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SOSUS(ソーサス、Sound Surveillance System)とは、アメリカ海軍及びイギリス海軍により海底に設置されたソナー監視ラインである。旧ソ連海軍も水中固定捜索局を展開していたが、財政悪化により施設が老朽化し、探知センサーが、他国の沿岸に打ち揚げられたケースもある。 2010年代日米による太平洋におけるSOSUSの運用がマスメディアに取り上げられるようになる〔。中国海軍も同様の設備の充実に力を注いでおり、「水下的強網系統」と称するものが南シナ海、東シナ海、黄海に展開されつつある。 == 概要 == 1950年、アメリカ海軍では、脅威を増し続けるソ連潜水艦の探知手段の研究として、ペンシルベニア大学のG.P.ハートウェル博士を長官に選任し、ハートウェル委員会を設立した。ハートウェル委員会は、全世界規模での水中敷設方式の聴音システム監視網の設置を提唱し、同年11月ウェスタンエレクトリック社に試作品の開発を指示した。試作品のSOSUSはバハマのエルーセラ島にあるアメリカ海軍基地内に極秘に設置された。エルーセラ島の陸上施設からは、6本の海底ケーブルが延びており、ケーブルにはパッシブソナーが組み込まれていた。このプロジェクトにはベル研究所とコロンビア大学も共同参加し、水中音響理論の解明に貢献している。SOSUSは陸上基地とソナーを内蔵した海底ケーブル群から構成されており、水中音響的に最適な位置で敷設される。その多くは大陸棚縁辺部と海底山脈の尾根の部分に設置されている。この方式によって通常の外航船であれば数百kmでの探知が可能である。陸上局舎はNAVFACsと呼ばれ、存在そのものが極秘とされた。そのため、海軍内においても機密保持のレベルが高く、アメリカ海軍情報局の職員が装置の運用を行なっていると言われる。 1952年、SOSUSは研究段階から実用段階に移行し、最高機密であるSOSUS敷設作業が開始された。まず最初に敷設作業が開始されたのは、グリーンランドとスカンジナビア半島の間のGIUKギャップ海域であり、ソビエトのムルマンスク海軍基地から出港するソ連潜水艦を探知するよう計画されている。プロジェクトシーザーと呼ばれるこの計画は、アメリカ海軍とイギリス海軍により実行され、SOSUSが敷設された海域はソーサスバリアと呼ばれた。また、SOSUSではカバーできない海域(たとえば浅深度海域などの底曳き網漁船が頻繁に操業する海域)や、陸上局舎が使用不能な場合のバックアップとして、潜水艦の探知をより確実なものとするために、SUR-TASS(サータス:サーベイランス トウドアレイソーナー)を搭載する音響測定艦を建造した。 1961年、SOSUSはその実用段階から実戦に耐える段階に移行し、アメリカからイギリスに航行したUSSジョージ・ワシントン級原子力潜水艦ジョージ・ワシントンの継続追尾に成功した。さらに同年にはキューバ危機が生起するが、キューバ周辺の海域において行動するソ連海軍フォックストロット級潜水艦の動静の監視に貢献した。ソ連潜水艦は年々静粛化を図ったが、SOSUSもそれに対応して能力向上を遂げている。SOSUSの陸上局舎も徐々に数を増加していき、アメリカの東西海岸域、バミューダ島、アイスランドのケフラヴィーク、アンティアグア、バルバドス、イギリスのブローディー、プエルトリコ、ニューファンドランド島などに存在している。 SOSUSは70年代から80年代にかけて、合理化が図られ、陸上局舎の数を減らしつつ1つの局舎で複数の施設を遠隔制御できるよう改善された。しかし1980年代の冷戦の終結により、その存在意義は大きく変化するようになった。SOSUSを学術的な研究資源として利用することが始まり、クジラの発声を始めとして、海底火山の同時噴火現象「メガプルーム」や乱泥流といった海中の謎の解明に寄与している。近年の海洋研究の一つに、広い大洋の海水温を同時に計測し、温度分布の全体像を把握することが求められている。そこで、海洋音響トモグラフィーと連係し、低周波音の拡散状態をSOSUSで捕捉して、海水温の広域的かつ立体的な観測技術が研究されている。SOSUSは1991年に公式に機密扱いを解除されたが、冷戦期間には長期に亘り存在そのものが公然の秘密であった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「SOSUS」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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