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Ω-3脂肪酸 : ミニ英和和英辞書
Ω-3脂肪酸[さん]
=====================================
〔語彙分解〕的な部分一致の検索結果は以下の通りです。

: [あぶら, やに]
 【名詞】 1. nicotine 2. resin 3. sleep in one's eyes (eye mucus)
脂肪 : [しぼう]
 【名詞】 1. fat 2. grease 3. blubber 
: [さん]
 【名詞】 1. acid 

Ω-3脂肪酸 ( リダイレクト:ω-3脂肪酸(おめが-さん しぼうさん、ω-3 fatty acid、ω3とも表記、オメガ-スリー、Omega-3)または、n-3脂肪酸(n−3 fatty acid)は、不飽和脂肪酸の分類の一つで、一般にω-3位に炭素-炭素二重結合を持つものを指す。== 概要 ==植物及び微生物中では、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合を一個増やしてリノール酸を生成することができる。さらに植物及び微生物中では、ω3位に二重結合を作るΔ15-脂肪酸デサチュラーゼ によりリノール酸の二重結合を一個増やしてα-リノレン酸を生成することができるI章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは? 『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』。ヒトを含む動物は、ステアリン酸からオレイン酸を生成するΔ9-脂肪酸デサチュラーゼを有してはいるものの、Δ12-脂肪酸デサチュラーゼもΔ15-脂肪酸デサチュラーゼもどちらも有していないので、リノール酸もα-リノレン酸もどちらも自ら合成することができない。このためω-3脂肪酸は、ω-6脂肪酸とともに必須脂肪酸となっている。ω-3脂肪酸の欠乏により学習能、視力の低下をきたすことが報告されている前田隆子、高山美佐子ほか「妊産婦の血清中脂肪酸と母乳中脂肪酸組成に関する研究-とくに、エイコサペンタエン酸に関する検討 」『鳥取大学医療技術短期大学部紀要』25巻,1996,pp15-24。。栄養学的に必須なω-3脂肪酸は、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。ヒトを含めた動物の体内ではΔ6-脂肪酸デサチュラーゼにより18:3(n-3)のα-リノレン酸(ALA)のΔ6の位置に不飽和結合を作り炭素2個伸張して20:4(n-3)のエイコサテトラエン酸を生成し、Δ5-脂肪酸デサチュラーゼにより不飽和結合を増やして20:5(n-3)のエイコサペンタエン酸(EPA)を生成し、このエイコサペンタエン酸から22:5(n-3)のドコサペンタエン酸(DPA)を経るかSprecher's shuntと呼ばれる経路いずれかを経て22:6(n-3)のドコサヘキサエン酸(DHA)が生成される(詳細はデサチュラーゼを参照のこと。)。このようにヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である岡田斉、萩谷久美子、石原俊一ほか「Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討--最近の研究動向のレビューを中心に」『人間科学研究』(30),2008,pp87-96. 。細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、リン脂質を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。例えばDHAは不飽和度が極めて高く細胞膜の流動性の保持に寄与している。例えば、赤血球について、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は赤血球膜を硬直化し栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。54-55頁、逆に魚に多いω-3脂肪酸は赤血球膜を柔軟化する栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。38頁68頁。神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている浜崎智仁「13:00 ~13:40脂質と精神 」金城学院大学/日本脂質栄養学会共催シンポジウムの抄録 6章p10『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』。DHAは精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は血中の中性脂肪(トリグリセライド)量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある 。アルツハイマー型痴呆やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。ω-3不飽和脂肪酸の多い魚及びω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの肝がん発生リスクは低くなっているStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。魚を食べても大腸癌のリスクは下がらないStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。ただし、魚由来のω-3脂肪酸及びトータルのω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸癌リスクは低くなる。ω-6脂肪酸およびω-3/ω-6比は大腸癌のリスクと関連がみられないStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。