ツアー『PERFORMANCE 2002 RCA ⁄ AIR YEARS SPECIAL』を行い、6月中旬ごろからニュー・アルバムのレコーディングを始めていた。ところが7月に、ワーナーから事業計画が提示され、新譜は無理としても、秋に何か作品を出してもらえないか、との要請を受ける。新作は年内には出ないから、新作までのつなぎになるし、前からB面コレクションのようなアルバムをどこかでやれれば、と思っていた、と制作に取り掛かる。 ソロ・デビュー以来、ずっとアルバム主体の活動を続けてきた山下にとって、シングル作品はあくまでアルバムの前哨戦あるいは補填であり、全ての作品は最終的にはアルバムに収録するために作られている。しかし、これまでのレコーディング・キャリアの中で、様々な理由からアルバムに収録されない状態が続いてきた作品も多く出てきてしまった。とりわけシングルのカップリング曲として発表された作品の多くがアルバム化されず、シングルの廃盤等の理由で聴くことが困難な状態になっていた。また、それとは別に、アルバム制作の過程でレコーディングされ、あるものはミックス・ダウンまで終えながら、結局未発表のままの作品もいくつか存在していた。本作にはそうした、まだアルバム化されていないレアな音源がまとめている。ただ、古い作品ばかりにならないように、このアルバム・リリース以前の数年間にシングルでのみ発表されていた、次回作に収録予定だった作品も前倒しで収録された。シングルのみの新曲、既発シングルのカップリング曲、未発表セルフ・カヴァー、未発表洋楽カヴァーといった作品に「スプリンクラー」のロング・ヴァージョンも加え、これでスタジオ・レコーディングとして発表されたものがほぼ全てアルバム化された。当初はカップリング曲としてリリースされてきたライブ・ヴァージョンも収録を予定していたが、収録時間の都合で以前からCD化の要望が多かったという「潮騒」以外は収録が見送られた。それらは後にアルバム『Ray Of Hope』〔『Ray Of Hope』 2011年8月10日発売 MOON ⁄ WARNER MUSIC JAPAN 2CD:WPCL-10964/5〕初回盤にセットのボーナスCD『Joy 1.5』にリマスタリングにて収録された。山下は「スケジュールがタイトだったから、最初は昔のは聴かない様にしようとしてたんですよ。聴くともう一度やり直したくなっちゃうタチなんで。でも、聴いちゃったんです。で、全部で15曲入ってますけど、9曲はどこかしら変わってるからね。リミックスはもちろんだけど、極端なのは<TO WAIT FOR LOVE>なんかも未発表だけど全てやり直したので新録音になるね。後は楽器を差し替えてリミックスとか歌のバランスが小さかったのでカラオケを引っ張ってきて元の歌を足したりとか。だから、手を加えるべきところは全てやったって感じです。手を加えてないのは、それで良しとするものですね」〔新星堂フリーペーパー「pause」2002年11月号 pp.2-7〕という。今回の作品が1か月半というで作業期間で出来た理由については自身のレコーディング・スタジオ“プラネット・キングダム”の環境の変化が影響しているとし、「卓を変えたんです。SSLの最新の卓なんだけど。これを入れてからは作業が早いのなんのって。嘘みたいにペースが速くなったの。このスタジオには今まで家一軒建つくらいつぎ込んでるんです、ほとんどは自前でね。で、この卓が入って今までかけた投資が全てプラスに向かった。それまでは“ちょっと音が硬いな?”とか、いくつか問題があったんだけど、それも雲散霧消したし」〔という。 アルバム・タイトルは言葉の簡潔さやレア音源好きな自身の趣味、キャラクターを踏まえてつけられたが、未アルバム化音源コレクションである今回の企画は決して余りモノや懐メロ集もなく、かと言って完全な新譜でもないという位置づけであるが、後ろ向きなアイテムと誤解されないよう関係各方面に気を遣う必要があり、大変だったという〔ファンクラブ会報誌『TATSURO MANIA』No.43 2002 Autumn 『RARITIES』特集〕。当初、レコード会社が提示した仮タイトルは「レアタツ」だったが、「この年齢でそのタイトルは勘弁してくれ」という山下の意向でこのタイトルに落ち着き、「レアタツ」はキャッチ・コピーとして使われた。これらのプロモーションによって発売前から関心が集まり、お台場では記念イベントも行われた。 初回盤のみ「オリジナル・カラオケ・スペシャルCD」付、DUOケース仕様。カラオケ収録曲の選曲について山下は「カラオケって作ってこなかったんです。BMG時代なんて<RIDE ON TIME>しかないし。今は独立したメディアとして認知があるけど、昔はテレビに出て歌う人か、アイドル歌手のオーディションで借りにきたりするくらいで。僕のカラオケなんで借りに来る人はいないし。作ったって仕方ないと。ようやく初めて作ったのが<GET BACK IN LOVE>です。<風の回廊>なんてミックスダウンの時にギターを弾きながらやっちゃったので、カラオケが無いという。それで、<世界の果てまで>から付けるようになったからそれ以前のシングル曲でカラオケを出していない曲を入れてみた。<パレード>なんてナイアガラから借りてきたオリジナル・カラオケで、本邦完全初公開です」〔という。 本作がベスト・アルバムというだけでなく、普遍性と時代性を併せ持った作品になったことについては「作り終えたものは過去のものだと、作り出した音楽を、まるで自己排泄のように語る、しかも得意気に言う人もいるじゃないですか。そういう人は、物を作るということに執着していなくて羨ましいですけど、だけど僕の場合はまったく逆で、自分の作品を買って聴いてくれる、第三者に対する表現行為だという意識を、強く持っているので、自分のカタログに対して、とても愛着と責任を感じているんです。自分の作品に執着するのは後ろ向きだ、などという人もいますが、大きなお世話でね。継続的に発売されているカタログというものは、経年変化が起こってしまい、どこかでリニューアルさせないと駄目なんですよね。それに今回の作品のように、シングル作品というのは廃盤になっていきますから、そのままにしてしまうと、世の中から消えてしまうことになる。そういったことへの問題提起と、皆さんに聴いていただくために、自分で必死に保全しているんです」〔タワーレコードフリーペーパー「TOWER」OCTOBER 20th NO.133 2002年11月20日号 pp.1-3〕と答えている。 ジャケット・デザインについて、山下は「ジャケットはジョージ・ベンソンのヴァーヴ時代の『グッディーズ』っていうアルバムがあって、段ボールのジャケにいろんな可愛いグッズが入っているの。今回のようなカタログってオールディーズっぽくなるんで、レトロ風味は嫌だったので、カルトだけどポップなものにしてくれとデザイナーに頼んで。これだと新譜のジャケとしても成立するけど、ちょっと懐かしい感じもするでしょ」〔と語っている。ジャケット写真に使われたグッズ類は、いずれも新規に制作されたカスタムメイドで、デザインや配置も全て山下の意向に沿ったものとなっている。ただ、キューピー人形はローズ・オニール財団の要請で既成品を使用、また缶バッジは後日、ファンクラブ通販やライブ会場で実際に販売された。ジャケット裏面のモノクロ写真はスタジオ撮影でカメラマンは伊島薫。見えない部分にはダミーが使われているが、ショッピングカートの中に入っているムーン・レーベルのアナログ・シングル盤は全て本物だという〔ファンクラブ会報誌『TATSURO MANIA』No.44 2002 Winter インタビュー〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「RARITIES」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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