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β1,3-グルカン(β-glucan、べーた-)とは、グルコースがβ1-3型の結合で連なった多糖である。植物や菌類、細菌など自然界に広く分布するが、アガリクスやメシマコブ、霊芝などのβグルカンは強い免疫賦活作用、制癌作用を持つとして特に注目が集まっている。β1,4-グルカンが由来に関係なく全てセルロースという名前を持つのに対し、β1,3-グルカンは由来によって様々な名前が与えられている。また、単にβグルカンと言った時には通常β1,3-グルカンのことを指す。 == 酵母ベータ1,3Dグルカン == 最も一般的に採り上げられているベータグルカン(ベータ1,3Dグルカン)の母体はsaccharomyces cerevisiae等の(一方でパン酵母やビール酵母等長い歴史の中で食菌として親しまれているものもあるが)、本来免疫細胞が敵(非宿主)と認識する「菌」であるといわれる。多くの実験研究はベータ1,3Dグルカンの免疫刺激を基本的な機序とした非宿主細胞に対する抵抗を主題としているようである。西暦2008年6月までに発表されている研究報告に限って言えば、宿主細胞のマクロファージがベータ1,3Dグルカン断片をより細分化して好中球に伝達し、それを受けて刺激された好中球が変異細胞(新生物、腫瘍細胞、癌細胞などと呼ばれる宿主細胞が変異したもの)に対する攻撃力を増加させるという作用機序を観察したものもある(Journal of Immunology 2005,174:7050-7056 , The Journal of Immunology 2006,177:1661-1669 *発表論文は英語故ここでは表題の掲載は避ける)。しかしながらβ1,3Dグルカンなる物質でなぜ好中球が刺激されるのか、その刺激がなぜ非宿主細胞に対する攻撃力を増加させるのかいう点で今ひとつの検証が必用となる研究発表ではある。 このときから約66年前の1940年代初頭(1941年とされる)、米国の研究者であるルイス・ピレマー(Louis Pillemer, 1908-1957)が研究対象としていた酵母サッカロマイセス・セレビシアエ細胞壁の抽出物(高分子炭水化物画片)が現在のベータグルカン(ベータ1,3Dグルカン)の始祖といえるのではなかろうか。この物質は1943年に【ザイモサン(ZYMOSAN)】という名称でウェブスター辞典にも名を連ね、後の研究者が改良を重ねて現在のβグルカン研究に至っているのではなかろうか。ルイス・ピレマーに関するはっきりした記録は残っていないようであるが、彼の研究対象であった酵母細胞壁高分子炭水化物画片は1960年代に入り米国ツーレン大学(Tulane University)の研究者ニコラス・ディルジオ(Nicholas DiLuzio, 1926-1986)を中心とする研究陣によって更に明確化、この研究陣の手で高分子炭水化物画片中の主構成物ベータ1,3Dグルカン【(1-->3)(1-->6)-D-Beta Glucan】が特定され、世界各地の研究者に引き継がれていったと予想される。 酵母β1,3Dグルカンは西暦2008年6月現在世界で約9,000例の動物実験やヒトによる治験報告例が記録されている(その時点での米国医学図書館文献検索サイトによる)。その殆どは酵母β1,3Dグルカン画片が白血球細胞中のマクロファージや好中球などの自然免疫細胞に結合されて(貪食されて)それら自然免疫を刺激し、ウイルスや菌等の外敵あるいは変異した宿主細胞(新生物、腫瘍細胞などとも呼ばれる)に対する免疫抵抗力が強化される、というものであろう。一方で酵母βグルカンは自然免疫を特異的に刺激することによって過剰あるいは不要な免疫抵抗を起こすのではないか、との疑問も呈されてきたようだ。例えば酵母由来β1,3Dグルカンは宿主免疫細胞を刺激することによって組織移植で起こる宿主細胞の拒絶反応を促進(増大)するのではないか、といったような疑問である。1996年に米国外科医療誌of Surgical Research 62(2)で発表されたW.K.Washbum博士等のマウス実験論文(論文表題は日本語で「白血球特異性免疫刺激剤のβグルカンは組織移植のGVHD( *)や拒絶反応を促進しない」)はこうした疑問を払拭し、酵母β1,3Dグルカンを投与してもドナー組織移植による拒絶反応を促進しないという実証を試みたものであろう( *GVHD=移植片対宿主病変)。 ベータ1,3Dグルカンは高分子の糖質【Saccharides】で、それ自体には抗腫瘍作用や抗酸化作用などの薬理作用は無いといわれている。一方でベータ1,3Dグルカンが生体内に入ると免疫細胞に働きかけて悪性新生物(ガン細胞)を攻撃させたり、抗酸化酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、SODに代表される)に働きかけて遊離基(生体に悪影響を及ぼすいわゆる活性酸素、フリーラジカル)消去効果を高めたりするという前医療統計学的実験論文も公表されている(上記細胞レベルでの抗腫瘍実験・治験報告および、活性酸素除去様作用については2006年にA. Pietrzycka博士等の研究陣がActa Pol Pharm誌63号で発表した実験論文等が該当するであろう)。一方、2007年にJournal of Agricultural Food Chemistry誌 55(12):4710-6でS.C. Jaehrig博士、S. Rohn博士らによって発表された酵母細胞壁画分の実験では、抗酸化作用はベータグルカンそのものよりも酵母細胞壁蛋白によるものが大きいと結論付けている。酵母ベータ1,3Dグルカンの持つ抗酸化作用・機序については前述の通り2008年6月末現在では未解明な部分が多い。これまでの研究結果の多くは、酵母細胞壁から抽出されたベータ1,3Dグルカン複合画分は免疫細胞や抗酸化酵素など生体に備わった機能に働きかけて宿主を存続させる役割を果たすという検証の試みと思われる。今後は【ベータ1,3Dグルカンが生体機能に働きかける】という間接的作用・機序だけでなく、ベータ1,3Dグルカンという物質自体の一層の特定と、その持つ物理・化学的作用の解明および安全性検証の積み重ねが期待されるであろう。 "ZYMOSAN"(日本語の発音では「ザイモサン」)というのも名詞であり、この名詞が1943年に登録された米国のある百科事典によれば"a largely polysaccharide fraction of yeast cell wall"とある。「酵母細胞壁の大きな多糖片」とでも訳せようか。1940年代初頭に命名されたものであるが、酵母細胞壁の多糖片という由来から見て(精製、未精製という違いはあるように思われるが)β1,3Dグルカンの前身と思われる 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「Β1,3-グルカン」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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