魚を多く食べるグループで虚血性心疾患のリスクが低下するStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)との研究が有る一方、血中のω3脂肪酸濃度と脳血管疾患発生の関係を調べた観察研究と、ω3脂肪酸サプリの使用と脳血管疾患の関係を調べた無作為化試験においては、有意な関係は見られなかったとする報告がある魚の摂取による脳血管リスク低下はω3脂肪酸に由来しない 日経メディカルオンライン 記事:2012.11.16。全体としては、魚及びω-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量と自殺リスクとは関連はない。ただし、女性では魚の摂取量が非常に少ない人で自殺のリスクが上昇する。男性の非飲酒者では、EPA・DHAの摂取量が最も多い群で自殺のリスクが上昇するStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。うつ病が20世紀になって増加しているがω-6脂肪酸を多く含む植物油の摂取が増加したことと軌を一にする。日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる。うつ病の患者さんは増加しているのでしょうか? 日本うつ病学会 うつ病患者においてはω-6脂肪酸からアラキドン酸を経て生成される炎症性の生理活性物質であるエイコサノイドのレベルが高いということが示されている。シーフードをたくさん摂取するところほど母乳内のDHAは高く、産後うつ病の有病率は低かった。母体から胎児への転送により、妊娠・出産期には母親には無視できないω-3脂肪酸の枯渇の危険性が高まり、その結果として産後のうつ病の危険性に関与する可能性がある。また、うつ病の深刻さと赤血球中のリン脂質におけるω-6のアラキドン酸とω-3のエイコサペンタエン酸(EPA)の比率の間に有意な正の相関が認められた。さらに、健常者と比較してうつ病患者はω-3脂肪酸の蓄積量が有意に低く、ω-6とω-3の比率は有意に高かったことが指摘されている。ω-3脂肪酸の摂取がうつ病の治療に効果があるか、日本でのエビデンスは希薄である。日本うつ病学会治療ガイドライン. II.大うつ病性障害 2012 Ver.1. 平成24年7月26日 男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている厚生労働省 うつ病対策推進方策マニュアル(doc) 。女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMS、PMDD、セロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある。女性のうつ病 JCPTD 日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。ヒトは、ω-3脂肪酸をデノボ合成することはできないが、18炭素ω-3脂肪酸のα-リノレン酸から20-, 22-炭素の不飽和ω-3脂肪酸を形成することができる。これらの不飽和化の増加は、使用される不飽和化酵素が共通しているためリノール酸から誘導される必須なω-6脂肪酸と共に競争的に起こる。ω-3脂肪酸のα-リノレン酸とω-6脂肪酸のリノール酸はどちらも食物から摂取しなければならない必須な栄養素(必須脂肪酸)である。体内で起こるα-リノレン酸からの長いω-3脂肪酸の合成はω-6類似体によって競争的に抑制される必須脂肪酸の栄養生化学 、奥山 治美、化学と生物、Vol. 28 (1990) No. 3 。したがって、ω-3脂肪酸が食物から直接得られたとき、またはω-6類似体の量がω-3の量を大きく上回らないとき、組織内での長鎖ω-3脂肪酸の蓄積は効率的である。 ) : ウィキペディア日本語版
ω-3脂肪酸(おめが-さん しぼうさん、ω-3 fatty acid、ω3とも表記、オメガ-スリー、Omega-3)または、n-3脂肪酸(n−3 fatty acid)は、不飽和脂肪酸の分類の一つで、一般にω-3位に炭素-炭素二重結合を持つものを指す。== 概要 ==植物及び微生物中では、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合を一個増やしてリノール酸を生成することができる。さらに植物及び微生物中では、ω3位に二重結合を作るΔ15-脂肪酸デサチュラーゼ によりリノール酸の二重結合を一個増やしてα-リノレン酸を生成することができるI章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは? 『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』。ヒトを含む動物は、ステアリン酸からオレイン酸を生成するΔ9-脂肪酸デサチュラーゼを有してはいるものの、Δ12-脂肪酸デサチュラーゼもΔ15-脂肪酸デサチュラーゼもどちらも有していないので、リノール酸もα-リノレン酸もどちらも自ら合成することができない。このためω-3脂肪酸は、ω-6脂肪酸とともに必須脂肪酸となっている。ω-3脂肪酸の欠乏により学習能、視力の低下をきたすことが報告されている前田隆子、高山美佐子ほか「妊産婦の血清中脂肪酸と母乳中脂肪酸組成に関する研究-とくに、エイコサペンタエン酸に関する検討 」『鳥取大学医療技術短期大学部紀要』25巻,1996,pp15-24。。栄養学的に必須なω-3脂肪酸は、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。ヒトを含めた動物の体内ではΔ6-脂肪酸デサチュラーゼにより18:3(n-3)のα-リノレン酸(ALA)のΔ6の位置に不飽和結合を作り炭素2個伸張して20:4(n-3)のエイコサテトラエン酸を生成し、Δ5-脂肪酸デサチュラーゼにより不飽和結合を増やして20:5(n-3)のエイコサペンタエン酸(EPA)を生成し、このエイコサペンタエン酸から22:5(n-3)のドコサペンタエン酸(DPA)を経るかSprecher's shuntと呼ばれる経路いずれかを経て22:6(n-3)のドコサヘキサエン酸(DHA)が生成される(詳細はデサチュラーゼを参照のこと。)。このようにヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である岡田斉、萩谷久美子、石原俊一ほか「Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討--最近の研究動向のレビューを中心に」『人間科学研究』(30),2008,pp87-96. 。細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、リン脂質を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。例えばDHAは不飽和度が極めて高く細胞膜の流動性の保持に寄与している。例えば、赤血球について、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は赤血球膜を硬直化し栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。54-55頁、逆に魚に多いω-3脂肪酸は赤血球膜を柔軟化する栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。38頁68頁。神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている浜崎智仁「13:00 ~13:40脂質と精神 」金城学院大学/日本脂質栄養学会共催シンポジウムの抄録 6章p10『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』。DHAは精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は血中の中性脂肪(トリグリセライド)量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある 。アルツハイマー型痴呆やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。ω-3不飽和脂肪酸の多い魚及びω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの肝がん発生リスクは低くなっているStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。魚を食べても大腸癌のリスクは下がらないStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。ただし、魚由来のω-3脂肪酸及びトータルのω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸癌リスクは低くなる。ω-6脂肪酸およびω-3/ω-6比は大腸癌のリスクと関連がみられないStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。魚を多く食べるグループで虚血性心疾患のリスクが低下するStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)との研究が有る一方、血中のω3脂肪酸濃度と脳血管疾患発生の関係を調べた観察研究と、ω3脂肪酸サプリの使用と脳血管疾患の関係を調べた無作為化試験においては、有意な関係は見られなかったとする報告がある魚の摂取による脳血管リスク低下はω3脂肪酸に由来しない 日経メディカルオンライン 記事:2012.11.16。全体としては、魚及びω-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量と自殺リスクとは関連はない。ただし、女性では魚の摂取量が非常に少ない人で自殺のリスクが上昇する。男性の非飲酒者では、EPA・DHAの摂取量が最も多い群で自殺のリスクが上昇するStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。うつ病が20世紀になって増加しているがω-6脂肪酸を多く含む植物油の摂取が増加したことと軌を一にする。日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる。うつ病の患者さんは増加しているのでしょうか? 日本うつ病学会 うつ病患者においてはω-6脂肪酸からアラキドン酸を経て生成される炎症性の生理活性物質であるエイコサノイドのレベルが高いということが示されている。シーフードをたくさん摂取するところほど母乳内のDHAは高く、産後うつ病の有病率は低かった。母体から胎児への転送により、妊娠・出産期には母親には無視できないω-3脂肪酸の枯渇の危険性が高まり、その結果として産後のうつ病の危険性に関与する可能性がある。また、うつ病の深刻さと赤血球中のリン脂質におけるω-6のアラキドン酸とω-3のエイコサペンタエン酸(EPA)の比率の間に有意な正の相関が認められた。さらに、健常者と比較してうつ病患者はω-3脂肪酸の蓄積量が有意に低く、ω-6とω-3の比率は有意に高かったことが指摘されている。ω-3脂肪酸の摂取がうつ病の治療に効果があるか、日本でのエビデンスは希薄である。日本うつ病学会治療ガイドライン. II.大うつ病性障害 2012 Ver.1. 平成24年7月26日 男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている厚生労働省 うつ病対策推進方策マニュアル(doc) 。女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMS、PMDD、セロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある。女性のうつ病 JCPTD 日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。ヒトは、ω-3脂肪酸をデノボ合成することはできないが、18炭素ω-3脂肪酸のα-リノレン酸から20-, 22-炭素の不飽和ω-3脂肪酸を形成することができる。これらの不飽和化の増加は、使用される不飽和化酵素が共通しているためリノール酸から誘導される必須なω-6脂肪酸と共に競争的に起こる。ω-3脂肪酸のα-リノレン酸とω-6脂肪酸のリノール酸はどちらも食物から摂取しなければならない必須な栄養素(必須脂肪酸)である。体内で起こるα-リノレン酸からの長いω-3脂肪酸の合成はω-6類似体によって競争的に抑制される必須脂肪酸の栄養生化学 、奥山 治美、化学と生物、Vol. 28 (1990) No. 3 。したがって、ω-3脂肪酸が食物から直接得られたとき、またはω-6類似体の量がω-3の量を大きく上回らないとき、組織内での長鎖ω-3脂肪酸の蓄積は効率的である。[さん]

ω-3脂肪酸(おめが-さん しぼうさん、ω-3 fatty acid、ω3とも表記、オメガ-スリー、Omega-3)または、n-3脂肪酸(n−3 fatty acid)は、不飽和脂肪酸の分類の一つで、一般にω-3位に炭素-炭素二重結合を持つものを指す。
== 概要 ==
植物及び微生物中では、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合を一個増やしてリノール酸を生成することができる。さらに植物及び微生物中では、ω3位に二重結合を作るΔ15-脂肪酸デサチュラーゼ によりリノール酸の二重結合を一個増やしてα-リノレン酸を生成することができる〔I章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは? 脂質栄養学の新方向とトピックス 』〕。
ヒトを含む動物は、ステアリン酸からオレイン酸を生成するΔ9-脂肪酸デサチュラーゼを有してはいるものの、Δ12-脂肪酸デサチュラーゼもΔ15-脂肪酸デサチュラーゼもどちらも有していないので、リノール酸もα-リノレン酸もどちらも自ら合成することができない。このためω-3脂肪酸は、ω-6脂肪酸とともに必須脂肪酸となっている。ω-3脂肪酸の欠乏により学習能、視力の低下をきたすことが報告されている〔前田隆子、高山美佐子ほか「妊産婦の血清中脂肪酸と母乳中脂肪酸組成に関する研究-とくに、エイコサペンタエン酸に関する検討 」『鳥取大学医療技術短期大学部紀要』25巻,1996,pp15-24。〕。
栄養学的に必須なω-3脂肪酸は、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。ヒトを含めた動物の体内ではΔ6-脂肪酸デサチュラーゼにより18:3(n-3)のα-リノレン酸(ALA)のΔ6の位置に不飽和結合を作り炭素2個伸張して20:4(n-3)のエイコサテトラエン酸を生成し、Δ5-脂肪酸デサチュラーゼにより不飽和結合を増やして20:5(n-3)のエイコサペンタエン酸(EPA)を生成し、このエイコサペンタエン酸から22:5(n-3)のドコサペンタエン酸(DPA)を経るかSprecher's shuntと呼ばれる経路いずれかを経て22:6(n-3)のドコサヘキサエン酸(DHA)が生成される(詳細はデサチュラーゼを参照のこと。)〔。このようにヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である〔岡田斉、萩谷久美子、石原俊一ほか「Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討--最近の研究動向のレビューを中心に」『人間科学研究』(30),2008,pp87-96. 〕。
細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、リン脂質を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。例えばDHAは不飽和度が極めて高く細胞膜の流動性の保持に寄与している。例えば、赤血球について、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は赤血球膜を硬直化し〔栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。54-55頁〕、逆に魚に多いω-3脂肪酸は赤血球膜を柔軟化する〔栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。38頁68頁〕。神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている〔浜崎智仁「13:00 ~13:40脂質と精神 」金城学院大学/日本脂質栄養学会共催シンポジウムの抄録 6章p10『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』〕。
DHAは精液網膜リン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は中の中性脂肪トリグリセライド)量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある 。アルツハイマー型痴呆うつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。
ω-3不飽和脂肪酸の多い魚及びω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの肝がん発生リスクは低くなっている〔Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)〕。
を食べても大腸癌のリスクは下がらない〔Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)〕。ただし、魚由来のω-3脂肪酸及びトータルのω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸癌リスクは低くなる。ω-6脂肪酸およびω-3/ω-6比は大腸癌のリスクと関連がみられない〔Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)〕。
魚を多く食べるグループで虚血性心疾患のリスクが低下する〔Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)〕との研究が有る一方、血中のω3脂肪酸濃度と脳血管疾患発生の関係を調べた観察研究と、ω3脂肪酸サプリの使用と脳血管疾患の関係を調べた無作為化試験においては、有意な関係は見られなかったとする報告がある〔魚の摂取による脳血管リスク低下はω3脂肪酸に由来しない 日経メディカルオンライン 記事:2012.11.16〕。
全体としては、魚及びω-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量と自殺リスクとは関連はない。ただし、女性では魚の摂取量が非常に少ない人で自殺のリスクが上昇する。男性の非飲酒者では、EPA・DHAの摂取量が最も多い群で自殺のリスクが上昇する〔Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)〕。
うつ病が20世紀になって増加しているがω-6脂肪酸を多く含む植物油の摂取が増加したことと軌を一にする。
日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる。〔うつ病の患者さんは増加しているのでしょうか? 日本うつ病学会
うつ病患者においてはω-6脂肪酸からアラキドン酸を経て生成される炎症性の生理活性物質であるエイコサノイドのレベルが高いということが示されている。シーフードをたくさん摂取するところほど母乳内のDHAは高く、産後うつ病の有病率は低かった。母体から胎児への転送により、妊娠・出産期には母親には無視できないω-3脂肪酸の枯渇の危険性が高まり、その結果として産後のうつ病の危険性に関与する可能性がある。また、うつ病の深刻さと赤血球中のリン脂質におけるω-6のアラキドン酸とω-3のエイコサペンタエン酸(EPA)の比率の間に有意な正の相関が認められた。さらに、健常者と比較してうつ病患者はω-3脂肪酸の蓄積量が有意に低く、ω-6とω-3の比率は有意に高かったことが指摘されている〔。
ω-3脂肪酸の摂取がうつ病の治療に効果があるか、日本でのエビデンスは希薄である。〔日本うつ病学会治療ガイドライン. II.大うつ病性障害 2012 Ver.1. 平成24年7月26日
男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている〔厚生労働省 うつ病対策推進方策マニュアル(doc) 〕。
女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMSPMDDセロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある。〔女性のうつ病 JCPTD 〕日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。
ヒトは、ω-3脂肪酸をデノボ合成することはできないが、18炭素ω-3脂肪酸のα-リノレン酸から20-, 22-炭素の不飽和ω-3脂肪酸を形成することができる。これらの不飽和化の増加は、使用される不飽和化酵素が共通しているためリノール酸から誘導される必須なω-6脂肪酸と共に競争的に起こる。ω-3脂肪酸のα-リノレン酸とω-6脂肪酸のリノール酸はどちらも食物から摂取しなければならない必須な栄養素必須脂肪酸)である。体内で起こるα-リノレン酸からの長いω-3脂肪酸の合成はω-6類似体によって競争的に抑制される〔必須脂肪酸の栄養生化学 、奥山 治美、化学と生物、Vol. 28 (1990) No. 3 〕。したがって、ω-3脂肪酸が食物から直接得られたとき、またはω-6類似体の量がω-3の量を大きく上回らないとき、組織内での長鎖ω-3脂肪酸の蓄積は効率的である。


抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「ω-3脂肪酸(おめが-さん しぼうさん、ω-3 fatty acid、ω3とも表記、オメガ-スリー、Omega-3)または、n-3脂肪酸(n−3 fatty acid)は、不飽和脂肪酸の分類の一つで、一般にω-3位に炭素-炭素二重結合を持つものを指す。== 概要 ==植物及び微生物中では、ω6位に二重結合を作るΔ12-脂肪酸デサチュラーゼ によりオレイン酸の二重結合を一個増やしてリノール酸を生成することができる。さらに植物及び微生物中では、ω3位に二重結合を作るΔ15-脂肪酸デサチュラーゼ によりリノール酸の二重結合を一個増やしてα-リノレン酸を生成することができるI章 最新の脂質栄養を理解するための基礎 ― ω(オメガ)バランスとは? 『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』。ヒトを含む動物は、ステアリン酸からオレイン酸を生成するΔ9-脂肪酸デサチュラーゼを有してはいるものの、Δ12-脂肪酸デサチュラーゼもΔ15-脂肪酸デサチュラーゼもどちらも有していないので、リノール酸もα-リノレン酸もどちらも自ら合成することができない。このためω-3脂肪酸は、ω-6脂肪酸とともに必須脂肪酸となっている。ω-3脂肪酸の欠乏により学習能、視力の低下をきたすことが報告されている前田隆子、高山美佐子ほか「妊産婦の血清中脂肪酸と母乳中脂肪酸組成に関する研究-とくに、エイコサペンタエン酸に関する検討 」『鳥取大学医療技術短期大学部紀要』25巻,1996,pp15-24。。栄養学的に必須なω-3脂肪酸は、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)である。ヒトを含めた動物の体内ではΔ6-脂肪酸デサチュラーゼにより18:3(n-3)のα-リノレン酸(ALA)のΔ6の位置に不飽和結合を作り炭素2個伸張して20:4(n-3)のエイコサテトラエン酸を生成し、Δ5-脂肪酸デサチュラーゼにより不飽和結合を増やして20:5(n-3)のエイコサペンタエン酸(EPA)を生成し、このエイコサペンタエン酸から22:5(n-3)のドコサペンタエン酸(DPA)を経るかSprecher's shuntと呼ばれる経路いずれかを経て22:6(n-3)のドコサヘキサエン酸(DHA)が生成される(詳細はデサチュラーゼを参照のこと。)。このようにヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である岡田斉、萩谷久美子、石原俊一ほか「Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討--最近の研究動向のレビューを中心に」『人間科学研究』(30),2008,pp87-96. 。細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、リン脂質を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。例えばDHAは不飽和度が極めて高く細胞膜の流動性の保持に寄与している。例えば、赤血球について、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は赤血球膜を硬直化し栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。54-55頁、逆に魚に多いω-3脂肪酸は赤血球膜を柔軟化する栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4093045810。38頁68頁。神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている浜崎智仁「13:00 ~13:40脂質と精神 」金城学院大学/日本脂質栄養学会共催シンポジウムの抄録 6章p10『 脂質栄養学の新方向とトピックス 』。DHAは精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は血中の中性脂肪(トリグリセライド)量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある 。アルツハイマー型痴呆やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。ω-3不飽和脂肪酸の多い魚及びω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの肝がん発生リスクは低くなっているStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。魚を食べても大腸癌のリスクは下がらないStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。ただし、魚由来のω-3脂肪酸及びトータルのω-3不飽和脂肪酸摂取量が多いグループの結腸癌リスクは低くなる。ω-6脂肪酸およびω-3/ω-6比は大腸癌のリスクと関連がみられないStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。魚を多く食べるグループで虚血性心疾患のリスクが低下するStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)との研究が有る一方、血中のω3脂肪酸濃度と脳血管疾患発生の関係を調べた観察研究と、ω3脂肪酸サプリの使用と脳血管疾患の関係を調べた無作為化試験においては、有意な関係は見られなかったとする報告がある魚の摂取による脳血管リスク低下はω3脂肪酸に由来しない 日経メディカルオンライン 記事:2012.11.16。全体としては、魚及びω-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量と自殺リスクとは関連はない。ただし、女性では魚の摂取量が非常に少ない人で自殺のリスクが上昇する。男性の非飲酒者では、EPA・DHAの摂取量が最も多い群で自殺のリスクが上昇するStudy 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)。うつ病が20世紀になって増加しているがω-6脂肪酸を多く含む植物油の摂取が増加したことと軌を一にする。日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる。うつ病の患者さんは増加しているのでしょうか? 日本うつ病学会 うつ病患者においてはω-6脂肪酸からアラキドン酸を経て生成される炎症性の生理活性物質であるエイコサノイドのレベルが高いということが示されている。シーフードをたくさん摂取するところほど母乳内のDHAは高く、産後うつ病の有病率は低かった。母体から胎児への転送により、妊娠・出産期には母親には無視できないω-3脂肪酸の枯渇の危険性が高まり、その結果として産後のうつ病の危険性に関与する可能性がある。また、うつ病の深刻さと赤血球中のリン脂質におけるω-6のアラキドン酸とω-3のエイコサペンタエン酸(EPA)の比率の間に有意な正の相関が認められた。さらに、健常者と比較してうつ病患者はω-3脂肪酸の蓄積量が有意に低く、ω-6とω-3の比率は有意に高かったことが指摘されている。ω-3脂肪酸の摂取がうつ病の治療に効果があるか、日本でのエビデンスは希薄である。日本うつ病学会治療ガイドライン. II.大うつ病性障害 2012 Ver.1. 平成24年7月26日 男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている厚生労働省 うつ病対策推進方策マニュアル(doc) 。女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMS、PMDD、セロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある。女性のうつ病 JCPTD 日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。ヒトは、ω-3脂肪酸をデノボ合成することはできないが、18炭素ω-3脂肪酸のα-リノレン酸から20-, 22-炭素の不飽和ω-3脂肪酸を形成することができる。これらの不飽和化の増加は、使用される不飽和化酵素が共通しているためリノール酸から誘導される必須なω-6脂肪酸と共に競争的に起こる。ω-3脂肪酸のα-リノレン酸とω-6脂肪酸のリノール酸はどちらも食物から摂取しなければならない必須な栄養素(必須脂肪酸)である。体内で起こるα-リノレン酸からの長いω-3脂肪酸の合成はω-6類似体によって競争的に抑制される必須脂肪酸の栄養生化学 、奥山 治美、化学と生物、Vol. 28 (1990) No. 3 。したがって、ω-3脂肪酸が食物から直接得られたとき、またはω-6類似体の量がω-3の量を大きく上回らないとき、組織内での長鎖ω-3脂肪酸の蓄積は効率的である。」の詳細全文を読む




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